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第33話 シュゼットは、恋話をする

 学園祭の舞踏会から数日後の週末。


 わたしはボワイエ伯爵邸でミレーヌと2人でお茶会をしていた。

 話題はもちろん先日の舞踏会のことだ。


「まあ! ではコルベール様の方からダンスを申し込まれたのね。舞踏会でダンスを申し込まれるなんて、まるで物語みたいで憧れるわ」

「そうなの! 実際にされると、とてもときめくものだと初めて知ったわ」

「素敵ね」


 ミレーヌはうっとりとした幸せそうな表情で語る。

 わたしは既にレナルド様と婚約しているので、今後もそういう機会は訪れない。けれども物語のようなシチュエーションに憧れはあったため、ミレーヌの話を少し羨ましい気持ちで聞いていた。


「それでね、今度アルバン様と一緒に収穫祭のバザーに行くことになったのだけど……シュゼットとベルクール様はいつもどんなデートをしているの? 参考に教えてくれない?」

「わたし達は毎週末どちらかの家でお茶会をしているわ。お買い物やお食事、観劇もたまに。あとは別荘にお招きいただいたのが楽しかったわ」

「なるほど、基本的にはお茶会なのね。今度お会いした時にアルバン様を誘ってみようかしら?」


 ダンスに誘ったのはコルベール様の方からとのことだけれど、ミレーヌも彼のことを憎からず思っているようだった。

 学園祭で一緒にダンスを踊っていた時の2人の楽しげな様子から鑑みると、コルベール様はミレーヌの誘いを快諾してくれそうな気がする。


「そうしてみたらどうかしら? きっと喜んでくださると思うわ。それに、お話しする機会が増えると相手のことを知れて楽しいわよ」

「ありがとう。頑張ってみるわ! ところで、シュゼットはベルクール様と収穫祭に行かないの?」

「わたしは孤児院のお手伝いがあるから、そのあとに一緒にバザーを回る約束をしているの」


 昨年同様、今年も朝からバザーで孤児院のジャムの販売のお手伝いをすることになっている。レナルド様とはそのあとに一緒にバザーを回る約束をしていた。

 今年の収穫祭の時期にはレナルド様はリリアーヌに思いを寄せているだろうから、その約束は叶わないと思っていた。だから、今年もレナルド様と一緒に収穫祭を過ごせることが、彼の気持ちが変わることなくわたしを愛してくださっているということが信じられない反面、とても嬉しかった。


「慈善活動なんて凄いわね。収穫祭が終わったらどんな感じだったか教えてね」

「ええ、もちろん。わたしもミレーヌの初デートの話を聞きたいわ」


 わたし達は収穫祭後に報告の約束をしてお茶会を終えた。



 ♢♢♢



 収穫祭当日。


 いつもよりも早く目が覚めたわたしは、着る服に悩んでいた。


 いつも慈善活動の時は動きやすいようにシンプルなワンピースだけれど、今日はジャムの販売のお手伝いだけだし、そのあとはレナルド様と一緒にバザーを回る約束をしている。せっかくレナルド様と一緒にお出かけするのだから、今日は可愛らしいかっこうの方が良いのではないかしら。


 散々悩んで、華美ではないけれども可愛らしいデザインのオレンジ色のワンピースに決めた。髪はハーフアップにして、レナルド様からいただいたブラックダイヤモンドの髪飾りを着ける。


 身支度を終えたわたしとエメ、護衛のジャンは西教会まで馬車で向かった。平民街は道が狭いので、西教会で馬車を降りて、バザーが開かれる西広場までは徒歩で向かう。祝日の朝早い時間ということもあり、街は閑散としていた。


 歩き始めていくらもしないうちに、道の中央にうずくまる人影が見えた。


「まあ、大変っ!」

「お嬢様、お待ちを。私が確認してまいります」


 慌てて駆け寄ろうとしたわたしをジャンが制止した。わたしとエメはその場に立ち止まり、ジャンが確認のために先行する。


「大丈夫か?」


 ジャンが声をかけたその時。

 うずくまっていた人影が急に飛び起きて大きく腕を振った。

 その手にはナイフが握られていた。

 ジャンはそれをかわすと、腰に佩いていた剣を抜きながら叫んだ。


「お嬢様! お逃げください!!」


 一部始終を呆然と眺めていたわたしはその声で我に返った。

 ジャンはナイフを持った男と応戦している。この場にわたしとエメがいたら足手まといになってしまう。幸運な事に西教会からはそんなに離れていない。西教会へ戻って騎士団に通報しなくては。


「エメ、行きましょう!」


 同じく驚きのあまり固まっていたエメの手を引き、踵を返そうとしたその時。

 がつっと鈍い音がした。

 その直後にエメが地面に倒れ込む。


「エメ!!」


 そう声を上げたわたしは後ろから何者かに羽交い締めにされて口元に布を押し当てられた。


「……っ!?」


 布からは甘ったるい香りがして、それを吸い込んだ途端に意識が薄れていく。


「お嬢様っ!!」


 意識が途切れる寸前に聞いたのは、ジャンが必死にわたしを呼ぶ声だった。

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