第4話 実戦
後方支援科のある場所に着いた。後方支援科は武器の整備・メンテナンスや補給のほか、運転も業務に含んでいる。この部署が扱う仕事は千差万別だが、今は何よりも武器部へ届け出に行くのが大事なので、後方支援科を見て回る時間はない。
武器部に入ると、中には二十歳前後に見える女性が座っていた。赤いフレームの眼鏡をかけ、レンズの奥の眼差しは真剣で、ペンを握って紙に何かを書き続けている。
「すみません……武器の届け出をする場所はここですか?」
僕の声はそれほど大きくなかった。武器部の中は静かで、あの女性以外に誰もいなかったからだ。それに、この人はとても冷たそうで、完全に人を寄せ付けない雰囲気だ。
女性は声を聞くとペンを置き、顔を上げて僕を見た。目つきは鋭く、女性は眼鏡を押し上げて言った:
「ええ、ここです。」
女性は立ち上がると、一台の機械の後ろへ歩いていった。機械は全体が黒く、一本の支柱で支えられていて、支柱の上端にはトレイのような台がつながり、その台は緑の光を放っている。女性は機械を指さして言った:
「届け出が必要な武器はその上に置けばいい。」
機械の前まで歩いていくと、機械は見た目がとても滑らかで、模様や彫刻は一切ない。機械の上のトレイはとても大きく、長槍でも完全に包み込めそうだ。武器部はさまざまな武器に対応するためにかなり工夫しているらしい。
刀を機械の上に置くと、機械の底から緑の光が湧き出し、桜切の隅々まで包み込んだ。突然の光景に少し戸惑ってしまい、あの女性を見るしかなかった。
女性はその光景を見ても何の動作も起こさなかった。眼鏡のレンズが緑の光を反射していて、彼女の表情はよく見て取れない。数秒たってから女性は口を開いた。その声の冷たさはかなり薄れ、どこか自信なさげに言った:
「武器の届け出には少し……手続きが必要で。明日の朝、また取りに来て。」
女性は指で届け出用の機械を撫でると、緑の光が薄くなった。その時になってようやく、女性が機械の後ろの何かを見ているようで、その目にわずかな迷いがあるのが、かろうじて分かった。変だなと思ったが、手続きが必要なら仕方ない。数秒黙った後、僕は武器部でようやく口を開いた:
「わかりました。それでは、お願いします。」
「大丈夫。扉はあっち。出る時は閉めて。」
話し方はやはりあの冷たいままで、さっさと話を終わらせたいだけのように見えた。
武器部を出ると、訓練場へと急いだ。普段から持久力を鍛えているとはいえ、こんな長距離をほとんど休まず走り続けたせいで、少し息が上がってしまった。
訓練場に戻った頃には、近接格闘がもうすぐ始まるところだった。少し離れた場所では、アーサーが木製の武器を山ほど抱えて、一人ひとりに配って回っていた。ただ、クラスにはなんと、手を振って武器を断り、素手で構わないと示す者も数人いた。自信なのか、それとも本当に実力があるのか?。
武器を配り終えると、アーサーは少し離れたところで息を切らしているのに気づき、こちらへ歩いてきて声をかけた:
「よお、戻ったか?武器は持ってこなかったのか?」
「はぁ……はぁ……ぶ、武器、武器部のあの先生が、明日にならないと……やっと取れるって。」
息を整えながらそう答えた。あの女性が教師なのかどうかは、僕の単なる推測でしかない。でもあの様子だし、制服も着ていなかったから、たぶん先生で間違いないはずだ。
アーサーはこちらを見て、顎を撫でながら空に目を向けて言った:
「明日か……まあいい。ちょうど今、近接格闘が始まるところだし、使う武器は自分で選べ。」
「わかりました。」
アーサーの後ろについてクラスのそばまで歩いていき、木製の近接武器の山から、長さが比較的合いそうな太刀を一本選んだ。桜切と長さはほぼ同じだが、少しだけ短い。とはいえこれ以上に適したものもないので、これを使うしかなかった。
「得意武器は太刀か? スピードで勝つのか、力で勝つのか? でも、普通はだいたいスピード型だよな。」
アーサーは僕が武器を選び終えたのを見ると、世間話でもするように尋ねてきた。
「ああ、はい。僕も半分はスピード重視って感じです。」
僕が適当に答えると、アーサーに背中を思い切り何度も叩かれた。まったく加減なしで叩かれた僕は、何度も咳き込んでようやく止まった。
「ゲホッ……ゲホッ……ア、アーサー先生、何するんですか?」
「自分から他人に自分の戦闘スタイルを明かすなんて、お前はバカか? これは命に関わる大事なことなんだぞ。」
「で、でも……」
「でももへったくれもない。覚えておけ、自分で選んだ小隊メンバー以外には、自分の戦闘スタイルを誰にも明かすな。これが第一課で、かなり重要な課だ。」
アーサーは僕の言葉を遮ると、真剣な表情で、あの自堕落に遊び呆けていた様子は完全に消えていた。
表情がすごく真剣で、これ以上何か言ったら生きたまま飲み込まれそうだ。
僕は唾を飲み込んで答えた:
「覚えました、アーサー先生。」
「うん、そうこなくちゃな。間違いを認めて改められるのは、いいことだ、いいことだ。」
アーサー先生は口を大きく開けて大笑いし始めた。
さっきの真剣な様子は完全に消え失せてしまった。さっきの真剣な様子はどこへ行ったんだよ、さっきのあの様子のほうがよっぽど教師らしかったのに!
仕方なくため息をついて、僕はやっとクラスの列へ戻っていった。
アーサー先生も何度か大笑いしたあとでようやく止まり、この時になって皆が自分を見ていることに気づいたようで、少し気まずそうに二度咳払いをして言った:
「第一試合、アナスタシア対マコムス。」
声が響くと、クラスの列の前から二人が出てきた。一人は白い長髪に深い青の瞳をした少女で、武器を持たず、素手で中央へ歩いていった。もう一人は茶色の短髪と茶色の瞳をした少年で、手に短剣を握り、同じく中央まで歩いていき、少女から十メートル離れたところで立ち止まった。
性別関係なくランダムマッチで、同性同士の対戦じゃないのか。
体格にしても武器にしても、アナスタシアというその白髪の少女のほうが分があるな。なのにクラスの雰囲気は少し妙で、マコムスは右手に短剣を握り、少し震えていて、顔色もあまり良くなさそうだ。
僕はその光景を見て、心の中で首をかしげた。短剣対素手なら理論上は有利なはずなのに、なぜマコムスはこんなに怯えているように見えるんだ。
「戦闘開始。」
アーサー先生が大声で宣言した。
僕は訓練場の中心を見た。マコムスは短剣を強く握りしめ、それから歯を食いしばって踏み込んで突っ込んでいった。短剣を振るうと空中に残像が次々と浮かび、木製とはいえ、その振りはやはり速かった。
しかしアナスタシアのほうは、マコムスが自分から五メートルほどまで近づいてからようやく動き出した。一歩踏み出すと、その速さは驚異的で、マコムスが前へ突っ込んでくる勢いも借りて、ほんの息をする間にアナスタシアはもうマコムスの目の前まで来ていた。そしてマコムスの腹に向かって拳を打ち込んだ。マコムスはもう止まれず避けられないので、ダガーを突き出した。この一撃は、たとえアナスタシアがもっと速くても避けられない!
しかし次の瞬間、アナスタシアの後ろ蹴りがいつの間にかマコムスの手の甲に決まり、ダガーを蹴り飛ばした。ダガーが地面に落ちて音を立て、アナスタシアの体はさらにC字型に曲がっていた。フェイントだ。最初の拳はフェイントで、わざとマコムスに下へ刺させたんだ。下へ刺させればこそ、本当の武器を奪う攻撃が出る。いや、『蹴り』と言ったほうが正確だ。
マコムスは痛みに耐えかねて後退し、ダガーを拾おうとした。しかしアナスタシアはマコムスに少しの隙も与えない。彼が動く前に、次の拳がもうマコムスの腹部に叩き込まれていた。その一発でマコムスは地面に倒れて体を丸め、うめき声まで上げた。本当に痛そうだった。
その光景を見て、思わず息を呑んだ。アナスタシアは速くて、力も十分にある。見た目からはまったく分からない。それに、首を巡らせて周りを見回すと、他のクラスメートたちの見慣れた様子からも分かる。アナスタシアがこうやって他人を簡単に殴り倒すのは、初めてじゃないんだ。
アーサーはマコムスのもとへ歩み寄り、彼を助け起こした。それからマコムスの腹部を触ってから言った。
「大丈夫、少し休めば治るよ。」
そう言うと、何人かの男子生徒がマコムスを両脇から支えて脇へ運び、地面に座らせて休ませた。
アーサーは手を叩いて言った。
「よし、静かにしてくれ。次の試合は青葉蘭対神代紗夜だ。」
少し面食らった。まさかこんなに早く自分の番が来るとは。すると、隣にいた、腰まで届く黒い長髪に、感情の揺れなど見えない赤い瞳、目尻に泣きぼくろのある少女のほうが先に動いた。少女が歩くにつれ、クラスの生徒たちは自ら道を空け、そこには絶対不可侵の領域が生まれた。
どうやらアナスタシアよりもさらに恐ろしい人物が現れたようだ。
他の連中がこちらに向ける目には同情が込められていた。なんだよ、この死地へ向かうような感じは。
僕も左腰に下げた太刀を強く握り、訓練場の中心へと歩いていった。
訓練場の中心まで歩くと、手を柄に添えた。周囲から自分に注がれるあの同情的な視線が、少し居心地悪い。まさか、この神代紗夜は相手に重傷を負わせるのか。
頭の中であれこれと余計なことを考え続けていた。
その時、アーサーが口を開いて、そんな余計な考えを遮った。
「お前たちは二人とも太刀使いだ。しっかり手合わせしろ。戦闘開始。」
何だよ、アーサー先生、まだあの企みが成功したような笑顔を浮かべてるし。絶対、僕とこの見るからに怖そうな女をわざと同じ組にしたんだろ!
だが考える暇もなく、神代紗夜はすでに太刀を抜いていて、太刀が空中に一筋の弧を描いた。
僕もすぐに刀を抜き、神代紗夜を見る。この女は威圧感が強すぎる、慎重に対処しなきゃ。




