第22話 逮捕
しまった。ためらうことなく、僕は痛みをこらえて桜切を空中へ投げると、すぐに磁力を使い、体を桜切へと飛ばした。
空中へ飛んだときには、宝石はすでに爆発していた。その衝撃で、僕は天井まで吹き飛ばされた。
体が天井に激しく叩きつけられ、全身が砕けてしまったかのように感じた。だが幸い、爆発の衝撃を至近距離でまともに受けたわけではないので、ただの打ち身で済んだ。
僕は桜切を天井に突き刺し、柄を強く握りしめることで、再び地面へ落ちるのを防いだ。
ルシウスは追撃を続けようと、僕に向かって宝石を投げつけようとしていた。
しかし爆発音が紗夜とアナスタシアの注意を引き、二人はすでに僕がさっきまで立っていた位置にまで来ていた。
二人が来るのを見て、僕は空中からカーペットの上へ飛び降りた。
海風が吹き抜け、濃煙が次第に薄れていく。ルシウスは割れた窓のそばに立ち、両手をポケットに突っ込んでいた。ポケットの中で手が何をしているのかは見えないが、おそらくあの爆発する宝石を握っているのだろう。
「実に厄介だな、お前たちのその武器は。こんな力が、お前たちのような野蛮人ごときに収まっていいはずがない。」
紗夜は無駄口を一切叩かず、濃煙が消えた瞬間にはもうルシウスの目前へ到達していた。ルシウスは同じ手を使い、再び宝石を地面に叩きつけて濃煙を立ち上らせる。
濃煙は紗夜の全身で歪み、紗夜の体にはまったく近づけなかった。空間が楕円形の隙間を裂かれたかのようだ。
僕でさえこんなことになるとは予想していなかった。濃煙は紗夜の体の手前ですっかり真空地帯を形作っている。
ルシウスは目を見開いてその光景を見つめ、なぜこうなるのかまったく予想できていなかった。だが、ぼんやりしている暇はない。刃はすでに彼の目前まで届き、その左腕に突き刺さった。
紗夜は刃が刺さったのを確かめた瞬間、両脚に力を込めて刃をさらに深く押し込んだ。ルシウスは左手に宝石を握っているが、腕を伝った血が宝石を真っ赤に染め上げていく。
「この野郎……!」
ルシウスは、自分の動きで傷口がどんどん広がる痛みに耐えながら、左手を自分と紗夜の間に置いた。
宝石が光を放ち、力を蓄えているように見える。
僕は紗夜に向かって叫んだ:
「紗夜!こいつ、宝石を起爆させるつもりだ!」
僕は桜切を握り、アナスタシアと同時に爆発を止めようと突っ込んだ。
紗夜もそれを見てためらわず、すぐにルシウスの腹部を一脚蹴りつけると、龍切を抜いて僕とアナスタシアの位置へ後退した。
爆発は予想していたようには起きなかった。ルシウスの手の中のいくつもの宝石はまだ光を瞬かせている。そして紗夜がルシウスから離れるにつれ、宝石の光も次第に弱まっていった。
爆発を自由に操れるのか?それとも力を蓄えているのか?それとも迷っているのか?
その光景を見て、僕は紗夜とアナスタシアの腕をつかんだ。三人は同時に後退を始める。もし爆発を自由に操れるのなら、さっき爆発しなかったのはルシウスが紗夜と共倒れになりたくなかったからだろう。だがもし力を蓄えているのなら、これ以上近づけば三人とも危険だ。
ルシウスは苦痛に顔を歪め、もう片方の手で傷口を押さえている。それでも血は止まらずに溢れ出ていた。
「お前たち野蛮人、銃を手にした猿どもが、この俺の万金の身体を傷つけるとは。」
「は。面白いな。人を不意打ちする卑怯者が、野蛮人呼ばわりとはな。」
アナスタシアは笑いながら手首を回した。
「ならお前は何だ。あんな魔法、サーカスで下手な手品を見せるピエロみたいなもんじゃないか。」
「よくも魔法を侮辱したな、この猿が、凡人め!」
ルシウスは憎々しげにアナスタシアを睨みつけ、左手で宝石を強く握りしめると、宝石の光はさらに強くなった。ルシウスは左手を持ち上げる。血が衣服を伝ってカーペットに滴り落ち、その指が示す先は僕だった。
「カノポス匣を俺に寄越せ。あれはお前たち野蛮人が触れてよい神物ではない。」
「まだ人を脅す余裕があるのか。欲しいなら、まず私たちと一緒に刑務所に行くんだな。」
やはり目的はカノポス匣だったか。
僕は無意識にストラップを手で確かめ、バックパックがまだ背中にあることを確認した。体の痛みはかなり和らいでいる。僕はルシウスを見て、桜切を握り直した。だが魔法というものが一体何なのか、まだ判断がつかない。
ルシウスの手の中で、宝石の光はさらに激しさを増し、絶えず瞬いていた。
「カノポス匣を渡せ!さもなければ、ここで一緒に死ぬぞ。」
「欲しいなら、自分で取りに来ればいい。」
僕は片手でバックパックを締め直し、わざと揺らして音を立ててみせた。バックパックの中から、カノポス匣の中の何かが箱にぶつかる鈍い音が響く。
やはり、その音はルシウスの張り詰めた神経を刺激した。
一瞬で、ルシウスの手にはいつの間にか多くの宝石が現れていた。両手に収まりきらず、今にも落ちそうに見える。
緊張。僕にさえ、彼がひどく緊張しているのがわかる。紗夜に初めて傷つけられたときからそうだった。打ちたいのに、命を懸ける覚悟はないという状態が続いている。そして今、三人に囲まれ、僕が少し掠り傷を負っている以外は残りの二人に傷ひとつない。それが彼を、どうしていいかわからなくさせていた。ちょっとした物音でも、彼の脆い神経は崩れてしまいそうだ。
ルシウスは唇を噛みしめ、唇から血が滲んだ。血の粒は顎を伝って流れ、やがて落ちる。
彼は口の中で絶えず小さく独り言をつぶやいている。
「カノポス匣は必ず手に入れる。必ず手に入れなければ。」
どうやら彼は戦いにかなり慣れていないようだ。少なくとも今見る限り、以前は戦いに慣れたタイプでは絶対になかった。
僕はすぐに桜切を投げ、彼の足元に落とした。それで彼の体は大きく後退し、桜切が横に落ちただけで自分に斬りつけられたわけではないと気づく。だがそのとき顔を上げたルシウスは、ようやく紗夜がもう目の前にいることに気づいた。紗夜の手の龍切は、今にも彼の体に突き刺さらんとしている。
僕が桜切を投げたその瞬間、紗夜とアナスタシアは僕の両側から駆け出していた。
ルシウスが桜切の落ちた足元に気づいたその一秒で、紗夜はアナスタシアよりも速くルシウスの目前へと到達していた。
龍切はルシウスの両腕を狙っていた。紗夜は後退しようとするルシウスの動きなど気にせず、変わらぬ位置へ刀を振り下ろした。
ルシウスは後退して攻撃を避けようとしたが、そのとき彼の腕は誰かに掴まれていた。
「逃げられると思うな。」
アナスタシア。彼女はルシウスの腕を掴み、ルシウスを見て笑うと、白い風がルシウスの体に巻きついた。そして思いきり引っ張り、彼を元の位置へと引き戻した。
このときルシウスはもう迷っていなかった。手に宝石を握り、宝石が光を瞬かせている。
まったくもって共倒れを狙う構えだが、アナスタシアのあの不気味な白い風のせいで、指一本動かすことさえできない。
ルシウスはアナスタシアを睨みつけ、その表情は今にも彼女の首筋に噛みつきたいかのようだった。だがそのとき、彼の腕は白い霜にすっかり覆われてまったく動かず、体さえもはや動かせない。
そして紗夜の一刀はすでに振り下ろされていた。刀の峰を使い、血が飛び散るのを避けてはいたが、それでも骨の折れる音は響いた。
「あああああああ!!!」
ルシウスは両腕を力なく垂らし、体を地面に丸めて苦痛の叫びを上げた。
「お前たち、お前たちのような屑どもが、よくもこの俺にこんな真似を。」
ルシウスは目に涙を浮かべ、体を丸めたまま僕たち三人をじっと睨みつけている。
「必ず、必ずお前たちを殺してやる。」
「やれるものなら、いつでも相手になってやる。」
アナスタシアはしゃがんでルシウスを見つめると、ポケットから手錠を取り出した。
手錠は銀色の光を帯びている。僕は手帳でも学院の手錠を見たことがあった。あのとき写真に写っていた手錠には学院の校章があったが、アナスタシアの手にあるこれは何の印もない。どうやら学院の手錠ではなさそうだ。
彼女は手錠でルシウスの両手と両足を拘束した。その間もルシウスは罵り続けていたが、彼女は完全に無視していた。
ルシウスが連れてきたもう二人についても、アナスタシアはその二人を引き出してきた。ただし手錠は使わず、布切れを縄代わりにして縛っただけだった。二人はまだ気絶したまま目を覚まさないので、彼女はその二人をルシウスの傍らに放り出した。
アナスタシアは手を叩き、ベッドの端に腰を下ろして息を吐き、両手で顎を支えた。
「これで片づいたな。」
「お前たち野蛮人は、すべての魔法使いの敵だ。必ず全員殺してやる。」
ルシウスはまだ罵り続けている。
むしろ、罵る言葉の語彙まで乏しい。僕たちを野蛮人としか罵れない。魔法使いというのはみんなこうなのか。アナスタシアでさえ興が冷めて、反論する気にもならないようだった。
ルシウスの罵声は無視して、ただの背景音として扱う。
僕は紗夜とアナスタシアの二人を見た。
「捕まえたのはいいけど、どうやって連れて行くんだ?」
クルーズ船は警報のせいで今やほとんど人がいないが、外にはまだ大勢の人がいる。このままこの数人を担いで出て行けば、普通の人が見たら間違いなく通報するだろう。
アナスタシアは手近にあった布を一枚取ってルシウスの口を塞いだ。これでようやく完全に静かになった。
「どうせあの副会長の任務だ。彼女に段取りさせればいい。」
「大丈夫なのか?」
「とりあえずお前が試してみればいい。」
アナスタシアは僕を急かした。
僕は仕方なく副会長にメッセージを送った。
『任務は完了しました。任務目標も回収し、敵も数名捕らえました。迎えを寄越してもらえますか? 近くに見物している人がいます。』
二分ほど経つと、林雪から返信が来た。
『三十分後に迎えの者をやります。』
林雪のメッセージを見て、僕はほっと息をつき、紗夜とアナスタシアを見た。
「副会長が、三十分後に迎えが来るって。それまで待てばいい。」
僕の言葉を聞いて、アナスタシアはベッドの端に座ったままルシウスを見た。
「さあ、もうすぐ私たちと一緒に行けるな。刑務所がお前を待ってるんだから。」
ルシウスは口を塞がれ、うめき声しか出せない。彼は憎々しげにアナスタシアを睨み、体をよじらせていた。




