第23話 三方勢力
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林雪がよこした車はピックアップだった。だが、なぜピックアップなのか。結局どうしようもなく、ルシウスとその弟子二人を荷台に放り込み、防水シートで覆うしかなかった。
三人を運び出すときには少し注目を集めたが、総じて言えば大きな騒ぎにはならなかった。
ピックアップの助手席と後部座席のドアを開けると、運転席にはすでに一人座っているのが見えた。田中だ。
田中は僕を見て笑みを浮かべた。
「おお、これは蘭さんじゃないか。」
「田中か。まさか、お前が迎えに来るとはな。」
僕は助手席に座り、シートベルトを締めた。
「はは、ちょうど後方支援科で整備していたときに、副会長様からここへ来るように言われたんですよ。」
「大変だね、こんな早くから仕事なんて。」
僕は背もたれに寄りかかった。背もたれはとても柔らかく、体も心もかなり楽になった。
「大変じゃないですよ、何しろ任務ですから。それに報酬も確かにたっぷりいただけますし。」
田中はアクセルを踏み込み、ピックアップを発進させた。
埠頭を離れ、道路を走る。窓の外を流れていく景色を眺めていると、気分はかなり寛いでいた。学校に戻って林雪に荷物を渡せば、任務完了だ。
窓の外では木々の作る密林が絶えず後退していく。変わり映えがなく、見ていると少し眠くなってくる。
僕は田中を見た。彼はまだ一心不乱に車を運転しており、後部座席に座る紗夜とアナスタシアは珍しく口喧嘩をしていなかった。
二人もこんなに静かなのを見て、僕はほっと息をついた。何しろ同じ小隊なのだから、やはり仲良くしているほうがいい。
ルシウスの魔法を思い出し、僕は紗夜を見て尋ねた:
「紗夜さん、魔法使いが何なのか知っているか?」
「自分たちは偉いと思い上がっている学者の集まりにすぎない。実際は、ただ凶器を手にした暴徒だ。」
学者と暴徒か。随分とちぐはぐな評価だな。
ふと、僕は車の外に気づいた。田中の運転席側の密林の中を、人影のようなものが動いている気がした。だが車はとても速く走っていたので、その区域はあっという間に通り過ぎてしまった。
気のせいだろうか。
僕は目をこすり、今度は自分の側の密林を見続けたが、何もなかった。
窓の外の密林をじっと見つめ、人がいるかどうか確かめていると、突然ピックアップが止まった。
僕は真っ直ぐ前を見た。太い木の幹が道の真ん中に横たわっていて、まったく、完全に通れない。もう何台も車が詰まっていて、数人が一緒にその木の幹をどけようとしているのが見える。
もう一台の車が停まるのを見て、幹を動かそうとしていた者たちは額の汗を拭った。
そのうちの一人の巨漢が小走りで僕たちの車の前に来て、窓をノックした。
「この道が塞がっていてな。悪いが、お前さんの車の道具を借りて、幹をどかせてもらえないか?」
そう言いながら巨漢はティッシュで汗を拭っていて、かなり大変そうだった。
道具を借りる? 何を借りるつもりだ? それに、どうしてこの車に幹をどかせる道具があると分かったんだ。
紗夜とアナスタシアは後部座席に座って巨漢を見ていた。紗夜の手はすでにドアノブに置かれ、いつでもドアを開けられるようになっている。
僕は巨漢を見ながら、ドアを開ける前にわざと桜切を後ろへ隠した。
「何を借りたいんだ?」
「刀だよ。ああ、さっきお前さんの車に刀があるのを見たんだ。」
巨漢は僕を見て、怪訝な顔でピックアップの中を覗き込もうとした。
僕は一足先にピックアップを降りて彼の視線を遮り、巨漢を見て言った:
「さっきも刀なんてなかった。見間違いだ。」
「見間違い、なのか?」
巨漢は自分の坊主頭を揉み、それから体の向きを変えて、遠慮のかけらもなく荷台のほうへ歩いていった。
彼は荷台を指さし、怪訝そうに言った:
「この中に何か入っているのか? さっき、うめき声のようなものが聞こえた気がしたんだが、気のせいだろうか。」
「何も入っていない。」
巨漢は僕の答えを聞いても追及を続けず、くるりと背を向けて立ち去り、幹のあるほうへ歩いていった。
そこで初めて気づいた。全員が僕とピックアップをじっと見つめている。危険な気配が湧き上がり、僕は少しのためらいもなく、すぐに車へ戻った。
幹が道の真ん中に横たわっているのは、明らかに誰かが道を塞いでいるのだ。この連中も訳もなく全員で僕たちを睨んでいる。敵か?
「田中、距離を取れ。こいつらはおかしい。」
「は、はい。」
田中は再びピックアップを始動させ、ゆっくりと後退し始めた。
しかし数秒経っただけで、田中は止まった。彼はバックミラーをじっと見つめている。
僕は田中の視線を追ってバックミラーを見た。ミラーの中には、十人ほどの黒いローブを着た者がピックアップに近づいてくるのが映っている。彼らのローブには、ルシウスと同じ紋章もあった。
魔法使い!
少しの迷いもなく、僕は桜切を手に取り、カノポス匣の入ったバックパックを背負った。
僕は前方の巨漢たちを見た。この連中が魔法使いの仲間なのかは分からない。
だが、見分けている時間もない。僕はすぐにドアを開けて外へ出て、車の後ろを塞ぐ魔法使いたちを見た。
「お前たちは誰だ?」
「ルシウスとカノポス匣を差し出せ。そうすれば、さほど苦しまずに死なせてやろう。」
頭目の声はしゃがれていて、感情は読み取れなかった。
「あり得ない。」
「ならば、死を与えよう。」
頭目は手を伸ばした。指の間にいくつもの宝石を挟んでいる。
宝石魔法。
僕が動き出し、魔法使いの宝石魔法を止めようとしたそのとき、背後から銃声が響いた。弾は頭目の魔法使いの後ろにいた弟子の一人に命中し、鮮血がその者のローブを染め上げる。その弟子はその場で息絶えた。
僕は背後を振り返った。巨漢たちは拳銃を手にし、大口を開けて笑いながら魔法使いと僕を見ている。あの坊主頭の巨漢が拳銃を僕に向けていた。
「奇遇だな、俺たちもカノポス匣を狙って来たんだ。ロイが知らせてくれたおかげだぜ。でなきゃ、ジャックの野郎が俺たちを裏切ったなんて分かりもしなかった。」
「また一人、火器を使う凡人か。」
頭目の魔法使いの両手は少し干からびていて、かなりの年齢に見えた。その手には白い宝石が握られている。
「へへ、ジジイは本当に口が悪いな。指を一本ずつへし折ってやろうか。魔法使いたちが魔法を使えるかどうか、見てやるよ。」
巨漢は僕と魔法使いのほうへ歩いていく。歩きながら拳銃を揺らしていた。、
頭目の魔法使いは、巨漢が手にする拳銃など見えていないかのようだった。
「凡人が己を超える力を使えば、頭に残るのは暴力だけだ。」
いつの間にか、彼の足元には細かく砕けた宝石がたくさん現れていた。宝石はとても細かく、そして小さく、これほど近くにいなければ、僕も気づかなかっただろう。
前方には魔法使い、背後には銃を持った連中。これは厄介だ。
僕はいつでも刀を抜いて反撃できるよう、桜切の柄に手を置いた。
僕と魔法使いと巨漢の三人がにらみ合っているとき、田中が勢いよくアクセルを踏み込んだ。だが車は動き出さず、その場でタイヤが激しく擦れる音を立てた。
道路全体はもともと静まり返っていた。田中のこの行動は、一瞬で全員の視線を引き寄せた。
そして、頭目の魔法使いと坊主頭の巨漢が視線を奪われた、まさにその一瞬
ピックアップの後部ドアが押し開けられ、僕も桜切を抜いた。僕はすぐに一歩踏み出し、頭目の魔法使いへさらに少し近づく。そしてピックアップの後部ドアからは、まず紗夜が飛び出し、続いてアナスタシア。紗夜は凄まじい速さで巨漢の目前まで駆け寄り、刀の峰を巨漢の手首に叩きつけた。
坊主頭の巨漢は激痛のあまり、手から無意識に拳銃を放してしまった。拳銃を失えば、彼はもう脅威ではない。アナスタシアはすでに彼の目前に着いており、白い風をまとった拳を顔面に叩き込んだ。坊主頭の巨漢の顔はたちまち鼻血でぐしゃぐしゃになり、そのまま地面に倒れて気を失った。
僕は頭目の魔法使いに近づき、ためらうことなく一刀を振り下ろした。しかし頭目の魔法使いの足元からは光が立ち上り、その光はまるで障壁のように彼の全身を包んだ。
すでに刃を出した以上、引っ込める理由はない。
刃は振り下ろされ、頭目の魔法使いの障壁に切り込んだ。予想していたような刃が阻まれる衝撃や手応えはなく、むしろ何の障害もなく、あまりに容易く障壁を切り裂いた。
頭目の魔法使いの顔はローブに覆われていて表情は分からないが、光は彼の動きに合わせて後退を続け、二メートルほど下がってようやく止まった。
「あの武器か。凡人というものは、常に自分に属さない力を手にするものだ。」
頭目の魔法使いの声はしゃがれていた。
しかし頭目の魔法使いがさらに何か言うより先に、坊主頭の巨漢が連れていた連中がためらうことなく発砲した。瞬く間に銃声が鳴り響き、弾丸が雨のように降り注ぐ。僕と紗夜、それにアナスタシアはすぐに車の中へ飛び込んだ。
田中は頭を低くして弾を避けているが、両手はまだハンドルを握ったままで、髪にはガラスの破片がついていた。
「田中、怪我はないか?」
「な、なんでもない。全員揃ったな。」
僕たち三人がピックアップに乗ったのを見て、田中は膝でアクセルを押さえ、勢いよくハンドルを切って後退しようとした。だが、向きを変えたまさにその瞬間、弾がタイヤを撃ち抜き、車は制御を失って、道端の密林の幹に突っ込んだ。
エンジンは黒煙を上げていて、もう一度始動させることは明らかに不可能だった。
だが幸いなことに、黒煙はどんどん増えて車を完全に覆い隠した。その黒煙の目くらましに助けられ、僕たち四人は車から降りて木の後ろに隠れた。ルシウスたち三人については、僕が機を見て車から引きずり下ろし、そばの草地へ放り出しておいた。
銃声はまだ止んでいない。だが、銃声に混じって爆発音も響いていた。その爆発音には僕もよく覚えがある。宝石魔法が爆発する音だ。ルシウスの宝石魔法の爆発ほどの威力は遠く及ばないが、それでも威力は決して小さくはないだろう。
そちらを見て、僕はようやく気づいた。魔法使いたちと巨漢の連中が撃ち合いを始めていたのだ。巨漢たちは拳銃で絶え間なく発砲し、彼らが撃つたびに魔法使いたちも宝石を投げつけて爆撃する。両側で次々と人が倒れていく。僕たちのことはすっかり忘れてしまったようだ。どうやらこの者たちは皆カノポス匣を手に入れるために来ていて、自分にとって脅威となる者を排除しようとしているらしい。
何とかして突破する方法を考えなければ。




