第13話 カフェ
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保健室のあの日からもう三日が過ぎた。僕は怪我のためアーサーにしっかり休めと言われ、保健室か寮で静養していればいいだけだった。校医の話では、治るまでに一ヶ月はかかる見込みで、さもなければ傷口が衝撃を受けて再び裂けるかもしれないらしい。
アーサー先生のほうは、この三日間まったく見かけていない。どうやらスクールバス襲撃事件のせいでずっと忙しいらしい。
僕は保健室に来た。自分がまた来る必要があるとは思っていないが、校医は毎日端末にメッセージを送って左腕の再診に来るように言ってくる。断るわけにもいかないし、なにせ僕のためでもあるので、毎日通って再診を受けている。
「失礼します。」
僕は保健室の扉を押して中に入った。保健室の中では、紗夜が椅子に座っていた。背筋をぴんと伸ばし、両手を膝の上に置き、視線をまっすぐ前方に向けていて、その姿はどこまでも几帳面に見えた。
勉強の時間でもないのに、そこまで自分に厳しくするなんて。
周りを見てみると、保健室に置かれている椅子は多くなく、今は紗夜の隣しか空いていなかったので、僕は仕方なく紗夜の隣に座った。
紗夜は僕が隣に座ったことに気づくと、ただ顔を横に向けて一瞥しただけだった。まるで確認するかのように。
じっと見つめられるのはかなり居心地が悪いし、この沈黙の雰囲気も針のむしろに座っているようで、僕は仕方なく先に沈黙を破ることにした。
「神代さん、こんにちは。あなたも再診に来たんですか?」
「うん、検査結果が出た。」
「そうですか。神代さんは一人で来たんですか?友達と一緒じゃないんですか?」
紗夜は僕を見て、少し変わった表情をした。
この言葉を口にしたとき、僕は少し後悔した。なにせ神代紗夜はどうやらずっと一人のようだし、神代紗夜は友達を作ろうと思えば友達に困るタイプではなさそうだが、神代紗夜と友達になるとなれば、かなり骨が折れるに違いない。
三四秒ほど沈黙してから、紗夜はようやく口を開いた:
「必要ない。」
僕は紗夜を見て、しばらく何を言えばいいか分からず、仕方なく顔をかいて話題を変えた:
「あの、神代さん。前に千夏さんが小隊を組もうって言ってたんですが、神代さんはこんなに強いから、きっと大勢が一緒に組みたいと思ってるんじゃないですか?」
神代紗夜は付き合いにくそうに見えるだけだが、小隊を組むとなれば、神代紗夜のように強い人にはきっと大勢が自分から誘うに違いない。
ところが意外なことに、神代紗夜はただ少し首を振り、何か言おうとしていた。ちょうどそのとき、神代紗夜の番が来て診察室へ入ることになった。
神代紗夜は立ち上がり、診察室の中へ入っていった。
僕は椅子に座って天井を見上げた。左腕はまだ鈍く痛む気がする。
神代紗夜は付き合いにくそうに見えて、実際に接してみると良い人だという印象だ。ただ、こんなことを自分が言うべきなのかは分からない。なにせ紗夜と知り合ってまだそれほど経っていないのだから。でも、これが紗夜から受けた正直な印象なのだ。
三分ほど経つと、紗夜は検査結果を持って出てきた。そして校医が次の人を呼んだ。僕ではない。どうやら少し遅めに来たせいで、僕の番が回ってくるにはまだ時間がかかりそうだ。
紗夜は検査結果を持って僕の前を通りかかったとき、僕を見て言った:
「検査が終わったら、カフェに来なさい。」
僕は紗夜のその冷たい顔を見たが、どんな感情なのかは読み取れなかった。
まさか拷問?それとも決闘の約束?ああ、怪我がまだ治ってないのに、このタイミングで決闘なんて早すぎるだろう。それに、彼女を怒らせるようなことをした覚えもない!
「あの……紗夜さん、少し理由を聞いてもいいですか?」
「カフェで待ってる。」
紗夜はまったく説明もせず、その検査結果を持って行ってしまった。
遠ざかる紗夜の背中を見て、僕は自分が何か失言をしたのか、いつ彼女を怒らせたのかを考えずにはいられなかった。自分の脳が僕を騙していなければ、彼女を怒らせたことはないはずだ。
こうして、僕は少し落ち着かない気持ちで保健室で一時間を過ごした。その間、校医が何を言ったかも覚えていない。ただ、校医が回復は順調だといったようなことをぼんやり言ったのは覚えているが、それ以上に詳しい記憶はもう残っていない。
気づいたときには、僕はもうカフェの入口に立っていた。あまり来たくはなかった。なにせ紗夜は去る前に、決闘を申し込まれるのではないかという錯覚をどうしても僕に与えていったのだ。頭では決闘ではないと分かっていても、それでもやはり気が抜けなかった。
「はあ。」
僕はため息をつくと、右手を伸ばしてカフェの扉を開けた。カフェの中は人が多いのに静かで、少しのひそひそ話が聞こえるだけだった。中の人は制服を着ている者も私服の者もいて、みんな若い顔立ちで、どうやら僕と同じ学生のようだ。
見渡すと、すぐに隅で紗夜を見つけた。彼女はカフェのソファに座り、目の前で本を広げ、隣にコーヒーを一杯置いて、一心不乱に本を読んでいた。
僕はテーブルのそばまで行き、紗夜の向かいに座った。
紗夜は物音に気づいて本を閉じた。表紙にはうっすらと『シーシュポスの神話』という書名が見えた。彼女は顔を上げて僕を見て言った:
「コーヒーを頼みなさい。私がおごる。」
「コーヒーを頼む、うん、コーヒーを頼むよ、なにせカフェなんだから……って、え、奢ってくれる?!」
僕は驚いて紗夜を見て、思わず声が少し大きくなり、何人かに注目されてしまったので、慌てて気まずい笑みを浮かべた。
彼女がまさか自分が奢るなんて言い出すとは、まったく予想していなかった。僕は夢を見ているのだろうか。そうだ、きっと夢に違いない。
紗夜は僕を見て、少しうなずいて言った:
「うん、なにせ先日、青葉さんはスクールバスで私を助けてくれたから。」
「でも、あれは任務で、そのとき千夏と臨時の小隊も組んでいて——」
「そんなこととは関係ない。ただ青葉さんが私を助けた、それだけだ。」
紗夜は僕の言葉を遮り、メニューを僕の前に押し出してから続けた:
「恩に報いるのは、人としての基本、ただそれだけだ。」
紗夜は意外なほど、かなり付き合いやすい。
メニューを見て、紗夜がそこまで言うならと、僕もあまり断れず、モカを一杯頼むことにした。
コーヒーを待つ間、僕は紗夜を見て尋ねた:
「保健室で神代さんがまだ小隊メンバーがいないって言ってましたが、募集するつもりなのか、それとも別の考えがあるんですか?」
僕は小隊のことをどうすればいいのか、まだ分かっていない。以前千夏は、小隊メンバーが見つからなければ彼女を頼ればいいと言ってくれたが、いつもそんなに迷惑をかけるのも申し訳ない。とはいえ、この数日間も無為に過ごしていたわけではなく、学校のフォーラムで募集ができるというのを耳にした。ただ、普通はかなり実力のある学生がそうするものらしい。
「射撃科と偵察科の試験に合格すれば、それで問題ない。」
「そうですか。神代さんはすごいですね、かなり万能ですね。」
カフェの暖かな灯りがテーブルに落ちていて、僕はテーブルを見つめて少しぼんやりしていた。
そうだよな。なにせ紗夜はこれまでかなりすごいところを見せていたから、射撃科と偵察科の試験に合格するのも当然だろう。
そのとき、店員がコーヒーを運んできて、僕の前に置いた。僕はコーヒーを見ながら黙って一口飲んだ。
紗夜は僕を見て、何かを値踏みしているようだった。彼女もコーヒーを一口飲み、それからカップをテーブルに置いて『コトッ』と澄んだ音を立てると、口を開いて尋ねた:
「青葉さんはどうするつもりだ?」
「僕はまだ決めてないんですよ。千夏さんが、どうしても小隊メンバーが見つからなければ一時的に名前を載せてあげるって言ってくれて。そうすれば先生が頻繁に聞きに来るのは避けられそうですけど、やっぱり対症療法でしかないですけどね。」
「アナスタシア、彼女もまだ小隊を組んでいない。」
その名を聞いて、僕の脳裏にあの武器を使わない白髪の少女が浮かんだ。彼女も小隊を組めていないとは。
「でも、なぜですか?アナスタシアは強いですよね?」
「素手での戦闘は危険だ。それに、彼女は小隊メンバーに、少なくとも自分よりずっと弱くはないことを求めている。」
戦闘か、やはりそう簡単ではないな。僕は右手で、怪我のため胸の前に吊っている左腕を指し、苦笑いを浮かべた。
「たとえ本当に彼女相手に何手か持ちこたえられたとしても、この状態じゃ無理でしょう。」
「傷が治れば、いけるはずだ。」
「それでも傷が治るのを待たないとですよね。校医は治るまでに少なくとも一ヶ月かかると言ってました。でも、僕にはそんなに時間がないんですよ。」
僕は心の中で時間を計算した。アナスタシアとの小隊編成テストが一ヶ月後になるなら、絶対に間に合わない。
「やはり聞きに行ったほうがいい。」
紗夜はコーヒーカップをテーブルの奥へ押しやった。どうやら飲み終えたようだ。紗夜はもう本もしまっていたが、立ち上がって去ろうとはせず、その場に座ったままだった。
僕はコーヒーを飲みながら、横目で紗夜を見ていた。
すぐに立ち去らないのは、まだ何か用があるのか? ああ、まさか紗夜は僕と一緒にアナスタシアを探しに行くつもりなのか?
そこまで考えて、僕はコーヒーを一気にがぶがぶと飲み下した。苦みとともに、体が自己防衛のようにえずく感覚が込み上げてきた。
「ゴホッ、ゴホッ……」
僕は何度か咳をしてようやく落ち着くと、紗夜を見て、少し自信なさげに尋ねた:
「神代さんはアナスタシアさんのところへ行くつもりなんですか?」
「うん。」
「でも、たとえ探しに行くとしても、アナスタシアさんがどこにいるか分からないですよね?」
紗夜はこの問いには答えず、僕がコーヒーを飲み干したのを見ると、立ち上がって席を離れた。
僕も仕方なく、彼女の後ろについていった。




