王宮 2
「見せたかったんだ」
「本当にありがとうございました」
部屋を出てクォーツ殿下にお礼を言うと照れたように笑った。
クォーツ殿下への警戒はすっかり溶けてしまった。
彼はお兄様が大好きな12歳の男の子なのだ。
聞けばコバルト殿下が体を動かすのが得意じゃないから強くなるため頑張っているらしい。
わーかわいいと言う気持ちになった。
コバルト殿下大好き同盟のような気持ちだった。
「アリア…」
ふたりでおしゃべりしながら歩いていたのでコバルト殿下に気がつかなかった。
「コバルト殿下!」
会えて嬉しくて笑ったが殿下は強張った顔をしている。
そのあと目つきが鋭くなった。
珍しい表情に心臓がひやりとした瞬間、手を取られる。
クォーツ殿下が手を振っていたので慌てて頭を下げた。
また元来た道に引き返すことになった。
「殿下?」
グイグイ引っ張られて少し痛い。
また例のアリア部屋に戻ってきた。
殿下が何か怒っているようで怖かったが、私はこの場にコバルト殿下がいることでさらに最高な空間になってしまったなどと考えていた。
きゃーと言う気持ちになっていたらそのまま腕を取られて壁に押さえつけられた。
棚にぶつかり物が落ちると不安になったが確かめることは許されなかった。
そのまま手を押さえつけられ、キスをされる。
今までと違う大人のキスで息が苦しかった。
起こっていることに混乱した。
ドキドキして死んでしまうかと思った。
「んっ」
解放された時には泣きそうだった。
「僕を捨てたら許さない。」
あまりにかっこいい顔が目の前にあって心臓が鷲掴みされたようだった。
キューンとなっている心臓を抑えるために手をぎゅっと握った。
それを見てコバルト殿下はふいと目を逸らした。
「僕は君の好みではないが…」
かっこよくて見惚れていたが、殿下は何を言っているのだろう?
少しだけ声が小さくなっている。
そのまま私の肩に頭を寄せた。
「…異国に筋肉をつけやすくする薬があるらしい。
絶対にマッチョになる。
君だけの僕になるから他の男は見ないで。」
筋肉の部分はよくわからないが嫉妬してくれているのが嬉しすぎてどうにかなりそうだった。
またも私は「かわいいかわいいかわいい」と心の中で叫んでいる。
「僕だけを見てて。」
肩からゆっくり離れた顔は真っ赤になって涙目である。
「ブル様、かわいい!」
そのまま抱きついたらブル様は床に倒れていった。
「かわいいかわいいかわいい!大好きです!」
ブル様は軽くぶつけた頭をさすりながら赤い顔でこちらを見ている。
「かわいい?」
「世界一かわいいです。」
ブル様はちょっとだけ困った顔をしたけどまんざらでもないという表情だった。
「結婚しましょう!」
「う、うん」
青い瞳がちょっと潤んでいる。
ブル様は泣き虫なのだ。
6歳のアリアは優しくてかっこいい王子様が好きだった。
でも私はブル様のかわいくてちょっとだけ情けないところも好きだった。
だから今の私はコバルト殿下の全てが好きなのだ。
本当に私は幸せいっぱいだったからこのあと怪しい薬で筋肉をつけようとする殿下を止める羽目になるとは思っていなかった。




