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第18話 副会長

美月千夏は訓練場の中に入ってきて、僕を助け起こした。


「蘭さん、あなた……」


僕はとっさにどう答えればいいか分からなかった。その時、照明も消え、訓練場は再び闇に包まれた。かすかな明かりだけが残っていた。


千夏を見て、僕は桜切を再び鞘に収めた。


「どんな罰でも受けます。ですが、それはアナスタシアさんには関係ありません。」


「は?お前、何言ってんだ?最初だって私がお前を無理やり勝負させようとしたんだろ?今さら私には関係ないなんて何言ってるんだ。」


アナスタシアはなんと、僕の目の前まで直接詰め寄ってきた。


そうだよな。彼女の性格なら、こういうことをするのも当然だ。


「でも——」


「でもも何もない。」


彼女は迷わず僕の言葉を遮り、美月千夏を見た。


「どんな罰でも好きにしろ。私は受ける。」


「アナスタシアさん、どう罰するかは私一人で決められることではありません。ですので、お二人とも私たちと一緒に生徒会まで来てもらえますか。」


千夏の顔には珍しく笑みがなく、むしろ真剣そのものだった。冗談の気配は微塵もなかった。


「ふん。」


アナスタシアは鼻で笑うと、それ以上何も言わず、両腕を組んで千夏が案内するのを待った。


〇


政務棟 生徒会。


僕とアナスタシアはそれぞれ別の椅子に座っていた。彼女は背もたれにもたれて天井を見上げ、貧乏ゆすりを続けていて、何も言いたくない、どうとでもしろという表情だった。


僕はコップのお湯を一口飲んで、やっと少し楽になった。お湯が体に入ると、ようやくほんの少しの温もりが、さっきの蹴りで出た寒気を追い払ってくれた。


千夏が僕のそばに来て、一束の紙を僕たち二人の机の前に置いた。


「緊張しなくていいよ、蘭さん。会長はいないから、この件は副会長が処理するよ。」


「ああ、ありがとう。副会長ってどんな人ですか?」


「副会長か。まあ、けっこう話の分かる人だから、安心していいよ。」


千夏はソファに座って言った:


「来る途中で聞いたんだけど、蘭さんが見つけた小隊メンバーって、このアナスタシアさんのこと?」


「まあ、そういうことになるかな。」


正直なところ、小隊メンバーと言っていいのかどうか、僕にも分からない。最終的にはほぼ僕の勝ちで決まりそうだったけど、実際には生徒会に中断させられてしまった。


僕はこっそりアナスタシアに目をやった。彼女は立ち上がって僕を責めたり、拒否したりするような素振りは見せなかった。それで僕はようやくほっと息をついた。


「小隊メンバーが見つかったなら、いいことだよ。」


僕のコップのお茶が空になっているのを見て、千夏は立ち上がり、また一杯お茶を注いでくれた。茶の香りがとても濃かった。


僕は礼を言ってコップを手に取り、また一口飲んだ。千夏もソファに戻って座った。


ちょうどそのとき、扉が外から開かれ、一人の黒い長髪の少女が戸口に立っていた。黒髪には銀色のヘアピンが留められていて、背は高く、年齢は僕より少し上に見えた。


黒い瞳が僕とアナスタシアの上で一瞬止まり、それから彼女は生徒会室の中へ入ってきて、そのまままっすぐ千夏の隣へ歩いていき座った。


「私は任務に行くつもりだったのに、何か処理してほしいことがあるって言われて来てみれば、よりによってあなたたち二人が星隕核武器で内輪揉めして見つかったってわけ?」


「会長が不在なので、この件は副会長のところに回ってくるしかなかったんです、林雪副会長。それに内輪揉めというほどでもありません。ただの手合わせですよ、誰も怪我していないんですから。」


千夏が話を引き継いだが、彼女が自ら僕たち二人の弁護を始めるなんて、まったく思っていなかった。


林雪は千夏を見て少し笑い、それから僕とアナスタシアのほうを見た。


「それで、あなたたち二人は怪我してないの?」


「はい、誰も怪我していません。」


なぜそんなことを聞くのか分からないけど、誰も怪我をしていないなら、影響は最小限に抑えられるはずだよね?


僕は慌ててうなずいた。


「誰も怪我をしていないのは、確かにいいことだ。」


林雪は立ち上がり、僕たち二人の向かい側へ歩いていき、さっき千夏が机の上に置いた紙の束の前に来ると、一番上の紙を一枚手に取った。


「青葉蘭、強襲科。アナスタシア、同じく強襲科。しかも同じ小隊。」


「はい、僕たち二人はもっと連携できるかどうか練習したかっただけで、それで少しだけ手合わせをしたんです。」


自分の心臓がバクバクしている気がする。嘘をついたせいで少し緊張している。


しかし林雪は、直接答えず、手に持った紙を何度か見つめると、それを机の上に伏せた。


「ただの比試だし、しかも誰も怪我してない。影響は確かにごく軽い。」


しかし林雪は、いきなり手を伸ばして僕の手首をつかんだ。とっさに手を引こうとしたけど、まるでペンチに挟まれたみたいで、まったく引き戻せなかった。


痛いですし、こんなふうに掴まれるとすごく怖いので、手を離してください。


「副会長?」


「動かないで。すぐ済むから。」


四五秒経って、林雪はようやく手を離した。


さっき林雪に掴まれたところが少し白っぽくなっていたけど、すぐに消えた。


林雪は僕を見て、顔には笑みを浮かべているのに、黒い瞳からは感情が読み取れず、まるで淀んだ水のように僕を見つめていた。


「怪我はないの? どうして? さっき青葉さんの手を掴んだとき、青葉さんの体に傷があるのをはっきり感じたのに。しかも凍傷よ。ひどくはないけど。」


凍傷? アナスタシアのあの蹴りのせい? やばい、これは面倒なことになった。


「副会長。」


千夏がそっと口を開いた。顔には絶妙な笑みを浮かべていた。


「比試の間にちょっとしたいざこざがあるのも普通ですし、力加減を間違えれば、気にしなくていい小さな怪我ができることも確かにあります。」


林雪は千夏がそう言うのを聞くと、僕を見てもそれ以上問い詰めず、机の向かい側へ歩いていって椅子に座った。


「書記がそう言うなら、とりあえずそういうことにしておこう。千夏さんが書記としての考えを持っているのかもしれないし。」


「面倒くさい。さっきからずっとそんなことばかり言ってるけど、どんな罰にするのかさっさと言えばいいでしょ。」


アナスタシアは机を平手で叩きつけ、机の上の小物がビクッと揺れた。


「どうするのかさっさと言ってよ。私はここであんたに付き合って座って時間を無駄にしたくないんだから。」


僕は指先でそっと彼女をつつき、もう黙るようにと何度も目で合図した。


もし林雪が怒って処罰を重くしたらどうしよう。できるだけ処罰は軽くしてもらったほうがいいよね。


でもアナスタシアは、僕の手をパンと払いのけた。


「そんなのどうでもいい。ここは息が詰まって死にそうだし、面倒くさい。」


僕は両手を合わせてお願いの仕草をし、もう言わないで、と頼んだ。もし副会長が本気で怒って、カッとなって僕たち二人を人けのない場所に放り出したらどうしよう。


アナスタシアは僕を一瞥すると、仕方なさそうに歯を食いしばって顔をそむけ、椅子の背にもたれてそれ以上何も言わなかった。


しかし林雪は怒らず、軽く笑いながら言った:


「どうやらこの学生はかなり焦っているようだね。強襲科として、衝動で頭に血を上らせてはダメだよ。」


僕はその言葉にすごく同意した。頭に血を上らせてはいけない。副会長も怒らないでほしいな。


アナスタシアがまた机を叩きそうになったので、僕は急いで彼女の袖口を引っ張った。それで彼女は目を閉じ、林雪をもう見なかった。


林雪はうなずいてから言った。


「実はね、私もそこまで厳しい処罰をするつもりはないんだ。何しろ、この件はそれほど重大じゃないし。でもね——」


ちょうどその時、ドアがノックされた。


千夏がドアを開けると、そこには予想外の人物、神代紗夜が制服姿で扉の前に立っていた。


神代紗夜はドアが開くのを見ると、千夏と林雪にうなずいて、中に入ってきた。


千夏は紗夜を見て尋ねた。


「あの、どなたをお探しですか?」


「副会長、書記、失礼します。私、神代紗夜といいます。強襲科です。」


紗夜は僕の後ろに歩み寄ると、僕が絶対に思いもしなかった言葉を口にした。


「私はこの規則を守らなかった二人の小隊メンバーです。勝手ながら参りました。どうかご容赦ください。」


えっ、小隊メンバー、いつから? まさか紗夜が僕の誘いを承諾したのか? いつ? 紗夜は僕に一言も言っていなかったのに。


「神代さん、こんにちは。さっきは蘭さんにもう一人の小隊メンバーがいるなんて聞いていませんでしたよ。」


千夏は怪訝そうに紗夜を見て、それから僕を見ると、僕も驚いた表情をしているのに気づいた。


「以前、青葉さんが私を誘ってくれました。その時は承諾しませんでしたが、今は承諾することにしました。」


紗夜は林雪に目を向けた。


「この二人は何といっても私の小隊メンバーです。とにかく、処罰するというのなら、私もこの二人を少しは助けます。」


「強襲科が三人か。戦闘力はかなり良さそうだね。」


林雪は紗夜に直接答えず、数秒考えてから言った。


「先ほど助けると言ったからね。うん、じゃあ、そういうことにしよう。」


林雪はペンを一本取ると、紙に名前を書き、その紙を僕たち三人の前に差し出した。


「これ、何?」


紙にはびっしりと文字が書かれていて、数回見ただけで目がすごく疲れた。脳細胞に至ってはもうすっかり消耗し尽くしていた。


林雪はにこにこしながら言った。


「任務。」


「任務?」


「そう、その通り、任務だよ。本来なら標準の処罰で武装ポイントを引かれるところだけど、今はあなたたちに功を立てて償うチャンスをやる。」


林雪はペンを僕たち三人の前に置いた。


「この任務はもともと学院が私に割り当てたものだけど、こういう雑用はかなり面倒なんだ。ちょうどあなたたちがここにいるから、私の代わりにやってくれ。やってくれたら処罰なしどころか、追加の武装ポイントも報酬としてやる。」


聞こえはいいけど、これって職権乱用だよな。全校に通達されてもおかしくないレベルだと思う。


僕は疑わしそうに林雪を見た。


「どんな任務?」


「埠頭だ。三日後に出発するクルーズ船が一隻あって、その船には密輸される品がある。船の上では普通の用心棒が何人か見張っているだけだ。あなたたちの任務は簡単だ。三日以内に、その密輸品を完全に破壊するか、学院に持ち帰るか、どちらかだ。」


林雪はポケットから一枚の写真を取り出した。写真には骨壺が写っている。骨壺の中に何が入っているのかまでは分からない。写真で見る限り、材質は金糸楠のようだ。骨壺にはとても精巧な模様が彫られ、角は金で包まれていて、骨壺を置くための台座まで翡翠のように見える。


僕は写真を見て、どうやらもう断れないようだ。


「わかった。」


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