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フリーダム

 さえりがいなくなり、総合キャプテンは島護が務めることになった。田沢湖は、副キャプテンをそのまま続投。女子キャプテンは紀友、女子副キャプテンは見夜となった。


 この新体制を決めたのは日村先生と龍山先生だが、2人の先生はあまり部活に関わらない。日村先生は、今年度から少し偉くなって仕事がだいぶ増えたらしく、忙殺されてあまり部活に来ない。龍山先生は毎日顔は出すものの、担任のクラスの様々な事情で来るのがいつも遅い。また、卓球に関しては全く経験無しということであまり口を出さない。つまり、この卓球部は結構フリーな部なのだ。


 準備体操をしていると、自動的に雑談の時間になる。

「田沢湖さんって、眉毛の両端がピンッてしてますよね。」

見夜が話しかけてくる。

「そうそう、私も思ってた。シュッてなってる。」

夢々子も言ってきた。そう、田沢湖の顔の最大の特徴は、眉毛なのだ。太くて、端っこが上に立っている。

「それ、皆からよく言われるんだよ…。」

「毎日セットしてきてるんですか?」

「んな訳ねぇだろ…。」

「あははははは。」

 体操が終わると、ボールを使う練習を始める。

「さて、何すっかな。」

「ストロベリー!」

「ファルケンベリでしょそれを言うなら…。」

「ファルケンベリだろ…。」

紀友のボケに夢々子と田沢湖が突っ込む。

「出目金は突っ込むなぁ!」

「誰が出目金じゃ!!」

夢々子は、髪の結んだところが金魚のヒレのようで、さらに目が大きいので「出目金」というあだ名がついている。

「あのさ…いいから黙れ!練習するぞ!!」

島護が叫ぶ。

「いや黙れは無いでしょ黙れは…。」

こういう一言は、意外と反感を呼ぶ。

見夜と夢々子がふとつぶやく。

「黙ってほしいのはそっちなんですけど…。」

「あんたの声の方がうるせぇよ…。」

 ファルケンベリをしてから、ドライブの練習をした。そこでも島護は、反感を呼ぶ一言を発した。

「お前さ、ドライブは最近教えてもらったろ。先生からつきっきりで教えられたんだから覚えてようよ。鶏かよ。」

夢々子は、思わず言い返す。

「はい?私人間ですけど?」

「だーかーら、あんだけ教えられてんのに覚えられないとか、ホントに人間かよって言いたいの!」

「は!?自分が年上だからって何言ってもいいと思ってんですか?」

なんかちょっとまずそうだったので、慌てて仲裁に入る田沢湖。

「ちょっと待てよお前ら落ち着けって…。」

「お前はいいから練習してろ!!理由も無いくせに首突っ込むな!!」

「キャプテンが後輩と喧嘩して全体への指示を怠りそうだったので副キャプテンが止めにきました。理由はちゃんとあるよ?」

田沢湖とペアで練習していた見夜も、口を出してくる。

「いくら自分が先輩だからってその言い方は無いと思います。」

「…あぁーはいはいすいませんでしたぁ。」

(はぁ…。なんでこうなるかなぁ。)

「なんですかその言い方…!」

小さいが、恨みの籠った声で夢々子がつぶやく。

 とりあえず、この場は収める事ができた。練習に戻ると、見夜がこう言った。

「なんか島護さん最近うるさいですよね。前と全然違うっていうか…」

(なんだろ…総合キャプテンなって権力に酔っちまったのか?)

 こうして、この日の練習は後味悪く終わった。

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