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第24話 シュゼットは、ミレーヌと出かける

 7月になり、リヴィエール王立学園は夏期休暇に入った。


 ミレーヌは学園に入学するまで王都を訪れたことがあまりないらしく、彼女が領地に帰る前に、わたし達は一緒に王都でお買い物をすることにした。


 コルネイユ侯爵家の馬車でボワイエ伯爵邸にミレーヌを迎えに行く。


 通された玄関ホールで対面したわたしとミレーヌは、お互いの姿を見て驚きの声を上げた。


「まあ! シュゼットったら……っ!」

「ミレーヌこそ!」


 わたし達2人はどちらも流行りのエメラルドグリーンのドレスに、エメラルドのアクセサリーを身に着けていたからだ。


「まるで姉妹みたいね!」


 どちらともなくそう言って笑い合った。




 コルネイユ侯爵家の馬車に乗り込んだわたし達は、ミレーヌの弟妹にお土産を買うために、王都の東商店街に向かった。


「領地の妹と弟にお土産を買っていってあげたいのだけれど……シュゼットだったら、王都のお土産になにがほしい?」

「そうね……、王都でしか買えないものだとか、王都で流行っているものかしら?」

「やっぱりそうよねぇ。なにが良いかしら?」

「エメラルドのアクセサリーはどうかしら? ちょうど今はやり始めてるわよ」


 わたし達がまず訪れたのは、王都の東商店街にある服飾品店だ。


 裕福な庶民向けのお店で、貴族向けの宝飾品店に比べて価格が手頃だった。


 ミレーヌは色々と悩んで、揃いのデザインのエメラルドのブローチを妹さんと自分用に購入することにしたようだった。


「ねえ、わたし達もなにかお揃いで買わない?」


 ミレーヌの提案に、わたしはすぐさま賛同した。


「素敵ね! せっかくだから、身に着けられるものが良いわ」

「そうね、そうしましょう。……あら、これはどう?」


 ミレーヌが指したのは小振りな宝石がついたシンプルなブレスレットだ。同じデザインで、宝石の種類が異なるものがたくさんあった。


「わたしはやっぱりオレンジが良いかしら」

「わたしは緑が良いわ!」


 わたしは瞳の色と同じオレンジ色のものを、オリーブグリーンの瞳のミレーヌは緑のものを選んだ。


 ブレスレットを購入したわたし達は、通りの向かい側にあるパティスリーでお茶をしながら、さっそく身に着けることにした。


 ミレーヌは身に着けたお揃いのブレスレットを感慨深そうに見つめて言った。


「わたし、学園に入学するまであまり王都に来たことがなかったから不安だったけれど、シュゼットと親しくなれて本当に嬉しいわ」

「わたしこそ、ミレーヌと親しくできてとても楽しいわ」


 時を遡る前は、リリアーヌへの不満の旗印にされて、その声に飲まれてしまっていたから、学園に楽しい思い出なんてなかった。


「これからもよろしくね」

「こちらこそ」


 わたしとミレーヌはネクタリンのミルクレープとメロンのタルトを食べながら、おしゃべりを楽しんだ。


「ねえ、シュゼット、あれを見て!」


 ふと窓の外に視線を向けたミレーヌが驚きの声を上げた。


 彼女の指差す先を見ると、先ほどわたし達がブレスレットを購入したお店に、ストロベリーブロンドの小柄な女性が入って行くところだった。

 女性の隣には帽子を目深に被った長身の男性がぴったりと寄り添っている。


「もしかして、バリエさん?……と、王太子殿下……かしら?」


 リリアーヌの髪色は珍しいので、とても目立つ。


「絶対そうよ。だって黄色いリボンの髪飾りをしていたもの!」


 それならば、リリアーヌで間違いないだろう。


「デートかしら?」

「そうじゃない? ……彼女、凄いわよねぇ。伯爵令嬢(わたし)ですら、王太子殿下のお相手なんて恐れ多くて無理なのに」


 ミレーヌは感心したようにつぶやいた。


 リリアーヌは確かに色々と凄い。

 思わず守ってあげたくなるような小柄で可愛らしい外見の上に、生徒会役員に抜擢されるほど成績もずば抜けて優秀だ。


 王太子殿下だけではなく、レナルド様が好きになるのも頷ける。


 身分以外になんの取り柄もないわたしでは、とても勝ち目がないわね。


 彼女が相手ならば仕方がないと、すとんと腑に落ちてしまった。


 それなのに、時を遡る前のわたしはどうしてあんなにも彼女を下に見ていたのかしら?


「あっ、出てきたわよ!」


 ミレーヌの声に窓の外を見れば、リリアーヌと王太子殿下が仲睦まじく手を繋いで歩き去るところだった。


 わたしとミレーヌは2人の姿が人混みに紛れて見えなくなるまで、目で追ってしまった。


「……なんだかとても良い雰囲気じゃない? 案外、婚約まで秒読みなのかもしれないわね」

「そうね」


 わたしもミレーヌと同じ感想を抱いた。

 ほんの一瞬しか見ていないけれど、リリアーヌと王太子殿下は既に恋人同士のような仲睦まじさだった。


 レナルド様はいつリリアーヌに想いを寄せるようになるのかしら?


 レナルド様のお気持ちが変わるまでは、わたしは彼の良い婚約者でいること以外にできることはないのだから、焦らないようにしようと決めたけれど……。


 リリアーヌと王太子殿下のあの仲睦まじい様子を見ると、既にレナルド様が入る隙間はないように思えた。


 いいえ、弱気になってはだめよ。

 わたしは必ずレナルド様とリリアーヌの仲を取り持って贖罪しなければならないのだから。


 それからわたし達は再びおしゃべりを楽しんだあと、パティスリーでお土産に焼き菓子を購入して帰宅した。

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