第5話 実戦
僕は神代紗夜をじっと見つめる。だが瞬きした瞬間、神代紗夜は動いた。ただ瞬きする間に、木刀の切っ先はもう僕の目の前にあった。
速い、速すぎる。頭に浮かんだのはそれだけだった。僕はすぐ左へと身をかわし、ようやくこの突きを避ける。その瞬間、神代紗夜が眉をひそめるのが見えた。僕が避けられるとは思わなかったらしい。だが考える暇もなく、神代紗夜はすでに足を止めていた。刀を引かず、そのまま左への横薙ぎを放ってきた。
僕はとっさに木刀を体の前へ横たえて、神代紗夜のこの一撃を受け止めた。幸い、刀を引かずにそのまま横薙ぎにしたせいか、力はそれほど強くなかった。
神代紗夜は攻撃を防がれたと見るや、すぐに刀を引いて後退し、三四メートル離れたところに立って僕を見据えた。
一撃が決まらないとすぐ下がるなんて、いくらなんでも慎重すぎる。
だが、神代紗夜が下がってくれたおかげで僕も少しほっとした。さっきの一瞬はあまりに速くて、考える暇なんてほとんどなく、反射だけで避けて攻撃を防いだ。
神代紗夜は僕を見て、それから刀身を一度払って口を開いた:
「反応が速い。」
何だよ、僕より速いくせに、逆に僕の反応が速いなんて言うのか。これって僕をあざ笑ってるのか。
僕は刀を握って神代紗夜を見ているが、まっすぐには攻め込めない。彼女の流派が何なのかは分からないが、とにかく速い。僕と同じで、速度で押すタイプなのか。それは確かめられない。戦い方を見極めるまでは、後手に回ったほうが少しはましだ。
神代紗夜は僕が自分から攻めないのを見て、片手持ちから両手持ちに変えた。突然の持ち替えに僕は一瞬面食らった。しかし次の瞬間、神代紗夜は動いた。両脚に力を込め、体ごと爆発するように突っ込んでくる。
僕は後ろに下がるつもりはなく、むしろ迎え撃つように前に出た。神代紗夜の動きを観察する。ただの単純な斜め斬りだ。右上から左下への斜め斬り、かわしさえすればいい。
よし、突くだけでいい。斜め斬りは突きより遅い。先手は僕にある。僕は神代紗夜の左側を狙って突きを放つ。攻撃距離なら突きのほうが長く、速度でも突きのほうが速い。つまり同じ距離なら、僕の攻撃が先に届く。
突きが神代紗夜に届くまでまだ少し距離があるとき、神代紗夜がわずかに体を横に向けたかと思うと、さらに一歩前へ踏み出し、さっきより速くなった。
騙された、完全に騙された。神代紗夜の本当の速度は、最初の攻撃で見せた速度よりはるかに速い。だが、あれが彼女の最速だと思い込み、間違った前提を置いてしまった。
もし速度がもっと速いのなら、神代紗夜がするべきことも斜め斬りではないはずだ。
神代紗夜の突然の加速のせいで突きは空を切り、彼女の左側をかすめていった。そしてこの時、神代紗夜の本当の攻撃意図も露わになった。狙いは自分の右腕だ。神代紗夜の空振りに終わった突きとは違い、本来この突きは後退してかわすつもりだった。だが彼女は突進を利用してこちらの突きをかわした。その結果、今は彼女の攻撃範囲に入っており、しかも慣性のせいですぐに追撃に移れない。
「くそ。」
歯を食いしばって手を離した。武器を手放すだけならまだチャンスはある。だがこの一撃を腕に食らえば、長い間アザが残るかもしれないし、下手をすれば骨折する。
武器が手から離れると同時に、身をかわす態勢を整える機会を得た。すぐにしゃがんで一回転し、横に転がって神代紗夜の攻撃をかわした。
攻撃が空振りに終わると、神代紗夜はすぐに追撃してきた。結局、神代紗夜は何度も続けて斬りつけてきて、そのすべてをみっともなくぎりぎりでかわすことになった。その隙に木刀を拾い直そうとしたが、何度も神代紗夜に気づかれてしまい、うまくいかなかった。しかし途切れることのない攻撃で息が上がり、かなりみっともない姿になった。おまけに体にはかなりほこりがついていた。
何度かの攻撃がすべて空振りに終わると、神代紗夜はもう追撃してこなくなった。二人の速度は互角、いや、こちらのほうがほんの少しだけ上かもしれない。そうでなければ毎回ぎりぎりで攻撃をかわすことなどできなかったからだ。そのせいで神代紗夜も、追い続けても結果は出ないと気づいたようだ。彼女は向きを変え、さっき捨てた木刀のそばまで歩いていくと、一太刀でその木刀を真っ二つに斬った。それからこちらを見て、小首をかしげた。
その顔でこんな仕草をすれば、本来ならこんなに可愛いのに、今の自分には悪魔にしか見えない。しかも勝つためなら手段を選ばないなんて、ここまでやるとは。それにこの表情は、負けを認めろと暗示しているのか?ああ、負けたくはないけど、武器を壊されたんじゃもう完全にお手上げだ。
仕方なく体についたほこりを払い、諦めたように言った:
「アーサー先生、負けました。武器を彼女に壊されたので、もう勝てる見込みはありません。」
神代紗夜と速度を比べればこちらが少し上だ。剣術は分からないが、今の神代紗夜が見せている戦闘力なら、たとえ武器を持たず素手で戦ったとしても、どうあがいても勝てない。怪我や骨折をするより、早めに負けを認めたほうがいい。
とはいえ、一戦目でこんなに無様に負けたのは、少しだけ自分の自信に響いた。
アーサー先生はうなずいて言った:
「よくやった。お前は、神代紗夜を相手にそんなに長く持ちこたえて、しかも彼女を手こずらせた数少ない一人だ。ただ、精神面が少し弱いな。緊張しなくていい、次は動きをよく見れば、チャンスはあるぞ」
「それじゃあ、アーサー先生。慰めてくれてありがとうございます。」
僕は仕方なさそうに答えながら、アーサー先生の言うとおり、僕の精神面は確かに一つのハードルだった。
クラスの列に戻ると、他の人たちの僕を見る目つきは変わったようだった。少しの敬意が加わり、『まさかこんなに強いなんて』という視線も混じって、僕の全身を絶えずさまよっていた。少し気恥ずかしくなった。
アナスタシアが人混みの中で僕を見ている。少し距離があって、彼女の表情まではよく見えない。まさか、素手格闘がこれほど強い人でも、神代紗夜にやられたことがあるんじゃないだろうな。




