第三話:オークション(後)
この日、雉崎はオークションでジェネラリーゼと呼ばれる女性に引き取られた。
そして彼はジェネラリ―ゼの邸宅、屋敷に招待されることになる。
…主人との、自宅での話し合いは、一体彼に何をもたらすのだろうか。
──────オークションから数時間後。ジェネラリーゼ邸。
「じゃあ、まずは自己紹介をお願いできるかしら。」
「それよりあの…なんで縛られてるんでしょうか…?」
手首に巻かれた太い縄。
手は後ろに縛り付けられ、とても動かすことができそうにない。
前には堂々と座る主人と、その横に一人の従者がいた。
「ノアや魔力が暴走しないためによ。ほら、ノアの選定の時に居たでしょ。苦しそうに死んでいった人。あれ、ノアが暴走してたのよ。」
ノアの選定は時に困難を極めることがある。
実際、雉崎たちが経験した先の選定でも約半数のクラスメイトが息絶えていた。
たとえ勇者という称号が与えられているといえども母体はそうではない。
小さな器に閉じ込められることを、内部の”ソレ”は嫌がったのだ。
「確かにいました…」
フラッシュバックするあの時の記憶。
雉崎の手を掴んでくれたあの少女は、今はもういない。
助けられなかった事への謝罪を最後にするなんてズルい、と思わず口にしてしまう。
ただ許す事しかできない。お礼も、不満も、言葉にできない。
良心の行き場に困り、言いようのない耐え難さを彼は味わう。
「分かってくれたならいいの。それで、自己紹介は?」
「…はい。名前は雉崎で───」
「ああ。いいの。名前とか年齢とかは分かってるから。私が聞きたいのは、貴方がどんな性格をしていて何が好きかとか、そんなとこ。」
主人は真顔のまま、案外浮ついた事を口にしたのだった。
「好きなものは…えっと、漫画ですかね…。」
「マンガ?何それ?」
「えっと、漫画っていうのは本の一種で…」
しばらくは以前住んでいた文化の話が繰り広げられていく。
雉崎にとって以前の生活を思い出すことは苦しかったが、彼女らの驚く様子には親しみがあり、少しずつ気にならなくなっていく。
────彼女らは感心したように納得することもあれば許せないとばかりに憤慨することもあったが、いずれにせよいたく興味を持っている様子であった。
漫画やゲームといった娯楽のないこの世界では暇がしょっちゅうであるから、そのような新鮮な情報はやはり心に惹かれるものがあるのだろう。
「…なるほどね。よくわかったわ。説明ありがとう。君が来た世界は随分と文明が進んでいるのね。」
「…はい。そうだと思います…。」
穏やかな彼女らとは反対に、雉崎はまだ緊張が途切れない様子。
彼はただでさえ、女子には避けられてきた人生であるから。
久しぶりの女性との会話、しかも相手が美人とあってはそれも致し方無い。
「貴方はどう思う?アイリス?」
主人はちらりと横を向き、隣の従者に話しかける。
可憐な従者は突然の質問に驚いたのか、少したじろぎながら意見を述べた。
「はい…。新鮮で、素晴らしい世界だと思います…。身分がなくて、皆で助け合っていく社会だなんて…。もちろん弊害はあるみたいですけど…。」
彼女は遠く先の民主主義に、思いを馳せていたようだ。
────従者は可憐である。
これまた魅力的な女性と言わざるを得ない。
ただ主人とはまた違ったタイプで、綺麗というよりは可愛らしい感じに近い。
年相応の無垢さと感性を併せ持つ、誰が見ても完璧な少女。
それが、主人と隣に立つ従者一号であった。
美女二人と、手入れのしていない不潔なあぶれ者一人。
傍から見ればなんとカオスな光景であろうか。
お前は場違いだ、立場をわきまえろと、自分で自分を叱りつけたくなる。
客観視すれば、自分がそのくらい浮いていることは明白。
何で自分はこんな所にいるのだろうと、そう思いながら。
彼女らが何やら口にするのを眺めていた。
「どう?多少は落ち着いた?」
「…はい。」
主人は笑顔も無く、事務的な表情で雉崎を見つめる。
書類を両脇に並べ、机の中央に鎮座する彼女はとても大きく見えた。
…そして。
「…じゃあ本題に入るわ。貴方の待遇についてよ。」
「────はい。」
突如、空気が変わる。
ピリピリと肌を裂く緊張感が漂い始める。
どうやら先ほどの小話は雉崎自身の判断を正確にするため、冷静にさせるために行ったものだったらしい。
幾たびもの危機を乗り越えたはいいものの、それで気が動転しているようでは合理的な話し合いはできない。
彼女は、そう考えていたようだ。
書斎の間。
絢爛さと複雑さを兼ね備えた室内に、当事者二人と傍観者及びアドバイザーが一人。
魔法士に限らず雇われた人間が最初に雇用主と確認する条約。
至って真面目な、契約内容の確認であった。
「はじめに。
とにかく、外では私の従者として振る舞うこと。
私は19歳で、貴方は17歳。仕事や環境も違うから付きっきりでは見られないだろうけど、なるべくは助けてあげる。
学院についてはとりあえず、保留ね。しばらく入学は認めない。
自分の魔法とノアがどんなもので、どんな使い方ができるのかくらいは確かめておいてちょうだい。」
主人の物言いは潔い。
伝えるべき事をはっきりと、的確に示す。
聞き取りやすく、理解しやすい言葉で一度だけ。
そこからは、一回の失敗も許さない完璧主義のようなものも垣間見えた。
─────彼女は腕を顎の下に当て、より一層雉崎を直視する。
凛とした目つき。鋭い眼光で。
未だ現状を把握できていない、浮ついた従業員に改めて現実を突きつける。
それが、今の彼には必要なことだと信じて。
「今のうちにはっきり言っておくわね。
実は、私は貴方にはあまり期待していないの。」
「────え?」
突然の宣言に呆然とする雉崎。
それに構わず、ジェネラリーゼは続けていく。
「そこのアイリスとは違う。
貴方は属性が論外な上に頼りのノアも未知数。つまり確約できる利益が無い。
そんな無価値かも分からない人間をそう長々と置いておくわけにはいかないでしょ?
だから、貴方を雇うのにも条件をつける。
永久就職だー、とか思っているのなら大間違いよ。」
「…………………。」
「いい?とりあえずこの二か月であなたの能力を見るわ。
そしてそれが使い物にならなそうだと思ったら即、この家から出て行ってもらう。
道端で野垂れ死にたくなかったら、必死で己の価値を証明して見せることね。」
「わかり…ました。」
雉崎は唇をぐっと噛みしめる。
もし成果が出なければ、使えない商品などは即座に、安易にクーリングオフされてしまうだろう。
────人生をかけた研修期間。
いわば就職のための第一歩。正規雇用の初期段階。
魔法士世界は徹底した実力主義のためアルバイトの研修のような生温いものでは決してない。
もし結果を出せなければ、即解雇で人生終了。
その事を、雉崎もよく分かっている。
「アイリスの教えをよく聞いて、しっかり学びなさい。
結果がでるよう、精々頑張ることね。」
「はい…。」
隠れた彼女の優しさは、彼に伝わらない。
雉崎はただ目を伏せ、黙秘したまま佇んでいた。
(やっぱりそういう事になるのか…)
誰にも選ばれることのなかった自分を雇った女性。
最初の会話こそ友好的であったが、やはり他のクラスメイトとは違う扱いのよう。
雉崎は幾度も続く世界の苦境に辟易しながらも、走り続けるしかないと前を向く。
既に生きる事が精一杯で、楽しむ余裕なんかありはしない。
この世界に、適応する事を求められているのだ。
「────────。」
─────羽ペンは薄汚い紙の上を走り続けている。
しばらくするとインクが無いと息を上げ、その度に間髪入れず主人は墨汁の中にペンを付け入れる。
そして膨大にも思える山積みの資料を正確に、テキパキと処理していく。
その合間には彼や横の従者を見ては”何か言うなら言え”という風で目線を送っていた。
「…失礼します。」
「失礼します。」
バタンと、扉が閉まる音。
二つの足音が廊下を歩いていくのが聞こえる。
木の床はギシギシと撓み、離れていく人影を如実に示していく。
音だけでも自分が一人になるのが良く理解でき、それに彼女は少し反省するのだった。
「………………。」
(少し、強く言い過ぎたかもしれない。
でもしょうがないわ。
彼には早く強くなって、結果を残してもらわなければならないんだもの。)
「…さあ、ちゃっちゃと片付けましょうか!!」
落ち込んだ元気を取り戻すかのように、大きな独り言を叫ぶ。
まだデスクの上には書類が山ほど残っているから、それを片付けてからでなければ次の仕事には動けない。
地方領主も楽ではないと心底思いながら、慣れた手つきでまた作業を再開する。
黒みがかった茶色の木目が走る木造屋敷。
築40年はあろうかという古さでも、きちんと掃除をすればまだその機能は保たれたまま。
場所も首都ガリベルデ内の中心部とまではいかないまでもすぐ近くの屋台道までは徒歩5分ほどであり、比較的金銭に余裕がない地方貴族にとっては勿体ない程の良物件。
両親の反対を押し切って一人で首都に来た村娘なんぞには、あまりにも贅沢な代物であった。
「はじめに、ここがお庭です。そしてここが渡り廊下で、あっちがキッチンと食卓ですね。」
部屋を出た二人はまず、屋敷自体の説明に入った。
アイリスは部屋を見てはその用途を説明し、家庭内でのルールをそれとなく伝えていく。
───淡々と、けれど分かりやすく。
主人と似通った几帳面さが、彼女にも現れているようだ。
「さっき通ったのが寝室の横で、向こうの扉は客間…で、あっちは裏口に繋がる下り階段…」
歩いていると思ったよりも屋敷は広く、一回では完璧に覚えきれそうにないことが分かる。
が、道中では彼女が疑問に思っていた点に的確に返答を返してくれたおかげで、雉崎は朧げではあるが家の構造を理解しかけていた。
「キジサキさん、年は幾つでしょうか…?」
「えっと、17です…。」
「なら同い年ですね。学校でも一緒になるかと思われますので、これからもどうぞよろしくお願いします。」
「あ、お願いします…!」
アイリスは深々と頭を下げる。
そして、つられて彼も不器用にお辞儀をした。
……再び頭を上げた彼女はどこか遠い目をしており、綺麗に整えられた髪もお辞儀のせいか少し乱れているように見える。
それは少し不気味なような、そんな光景。
それにより雉崎は、気が付けば口をつぐんでいたのだった。
(俺が学校まで行ける前提で話してくれてるのか…。)
「…次は訓練の仕方ですね。家には広いお庭がありますので、基本そこで訓練はしてください。」
「はい。」
話しながら渡り廊下を歩き、庭に向かっていく。
屋根と壁に囲まれた屋内から離れると、一本木と柔らかい芝生が広がるフリースペースが見えた。
「ここですね。場所はこの中ならどこでも大丈夫です。」
「はい。」
「恐らく明日にもジェネラリーゼ様から説明を受けると思いますから、今日はさわりだけ。とりあえず私の訓練を見ていて下さい。」
「…分かりました。」
「では、始めますね。」
そう言うと、アイリスは雉崎から少し離れて庭の中心に立つ。
そして息を吐き、前方に右手を突き出す。
掌を開き、流れる鼓動を操作して、基本動作の開始を告げる。
「反芻、一、二、三、四、五。」
カウントと共に魔力線が移り変わる。
間隔は一つの動作ごとに10秒程。
魔力線が途切れては別の形に置き換わり、流転する回路を形成する。
効力を発動せずに形状だけを作る、魔法使いの基礎中の基礎、
五連反芻法であった。
「…ふう。こんなところでしょうか。」
「凄い…。」
「それほどでもないですよ。鍛錬を積めばキジサキさんもすぐ出来るようになるはずです。」
「そうなんですか…」
芝生の緑には少し黄色が混ざっている。
元の世界では、今は10月。
今更そんな事に気づき、雉崎は秋の訪れを感じながら空を見上げた。
「…ここの空って、いつも綺麗ですよね…。」
雉崎が呟く。
上に広がるのは真っ新な青空。雲一つない秋晴れ。
この世界に転移してから数日の間、空は綺麗なままであった。
「そうでしょうか?雨も降りますし、曇りだってありますよ?」
「それでも、綺麗です。排気ガスも煙も、濁った雲も何処にもない。」
「それは…」
空気が澄んでいる。
辺りからは自然の香りがする。
都会の闇の中で生きた雉崎にとってそれはとても感動すべき事で、噛みしめずにはいられない。
俗世からの脱却は恐怖だらけだが、同時に今まで感じられなかった幸福を満たしてくれる。
小さい事ではあるが、この世界に来てよかったと思えたのがいたく嬉しかった。
「……………。」
アイリスの目先には、ひっそりと佇む雉崎。
自分の想像もつかない世界で生きてきた人を、彼女は穏やかに見つめる。
彼の本気で嬉しがっているような、安心している様子を見て、思わず心が和らぐ。
(なんだか…幸せそう…)
元の世界でどんな経験をしたのかは分からないけれど、せめて此処がこの人にとって安寧の地でありますようにと。
彼女の心の奥底では、彼に対する憧れや羨望も芽生えつつあった。
「何か、聞きたいことはありますか?」
「特にはないですね…。
まだどれも覚え途中なので、まずは今日教えて貰った事を完璧にしようかと…。」
雉崎はこくん、と頷き、同意を示す。
そしてアイリスはしばらく辺りを見回した後、再び彼の方を向いた。
「じゃあもう日暮れも近いですし、夕食にしましょう。
今日は私が作るので大丈夫で…」
「いやいや!俺もやります!普通にできること、これくらいしかないので!」
「…はい。じゃあ一緒にやりましょうか。」
少しの驚きと、喜びを露わにする彼女。
夕暮れに照らされ、その顔はほの赤く照っている。
─────美人の前では、思わず格好つけたくなってしまうのが男の性だ。
自分ではそう自覚していないとしても、至って真面目でシリアスな心持ちだったとしても、どうしても一ミリくらいはそういう感情が入ってきてしまう。
異世界の食材をどう料理すればいいかという未来を、簡単に想像できないくらいには。
「えっと…。これは…」
「カミールホースの肉ですね。今日はこれを主食にしようと思っていまして。」
「すみません…。さっきあんな事を言っておいてあれなんですが、異世界の食材は見たこともないものばかりで…」
「全然いいですよ。そしたらいい機会ですし、一緒に作りましょうか。」
「はい…!お願いします…!」
その後はアイリスに丁寧に教えられながら、共に三人分の料理を完成させていく。
手つきを教わり、器具の使い方を教わり、食材の種類を教わり。
後はより美味しくするための小技も少しだけ。
ジェネラリーゼ家の食卓事情が、手に取るように理解できた。
「このお肉は筋がしっかりしてるので初めに筋切りをしておきます。
調味料の配合などはこちらの本に載っていまして…」
「なるほど!どれどれ…塩と胡椒が…」
「ひゃっ!?」
「え?」
顔を背け、見るなと言わんばかりに手のひらを突き出す。
雉崎は何が何だか分からない様子で、とりあえず彼女の言うとおりに視線を外すしかない。
仕方なく雉崎は視線を戻し、難儀な馬肉と睨みあいを始めるのだった。
─────どうやら、突然の接近に彼女の心臓は持ちこたえられなかったらしい。
突然に現れた異性との密着イベントも、それに自分が変な声をあげてしまった事も。
気を張っていた彼女にとっては絶大な失態であった。
「…コホン。なんでもないです。はい。どうぞ。近くで見たいのですよね。」
「はい…。ありがとうございます…?」
目の前に手渡されたのは先程の料理本。
盛んにページを開かれた跡が残っており、頻繁に作る料理の欄には折り目がついている。
直筆のメモが行儀よく並んでおり、文面の口調からも高潔さが滲み出ていた。
「これはジェネラリーゼ様が…?」
「はい。私が来る前に作ったようで。度々使わさせて頂いてるんです。」
「すごいな…」
感心する雉崎。
以前は節約のため自炊の生活であったが、わざわざ自分で料理手順を本に書き起こす事などはしない。
彼が作るのは殆どが感覚で作る男飯で、調味料も日によってあったりなかったり。
食材も決して質の良い物ではなかったために、今日の新鮮味溢れる食材たちには感嘆さえ覚える。
「こっちに来る前は料理とかしたんですか?」
「いえ。両親が作ってくれていました。教えて貰うこともありましたが、昔は面倒くさがりだったのでw」
「あははw俺も手抜きがしょっちゅうだったので、人の事言えないですね…w」
「ふふ。同じみたいで良かったです…w」
会話もある程度は弾み、雰囲気もいくらか和やかになったようだ。
料理を教えているときのアイリスはなぜか少し懐かし気で、表情も少しにこやかになっている。
時々ハプニングも起こったが、それも彼女側だけでの事。
少しの赤面と緊張を交え、大した問題もなく、順調に料理は完成していった。
「ふわぁ…。夕食、できてるの…。ありがとう…。」
少しして、主人は欠伸をしながら食卓に姿を現す。
階段の足音が終わると同時に、料理の盛り付け及び陳列は完了した。
仕事を終えた雉崎とアイリスは向かい合った席に座り、主人の着席を待つ。
行儀よく、姿勢よく、目の前に並べられた料理を前に涎を飲んで。
ただ椅子の軋む、その音を待った。
「じゃあ、みんな揃ったわね。」
主人は真ん中奥の主賓席に座る。
神の祈りを捧げ、一礼。
そしてスプーンとナイフを手に持つ。
最後は、三人同時に。
一秒の狂いもなく、そのナイフは料理に向けられる。
「──────いただきます。」
二人の手料理は、開けられた口の中に運ばれていく。
そしてそれを噛みしめた瞬間、芳醇な肉の旨味が全体に広がっていく。
「おいしい…!!」
「当たり前よ。私が研究に研究を重ねて生み出した調合だもの。」
「凄いですよね。私も初めて食べた時驚きました。」
至って冷静な面持ちで口に運ぶ主人。
その仕草一つ一つが優雅で、目を引かれる。
一方アイリスは久しぶりの御馳走を噛みしめながら堪能しているようだ。
「───────ごちそうさまでした。」
目前には空になった木の皿。
状況を見つつ、雉崎は三人分の皿を重ねて持っていき、井戸から組んできた水で濡らした布でそれらを拭きとっていった。
「…キジサキさんは好きな料理とかありますか?」
「そうですね…。賄いで食べるお刺身とか、好きでしたよ。」
「オサシミ?それは…」
「生の魚です。切り身にして、調味料をつけて食べるんですよ。」
「ええ!?大丈夫なんですかそれ…!?」
「鮮度に気を付ければ何とか。
色々注意しなければいけませんが、食べる時の瑞々しさがいいんですよねー。」
「へぇ…。信じられない世界ね…。」
──────かくして、波乱の一日は終わりを迎えた。
雉崎の運命の方向は、これで完全に定まったといえるだろう。
彼は未だ捨て駒扱いには変わらないが、いずれこの国を背負って立つ立派な勇者の一人になる。
それまでに進む道は辛く険しいものだが、彼ならばきっと成し遂げられる。
そう、信じられる。
彼はもう、今までの不幸な彼ではないのだから。




