十四話 嘘
「なぁラリは、記憶が無くなったら何をする?」
俺は、買い物の帰り、立方体の木材に横たわり聞いた。
ラリは、家事を完璧にこなす。
料理もうめーし、埃っぽかった事務所もすげー清々しい部屋になった。
気遣いも完璧で、俺が無くしモノをした時には、すぐに察して探し物を届けてくれる。
少し気味が悪いぐらいには。
趣味も合うんだ。
俺の好きな漫画――『ヒーローズアカデイン』では、ヒーローが出現したワーリングを倒し、皆を助ける。
ヒーローは、弱き者を自分の命を懸けてまで助けようとする姿に俺は、感服した。
ラリもヒーローに感服した人の1人だ。
暇そうにしてた時、試しに貸してみると暇な時間は、その漫画を読む事に熱中していた。
話す時もその話題で和気藹々とし、リヴェナ先輩を置いてけぼりにする程だった。
そんなラリに記憶が消えた時どうするか気になったのだ。
だから、聞いてみた。
ラリは、うーんと頭を傾げた。
「私は、誰か優しい方に助けて貰って、お世話になった分をお返ししますね。ちゃんと返せるかは分からないけど。私の事は、その合間に覚え出すことに尽力するかな」
「覚え出せなかったら?」
「覚え出せなかったらーー自分のやりたい事に人生を使うかな」
ラリらしい答えだな。
そうだな、俺も自分のやりたいように、やらなきゃいけないよなぁ。
せっかくの人生を棒に振る事になるかもだからなぁ。
ラリはどうして?と言いたげに訝しげな顔を覗かせてきた。
なので、聞いた理由を説明する事にした。
「俺は記憶なくなってんだ。気付いた時には、気持ちの悪い洞窟の中で涙を流しながら目覚めてさ。訳分かんねぇよな?だから、俺の信念と記憶を取り戻す為にここにいるんだ」
すると、ラリは唖然とし、悲しい顔を見せた。
何かを思い出すように、目を細め言葉を紡いだ。
「そんなの辛いよ....記憶が無いって事は、アレンの事を愛してくれた人も思い出せないって事でしょ?家族も....」
ラリの瞳は悲しみに揺れていた。
声は震え、同様に体も連動するように震えた。
「ラリは、親にイジメられてたんだろう?親の愛を受けた事あるの?」
ラリは、唇で口を強く閉じた。
そして、重い口を開かせ、発する。
「私、嘘をついたの。本当は、親には身に余るほどの愛情を注がれた。私はそれが嬉しかった。でも、その愛情は私には重すぎて....だから、家を逃げるように離れた。ごめんなさい!!嘘をついて」
俺は少し動揺した。
嘘をついた理由は、ここに泊めさせて貰うためか。
だが、安堵の気持ちが溢れ出した。
ヒーローにとっては、悪人がいない世界を強く望んでいる。
俺はまだヒーローにまではなれていないが、気持ちは一緒でありたい。
「それじゃ、親はラリを愛してるって事だろ?なら良かった。話し合いで解決しそうだからな!なんなら俺が着いて行こうか?」
ラリは、俺が責めだすとでも思ったのだろうか?
予想しない言葉に拍子抜けをしたような顔をした。
淡い夕焼けが彼女の頬を照らす。
そして、プッと笑い出した。
「え?何で?」
ここは感動して泣く場面なんじゃないのか?
一歩譲って真顔ならまだ分かるが、笑い出す!?
情緒大丈夫か?
「ごめん....!デジャヴって言うのかな?ヒーローズアカデインのヒーローの3巻のあのシーンに似てて!!」
ラリの言ってる事は、ヒーローが助けた人に嘘をつかれ、命が危険に晒される。
だが、窮地を乗り越え、嘘をついた理由もつかなければ、大事な人が死ぬからであった。
それを知ったヒーローは、嘘を許すって言うシーンの事だろう。
「そりゃぁ、寄せてるし」
すると、ラリは赤く染め微笑んだ。
「3巻の最後のセリフ――」
3巻の最後のセリフ....
それは、ヒーローを象徴する台詞。
「人を許せる寛大な心を持てって奴か?」
「そう!でも、今の私がそれを好きだと言っても、自己中心的な人になっちゃうよね....」
ラリは、頭を下げた。
そして続ける。
「ありがとうございます!許して貰えて....親の元へまた行こうと思います。そこで厚かましいと思いますが、一緒に家まで来て貰いますか?」
「当たり前だろ?ま、家事全般をこき使ってやるけどな!かと言っても今日と明日は、任務あるかもだから無理だわ。明後日行こうぜ!」
――そして当日、任務から帰ると事務所からラリは、姿を消していた。




