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第十六話 ラリ視点

 私は、順風満帆な人生を送っていた。


 学校から帰れば、母が優しい顔で“おかえり“って言ってくれて。


 美味しいご飯を楽しく母と食べていれば、父が優しい声で”ただいま”と言って帰ってくる。


 ――そんな日々が続けば良いと思っていた。


 ある日、父も仕事が休みで沢山お話が出来ると、楽しみに帰っていた。


 玄関付近まで着くと、妙に家の中が騒がしくて、お客様でも来ているのかなーって思った。


 でも臭いが酷く、何しているのかな?と玄関のドアを開けると、死体が沢山倒れていた。


 中には父と母も居て、過呼吸が酷くなったのを覚えている。


 異臭の原因は、親と知らない人の血の臭いだと直ぐに分かった。


 視線を違う方にやると、髪の長い男の人が立っていた。


 過呼吸になり、地面に膝を付いた私を優しく手で包んでくれた。


「ごめんね。嫌なものを見せたね」


 優しい口調で、何があったのかを説明してくれた。


 この知らない人達は、父が研究していた魔道具を奪いに来た悪い人だと言うのだ。


 駆け付けた時には、私の親は殺されていたのだと。


 今日は私を俺の家で泊めてくれると言ってくれた。


 私は、虚無になった。


 楽しかった日々があっけらかんと無くなるんだって。


 実感が出なかったけど、一晩置いたら、もう居ないんだって涙が溢れて止まらなかった。


 そんな私を見た長髪の男は、優しく寄り添ってくれた。


 学校はもう行きたくないと伝えると、長髪の人は良いよと言って辞めさせてくれた。


 名前は、『フェアン』だよと教えてくれて、親を殺した人達に復讐するための術を身に付けさせてくれた。


 どうやら、殺した人達は、組織として動いているらしい。


 だから、自分の手で殺せるようにと。


 ユニークスキルも早めに発芽した。


 ユニークスキル内容は、魔力が著しく籠った一定の大きさの物を伸ばせると言うものだ。


 比較的に、私のユニークスキルは、魔力の消費が抑えられるとの事だ。


 フェアン曰く、私はセンスがあるらしい。


 フェアンは頻繁に何処かに行く時もあったが、決まった時に帰ってきてくれる。


 ある日、ある会話をした事を覚えている。


「ねぇ、人間ってエゴの塊なのかな?」


 私は、そこと無く聞いてみた。


 別に深い意味はない。


「そうだね。人間はエゴの塊だよ。人間も他の動物を殺して食しているのに、いざこちら側が殺されるとなると鬼だとか騒ぐ」


「確かにそうですね。私も沢山の動物を殺しているのに、親が殺された時から、殺した人達の憎悪が消えません」


「それで良いだよ、ラリ。生き物は、全員エゴで生きているんだよ。生き物同士エゴを押し付け合い、力の強い者が生き残るんだ。世の理だよ」


「親は、復讐を肯定してくれると思いますか?」


「当たり前だよ。復讐出来れば、勝者へとなる。勝者になれれば、正義へとなる。そうやって、世の中は回っているんだ」


 肯定してくれた事が嬉しかったのを覚えている。


 空っぽになった私の人生をまた満たしてくれるそんな気がした。


「あの、私!フェアンさんに恩返ししたいです。私は与えてもらうばかりで、返す事が何もありませんでした」


「いいよ、いいよ。そんなの。生きててくれるだけで嬉しいよ」


「で....でも!私の気がすみません」


「なら、君の記憶を少しの間だけ、消失させていいかな?」


「何で....?」


「俺の一つ目の目的を達成する為さ」


 フェアンの目標を達成させられれるなら、私はそれを受け入れる。


 気付くと、私は雨の降っている裏路地に居た。


 記憶は全くなく、覚えているのは名前だけ。


 頭がぼーっとして裏路地に出てただただ曇った空を見ていた。


 そうしていたら、顰めっ面をした男の人に拾われた。


 その人は魔剣士らしく、名前はアレン。


 可愛い顔と嘘を付き、リヴェナさんの事務所に泊めさせてもらう事になった。


 家事を教えて頂いて覚えると、スラスラと熟せた。


 びっくりする程だ。


 アレンと喋ってる時は、どこか懐かしい気分になった。


 何でだろうか?今の私には分からない。


 だが、翌日、私の記憶は戻った。


 全てを覚え出した。


 ここから離れようかと考えたが、やっぱやめておく事にした。


 楽しかったからだ。


 ある時、“記憶が無くなったらどうする?”と聞かれた。


 私は思った通りに応えると、アレンは記憶が無いのだと言った。


 私は、心底可哀想だと思った。


 私が親を無くしているから、それも相まってだと思う。


 その旨を伝えてると、私が咄嗟に付いた嘘と矛盾してしまい、直ぐに嘘で塗り固めた。


 少しだけ気持ち悪くなったのを覚えている。


 私の親が私に嘘で汚されていくように思えたからだ。


 私は、嘘を付き続けた事をバレて、追い出されるかなーと思ったけど、アレンの回答は違った。


 優しさに満ちていて、思わず泣きそうになった。


 だから、冗談を言って誤魔化した。


 もうそんな優しさは、私に必要ない。


 爽やかな朝、私は覚悟を決めた。


 今日、私の家族を襲った組織に復讐すると。


 リヴェナさんとアレンの任務を見送り、部屋を綺麗にして去った。


 組織に乗り込んでみると、皆んないきなりの奇襲で驚いたのか、上手く統率を取れていなかった。


 呆気なく殺せた。


 流石、魔道具、魔薬を流通させている所だ。


 色々な攻撃が飛んでくる。


 だが、フェアンとの訓練は、裏切らない。


 3階も制覇した所で、アレンが目を大きく張らせて来た。


 アレンの話を聞いていれば、無神経な事ばかり。


 ウザかった。


 でも、アレンは必死に私に寄り添おうとしている事が戦いを通じて分かった。


 人の優しさがこんなにも温かいのだと、再確認した。


 何で私の親がって....そう思う。


 でも、親はアレンと同じ優しい人だった。


 そんな優しい人が復讐など望んでいない事も今になって気付いた。


 私はもう取り返しの付かない事をした。


 なら、アレンに私の生き様を吐いて償おうと決めた。


 その時、後ろからフェアンの気配がした。


 だが、いつもの優しい気配では無く、ドス黒い気配だった。


 次の瞬間、私の視界は暗転していた。


 ああ、お父さん、お母さん....そっちに行きたい。


 でも、罪は償わなければ。


 ごめんなさい。

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