表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/19

蜜月 2

 本当に子どもに戻った気持ちで虫捕りをすることになった。

 それぞれ庭で虫を見つけることになったのだがあまりに多すぎてどの虫を捕まえようか迷った。


 キラッと光りを見つけそっと近づくと何と七色に輝く昆虫を見つけた。

 前世で見たコガネムシを3倍くらい大きくしたような虫だ。

 手に虫捕り網を持っていたがちょっとした出来心が芽生えた。


 「ブル様、あげます!」


 「え?」


 虫を観察していたのだろうしゃがみこんでいた殿下に七色コガネムシを突き出した。

 子どもの頃のように手掴みである。

 へへっと笑ったのだが殿下の顔色がみるみる悪くなる。


 「殿下…?」


 嫌だったのだろうかと不安になったら肩をガッと掴まれた。


 「アリア、絶対に手を離さないで!」


 「は、はい…」


 殿下は一目散に走り虫かごを持って風のように帰ってきた。


 「そっと、そーっと入れて。」


 私は手の中でおとなしいコガネムシをこれまた日本の頃より大きな虫かごに入れた。

 私が虫かごから手を抜いた瞬間、目にも留まらぬスピードで殿下は蓋を閉めた。


 「アリア、これ七色虫だよ」


 殿下は子どものように目を輝かせていた。


 「本当に見れると思わなかった!信じられない!」


 七色虫は由来が七色だからだろうなくらいしかわからなかったが心底嬉しそうな殿下を見て胸がときめいてしまった。

 こんなに幸せでいいのだろうか、と私は物語のヒロインのようにはしゃいでいた。


 だから勘違いしていたのだ。 

 私はしっかり殿下に「そのままのあなたが好き」だと伝えたつもりになっていた。

 いや伝えなくても伝わるでしょと今は言いたい。





******

 

 グレイ家で過ごす間こんなことでいいのだろうかと思うくらい子どものような時間を過ごしていた。

 すでに2週間はただアリアと一緒に遊んでいる。


 アリアが七色虫を見つけたことでアリアの虫運に感動していた。

 それから僕らは虫を探しに森の庭によく行くようになった。


 季節は秋だがこの森の木は緑のままだった。

 この青々とした時間が長いことがグレイ家の森の秘密ではないだろうか。

 研究のことを一瞬考えるが今はアリアといるのにそれは勿体無いと思った。


 「ブル様、見てください。白いカマキリです!」


 アリアがにっこり笑っている。

 僕はアリアが当たり前のように虫を触ることをこっそり喜んでいる。

 前世を思い出した時は一瞬ダメになりかけたそうだが、前世の頃の虫より大きくて動きがゆっくりなのでかわいいとアリアは言っていた。


 「ブル様、早く虫かごを!」


 アリアのかわいさに気を取られていたが、アリアが僕が持っている虫かごを指差している。

 慌てて虫かごを開けるとアリアが白いカマキリを入れた。


 「白くて綺麗ですね。」


 アリアは虫かごを持ち上げてカマキリを見つめていた。

 僕もカマキリを見るが異様に白くてキラキラしていた。


 見たこともない色だった。

 僕は唖然としたがアリアが珍しい虫ばかり見つけるのでいつものことだった。

 きっと彼女は虫に愛されているのだろう。


 「アリア、これはどこで…?」


 「あそこです。」


 アリアが指差す方向を見ると森と庭の境の柵が見えた。


 近づこうとしたら風が強く吹いた。


 「…白蛇様?」


 森の奥に白い蛇がいる。


 「…」


 遠くて表情まではわからないがなんとなく僕らにもう敵意がないことが分かった。


 「…」


 しばらく黙って白蛇を見つめていたがやがてゆっくりと森の奥へ消えた。


 「…もしかしてプレゼントでしょうか?」


 確かにこのカマキリは白蛇様の白い輝きによく似ていた。


 「アリア宛だね。」


 「いいえ。これは多分私たちへのプレゼントです。」


 なんだかアリアには確信があるようだった。

 何か感じるのだろうか。


 「…これ標本にするの怖いな…。」


 「スリザリン領の森に逃がしますか?」


 「…うん。そうだね。」


 少しもったいない気もしたがそうするのが良い気がした。

 虫かごをテラスに置くとアリアは僕の手を引いた。


 「殿下、踊りましょう。」


 「え?」


 「白蛇様には多分私たちが愛し合っていることがお礼になるはずです。

  私たちを結びつけてくださった気がするのです。」


 アリアがにっこり笑っている。

 汚れても良い服を着るよう言われているので地味な服を着ているが僕らはパーティのように手を取って踊り出した。

 あの日と違いもう僕らはお互いを支え合って踊ることができた。


 「アリア、足を踏んでいいよ。」


 ふざけて言うとアリアがちょっと笑った。


 「いじわる言うとまた水たまりに突き飛ばしますよ。」


 「あは」


 僕らはまた笑っていた。

 世界中の幸福がここにあるようだった。



 僕は世界で一番幸せだという気持ちになっていたがその夜アリアが


 「蛇の体って筋肉がむき出しですごいですよね。」


 と言ったことで筋肉のことを思い出した。

 やっぱりアリアは筋肉への愛情があるらしい。

 さらにグレイ領にいるのはマッチョの男ばかりだった。

 すっかり忘れていたがグレイ公爵の巨大な身体と自分の身体を比べてこれはまずいと思った。

 公爵に筋肉の秘密を聞いたが「筋肉は1日にしてならず」と言われた。

 筋トレメニューを教わるが毎日続ける自信がなく頭を抱えることになった。

 どこかに楽に筋肉をつけられる方法はないだろうか…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ