第16話 小隊
パン魚をすべて食べ終えるのに十分ほどかかった。虚子はいつの間にか、僕より先に食べ終えていた。
彼女は空を見ていて、ぼんやりしているようだった。僕が食べ終えたのに気づいてから、こちらを見て言った:
「味は?」
味は?どういう意味だ、僕にパン魚の味を聞いているのか?
「美味しいです。味はかなり良くて、こういう体験は初めてでした。」
「気に入って、くれたなら。」
虚子は立ち上がり、それ以上は何も言わなかった。どうやらもう荷物をまとめていて、訓練場を出るつもりらしい。
周りにゴミ箱はなかったので、僕はパンの包装をそのままポケットに突っ込み、虚子の後ろについていった。
「虚子さんは、よく一人で訓練するんですか?」
「みんな、用事がある。」
みんなとは誰のことだ?友達か?それとも小隊メンバーか?まったく想像でしかない。
僕は少し歩調を速めて、虚子のそばまで歩いていった。
「虚子さんの小隊メンバーですか?」
「うん。」
虚子は前を歩きながら答えた。声はとても小さく、今にも風に溶けて消えてしまいそうだ。
いつの間にか虚子について武器部まで歩いてきていた。武器の手入れをするつもりなのか。ただ、武器を持っていないということは、受け取りに来たのだろう。
ただ、武器部の入り口に着く前に、一人の女子生徒が武器部の前で辺りを見回しているのが目に入った。虚子を見ると、その女生徒の藍色の瞳が輝き、すぐに小走りで駆け寄ってきた。
「虚子!」
女生徒はいきなり駆け寄って虚子の右腕に抱きついた。その口調は親しげだ。
「さっき武器部に虚子を探しに来たんだ。ここにいるかなって思ってたら、ちょうど来たね。」
「きつい、苦しい。」
そう言いながらも、虚子は女生徒の腕を振りほどかず、されるがままに抱かれていた。
女生徒は虚子より背がかなり高く、二人並ぶと虚子はよけいに小柄に見える。
そこでようやく女生徒は僕に気づき、すぐに虚子の腕を離すと、僕の前に立ってじろじろと眺めた。
「あの、僕は青葉蘭といいます。強襲科です。あなたは?」
女生徒に悪意がないのは感じ取れるが、じっと見つめられ続けると少し緊張する。
「エレノア、偵察科だよ。虚子の小隊メンバーでもあるの。」
女生徒はにっと笑い、金色の長い髪を後ろへかき上げると、手を伸ばしてVサインを作った。爪にはネイルが施されていて、日の光を受けてきらきらと輝いている。それだけではない。エレノアの制服には、小さな猫や犬の顔のシールもたくさん貼られていた。
「それで、強襲科の蘭さんは、うちの虚子とどういう関係なのかな?」
突然そう聞かれ、僕は少し戸惑ってしまった。こちらは先にエレノアと虚子がどういう関係なのかを聞こうと思っていたのに、彼女が先に聞いてくるとはまったく思っていなかった。
「あ、えっと、友達、でしょうか?いえ、助けてもらった人と言ったほうが正確ですかね?」
「助けてもらった?青葉蘭?」
エレノアは首を揺らして一秒二秒ほど考え込んだかと思うと、勢いよく額を叩き、急に声を張り上げた:
「その名前、聞いたことある!先日スクールバスで灰燼聖座を撃退した奴も同じ名前だった。つまりその人って君のことだよね!」
「え、そんなに有名なんですか?」
「知らないの?相当な有名人とまではいかないけど、結構多くの人が知ってるよ。何しろ灰燼聖座の連中は強いんだから。適当に二人の生徒を選んで撃退できる相手じゃないんだよ。」
エレノアは少し大げさな表情で、話しながら端末を取り出し、指で画面を何度も叩いた。ネイルが画面に当たって音を立てる。それから彼女は画面をこちらへ向けて見せてきた。そこには学院内部のフォーラムの画面が表示されている。
「見える?蘭さん、フォーラムでこの件を話してる人がたくさんいるんだよ。」
フォーラムには感謝や持ち上げるような言葉が並んでいて、少し気まずくなる。みんな随分と熱心なようだ。
「フォーラムに書かれてるのは、少し大げさすぎますよ。」
「大げさ?私はそうは思わないな。みんなが君をかなり認めてるって証拠じゃない。」
エレノアは端末をポケットに戻すと、何事もなかったかのように言った:
「でも灰燼聖座の連中は相当強いって話だよ。しかも星隕核武器を持ってるんだって。蘭さんもきっとそういう武器を持ってるんだよね?」
「エレノア。」
僕がエレノアの質問に答えようとしたそのとき、ずっと黙っていた虚子のほうが先に尋ねてきた:
「私に用? 何か用?」
「あ!すっかり忘れてた。」
エレノアは額をぽんと叩き、そのときになってようやく思い出したように言った:
「私が虚子を呼んでるんじゃないよ。会長、会長が虚子を呼んでるの。たぶんなんか任務を配るんだと思うよ。私は呼びに来ただけ。」
「分かった。」
虚子は僕を見て言った:
「先に行く。」
「あ、また、虚子さん。気をつけて。」
僕は思わずそう声をかけた。生徒会会長が配る任務なら、かなり危険なはずだから。
「ああ、大丈夫だよ大丈夫。」
エレノアは手を振って笑いながら言った:
「虚子はすごく強いんだから、絶対に大丈夫だよ。」
虚子が僕にうなずいた後、二人は並んで去っていった。その背中を見送っていると、エレノアが『学校から配られる任務はいいよな、調査の面倒が省けるし、ああ、本当にいいよな』と話しているのがかすかに聞こえた。エレノアは気にしていないように見えたが、僕は心の中で二人が無事に任務を果たせるよう、もう一度祈った。
〇
武器部の前でエレノアに出会ってからもう三日が過ぎた。この三日間は、ほとんどをベンチで日向ぼっこして過ごしていた。校医いわく、これでカルシウムを補えるらしいが、僕にはただの気休めにしか思えない。実際には何の役にも立っていないかもしれない。
エレノアと虚子にはこの数日会っていない。任務に出ているのだから、会えないのも当然だ。
ただ、紗夜とはもうそれほど関わりはないと思っていた。何しろカフェで紗夜が礼を言ってくれた後、一切言葉を交わしていない。もちろん、僕がずっと授業に出ていないせいで、紗夜の生活時間とまったく重なる点がないから、ほとんど顔を合わせることもないのだが。
ところが、今日の午後、ベンチで日向ぼっこをしているときに紗夜に会ってしまった。しかも機嫌がかなり悪いようで、普段より少し早足だった。
紗夜は僕に気づくと、ためらうことなく向きを変え、まっすぐこちらへ歩いてきた。
紗夜の左腰には太刀が、右腰にはホルスターが下がっている。
完全武装だ。任務に行っていたのだろうか?でも機嫌はかなり悪そうだ。任務に失敗したのか?いや、紗夜の実力なら任務に失敗することはまずないはずだ。
紗夜がだんだん近づいてくる。僕は彼女を見て、立ち上がり、自信なさげに言った:
「あの、神代さん、どうかしましたか?」
彼女は直接には答えず、刀を腰から外すと、ベンチの反対側に座った。紗夜が座るのを見て、僕も反対側に座る。二人の間には一人分の距離が空いていた。
「単独行動試験に通らなかった。偵察科の試験は確かに満点だったのに、単独行動は却下された。」
「え、単独行動試験に通らなかったんですか?神代さんほど強い人でも通らないんですか?不服申し立ての窓口とかはないんですか?申し立てはしたんですか?」
試験に通らなかった。紗夜が試験に通らなかったなんて、僕にはどうしても考えられないことだった。しかもさっきは成績が満点だと言っていた。満点なのになぜ通らない?単独行動試験はそんなに難しいのか。
紗夜は太刀を膝の上に置き、指で鞘をそっと撫でていた:
「してない。」
「申し立てをしていない?神代さんは成績が満点だったのに、誰かがわざとやったに違いないですよ!」
「違う。」
意外なことに、紗夜は首を振った。
「筆記の成績は満点だが、偵察科の模擬成績はぎりぎり合格で、単独行動の基準に届いていなかった。だから却下された。」
筆記の成績は満点なのに、模擬成績はぎりぎり合格だという。では、模擬成績の減点はどこだったのか?減点ポイントさえはっきりさせて、二度目の試験でそれを避けられれば、合格できるはずだ。
僕は紗夜を見て、ふと頭に一つの推測が浮かんだ。まさか、紗夜の性格が減点につながったのではないか?この推測は少し理にかなっているが、絶対に口に出してはいけない。
「あの、減点ポイントは……」
「......」
紗夜は黙り込み、この問いには答えず、ただ鞘を見つめたまま撫で続けていた。
僕は紗夜の横顔を見たが、今どんな気持ちなのかは読み取れない。怒りか?悲しみか?それとも気にしていないという冷たさか?まったく分からない。その顔は以前と変わらず、機嫌が悪いとおぼろげに感じ取れる以外に変化はない。だが、どのみち彼女の心が穏やかでないことは間違いない。こんなときに問い詰めるのは、他人の傷をえぐるようなものだ。
さっきの僕はそれにまったく気づいていなかった。我ながら鈍すぎる。まるで馬鹿みたいだ。
僕は唇を軽く噛んで、小声で言った:
「すみません、僕が聞くべきではありませんでした。」
「青葉さんには関係ない。なぜ私に謝るの?」
紗夜は伏し目に、黒い鞘を見つめている。よく見ると、黒い鞘には非常に細かく精巧な文様が刻まれているのが分かる。まるで神話に登場する龍の鱗のようで、それほど美しく、そして威厳がある。
僕は顔をそらして、紗夜を見続けるのをやめた。彼女はじっと見られるのが好きではないだろう。
「だって、僕はあんなことを聞くべきじゃなかったからです。」
「この話題を持ち出したのは私だ。お前が謝ることじゃない。」
「でも——」
「何もない。青葉さんは何も間違っていない。私に謝る必要はない。私は、何の罪もない人間に謝らせるほど落ちぶれてはいない。」
紗夜は刀を体の横に置き、その話題を続けずに、こちらへ顔を向けて言った:
「どうやら回復は順調なようだ。アナスタシアとの戦い、行くと決めた以上、見つかったときの処罰を受ける覚悟はしておけ。」
「僕はもうできています。どんな処罰であっても、約束した以上は破るわけにはいきませんから。」
僕は紗夜を見た。彼女がアナスタシアの話を持ち出したことで、今になってようやく思い出した。紗夜が単独行動試験に通らなかったのなら、小隊メンバーを探して小隊を組まなければならないということだ。
しかし、言葉は喉元まで出かかっているのに、どう言えばいいのか分からない。紗夜の機嫌が良くないことは見て取れる。こんなときにこの件を尋ねて、しかも自分に解決する力がないのなら、試験に通らなかったことをもう一度思い出させるだけではないか。
しばらくの間、何を言えばいいのか分からなくなり、僕は唇を噛み、口を閉じて地面を見るしかなかった。
しかし、そのささやかな仕草は紗夜の目を逃れなかった。
「何を言いかけてやめたんだ?言いたいことがあるなら、はっきり言えばいい。」




