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第十八話 油断大敵


 リヴェナは、先手を打つ。


 魔力を込めた剣でフェアンに斬りかかる。


 速さ、重さを兼ね備えた剣技は、戦いの座を有利に運ぶ。


 華麗な剣技は、寸分違わず正確で、フェアンに命の危機を忠告する。


「いやぁ良いね!これは、俺も本気でやらなくちゃね」


 フェアンからは、魔力が溢れ出し、誰もいない静かな場所に、異様さと歪さを醸し出す。


 ゴムのように伸びた両手は、リヴェナの体に触れる直前手のひらを開花させた。


 いきなり速さを増し、リヴェナのリズムが崩れた。


 リヴェナは、フェアンの能力をアレンから聞いていた。


 能力は、手のひらが相手の体に触れる事で記憶操作による体の変形を可能にする。


 悪趣味だと思えない程に厄介な能力である。


 リヴェナの肩に手のひらが触れられていた。


 即座に斬り落とすが、ユニークスキルは発動し、肉は裂け骨は粉砕する。


 痛みなどなかった。


 あったのは、圧倒的な力の差の前に跪く弱者であった。


 レベル4のリヴェナでもアレンのように、やられる。


 アレンは、フェアン特効だったのだ。


 フェアンの最大の強み、体の変形を完封できた。


 だから、レベル5相手でもここまでやれた。


 リヴェナは立ち上がる。


 筋肉が裂けたのならば、魔力で補えば良い。


 骨が粉砕したならば、魔力を骨の形へとさせれば良い。


 ただ回復魔法は、非常に難しい上、リヴェナには使えこなせなかった。


 魔法はイメージで、想像を出来なければ発動出来ない。


 それ故に人体の形は複雑だと知っていたリヴェナは、イメージなど出来るはずが無かった。


 無数にある毛細血管、色々と役割があり一個でも働かなくなれば、歯車を外したように動かなくなる臓器。


「おぉ、流石レベル4と言ったところかな?」


 剣を強く握り締める事で、筋肉が収縮し溢れ出す血。


 そんな物は気にも留めない。


 フェアンが一回の瞬きをした時には、リヴェナは居なく背後に殺気の気配を感じる。


 凝縮させた生き物を剣にし、リヴェナの一閃を封じる。


 リヴェナは先程よりもスピードを上げる。


 フェアンもそれに乗っかるようにスピードを上げ、周りを駆け回った。


 あらゆる建物を粉砕し、そこには剣が混ざり合う音と崩れ落ちる音が鳴り響いた。


 両者、視線をめぐらせ、神経を研ぎ澄まし、相手の動きを視点で追う。


 一度でも動きを狂うえば命取りの、固唾を飲むやり取りが続く。


 フェアンは、楽しさに口角が上がっていく。


 両者完璧に狂わず動けるとするならば後は――体力勝負。


 そして、体力勝負などに勝てる訳もないリヴェナは、体勢を崩す。


 だが、剣撃は終わっていなかった。


 ――戦いにはリスクとリターンを天秤に並べる事が多々ある。


 リスクがリターンを下回れば、リスクを取ると言う選択は大いに戦いを有利に動かすからだ。


 リヴェナの体勢は崩れた今、剣撃など威力を出せない。


 フェアンは、その攻撃をわざと受け、出来た隙を一気に叩き潰す事にした。


 リヴェナの攻撃が、フェアンの体の皮膚を浅く切り裂いた瞬間、フェアンの手がリヴェナに触れようとしていた。


「おつか....」


 “お疲れ様”と言おうとした瞬間、体の中で命を削り取られる響きが、血管を伝い、骨を伝い、脊髄を伝い脳へと共鳴する。


「ユニークスキル発動」


 リヴェナの疲れと安堵が混ざった声がそう伝える。


 こいつ....ユニークスキルなど所持していたのか?と唸った。


 レベル4の魔剣士など見抜いたフェアンは、レベル5の俺にユニークスキルを所持しているなら最初から使うとそう考えていた。


 だが油断であった、リヴェナは最初からユニークスキルを持っていないと勘違いさせこの瞬間を狙う、仕立てであった。


 フェアンは予想外の事態に、動きが固まりリヴェナは、その間に5回ユニークスキルを与えた。


 直ぐにフェアンは距離を取ると、呪力で治し始めるが中々に治りが遅い事に気付く。


「君のユニークスキルは、弱い斬撃でここまでの威力を出せるのだから、割合ダメージ。そして一撃毎に1割を付与出来るのかな?」


 フェアンは、魔人でありほぼ魔力で構築されている体など、魔力を操れれば、掌握可能であり理解が深い。


 どこまで傷を負ったか理解していた。


「理解が早いな」


 荒れた息を無理矢理押し込んだ。


「良い能力だね。レベル4になるべくしてなったって感じだ。後は、回復魔法さえ習得していればレベう5にでもなれるだろうけど、センスもあるし無理か」


 フェアンはニタっと笑い攻撃を続ける。


 どっちの攻撃も触れさえすれば、モロに喰らう張り詰めた空気。


 だが、リヴェナの体は限界に達していた。


 フェアンの渾身の一撃で体が吹き飛ばされた。


 人間と魔人が一緒の力を持っているならば、魔人がその場を制す。


 それは、魔力のコントロールが人間と違い桁違いだからだ。


 リヴェナとフェアンとでは、リヴェナの方が力が劣る。


 敢えてユニークスキルを発動させず、フェアンはリヴェナの首を掴み、持ち上げる。


「ラリに次は、あんたを殺す。アレンはどうな反応するかな?いや、死んでるか」


「いや、アイツは死んでもくるよ」


「どうして?」


「私の友人だった人もヒーローを目指していた。ある時、私は攫われたが、その友人が来て大人2人相手と言うとんだ不利な戦いを命と代わりに勝ち、私を助けてくれた。そいつと似てるんだ、アレンは。嫌と言うほどにな」


 リヴェナにとっては辛い過去であった。


 故に友人と似ているアレンを最初は毛嫌いしていた。


 だが、アレンの真っ直ぐな目が心を変えた。


「でも、俺との戦いは勝てないでしょ」


 ――勝てる訳のない戦い。


 それに水を刺したのはアレンだった。


 動ける筈のない傷を負い、安静にしてたとしても死んでしまうような状態だった。


 そんなアレンが、奇襲をしフェアンの腕を斬り刻む。


 前のアレンならば、腕を斬ることさえ不可能であった。


 ならば、何故なのだろうか。


 それはフェアンが振り向いた瞬間、一目瞭然であった。


 アレンが自我を保ち白龍を操っていたのだ。

 


 

 

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