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思い出すだけでも呆然とするけれど、私のインナーカラーは茉椰にそそのかされたのだ。
高校入学後わずか一ヶ月、あまりにみっともない理由で転入を余儀なくされた私は、その時期とタイミングがあまりにおかしいせいで噂になっていたらしい。
まあ、せっかく転入したのに誰からも興味を持たれないよりはマシな気もするけれど。
そんな転入生の私に、誰より真っ先に興味本位だけで声をかけてきたのが同じクラスの和久井茉椰だった。
その茉椰の姿こそが、私にピンクのインナーカラーを決意させた根本的な原因であり元凶だった。
茉椰はもはや金色に近いくらいの明るい茶髪にたくさんのピアスをしていた。
お洒落で髪を染めてみたい気持ちはずっとあった。私だって女の子だし興味だけはずっとくすぶらせ、高校生になったらやってやるぞ! と勝手に意気込んでいた。
けれど以前いた学校はわずかな制服の着崩しでさえ咎められるほど校則ががちがちに厳しかった。なので当然、髪染めなど言語道断だった。
ただ仮に校則がゆるかったとしても、ほんの少し前の私には家庭の事情的に髪を染めていられるような余裕はなかった。
それに比べると転入先で目にした茉椰の奔放にしか見えない姿を見る限り、この学校はかなり自由度が高く髪を染めるくらいではお咎め無しに違いないのだろうと思った。
善は急げとばかりに、週末に私は意気揚々と美容院に飛び込んだ。
初めて入った美容院で勝手もわからず、担当になってくれた美容師さんと相談を重ねインナーカラーだったらそんなに目立たないよと薦められた。
さらにインナーカラーは目立ちにくいからかなり明るい色にするのが普通だし、みんなそうしてると笑顔で説明されて真に受けた。
そのうえ、すごく綺麗な髪だなんて褒めそやされて気分も良くなり、いくつかお薦めされた色の中からピンクを選んだ。
単純に私はピンクが好きだったからワクワク心躍らせながら仕上がりを待った。
結果、仕上がったカラーは想像していたより三段階くらい明るいピンク色だった。
少しだけカットしてもらって毛先が肩にかかるくらいに切り揃えてもらったからなのか、そもそも私の毛量の問題なのか、インナーカラーなのにピンク色の占める割合が多く目立たないどころか至るところからピンクが零れていた。
「わぁっ、思った通りだわっ、すっごいかわいい~!」
唖然としていた私が言葉を発するより早く、美容師さんからそんなとろけるような声音で褒められてしまい何も言えなくなってしまった。
けれど確かにかわいくは見えた。
もちろん自分の顔がではなく髪色的な意味だけど、頭全体がまるっきり茶髪の茉椰と比べればぜんぜん大人しいだろうと高を括り意気揚々と登校した。
すると、すでに教室にいた茉椰が一目で私の変化に気が付き、
「うわっ、依乃里すっごい目立ってるじゃん! いいよそれインコみたいー!」
と奔放という一言で済ますには不本意すぎる感想を述べてきた。
予想していた反応とはまるで違っていたことに唖然とした私へ、トドメとばかりに朝のホームルームのために教室にやって来ためーこせんせーから、
「……あー、どうしたんだ西森? いや、いい。わかった。何も喋るな。放課後、生徒指導室ね。その時に詳しく聞くから」
ため息混じりの呆れ口調で一方的に咎められ、弁解の余地さえなく生徒指導室に呼び出されることとなってしまった。
後から聞いた話だと、茉椰は入学式の日こそ制服もきちんと着こなして目立たない黒髪だったけれど、翌日には学校指定外のスクールセーターを纏い明るい茶髪にしてきたという。ピアスに至っては最初からたくさん開いていたらしい。
そして、たったの一日で校則をまるっきり無視する蛮勇に及んだ生徒は後にも先にも茉椰が初めてだったらしい。
そんな茉椰の姿がこの高校の標準なのだろうとすっかり騙されてしまった。いや勝手に私が勘違いしたんだけど。
鈍い頭痛を堪えながら放課後の呼び出しを思って憂鬱になり、やたらとため息の多い一日を過ごす羽目になってしまった。
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