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観客席は四人

 アルマは、観客席にいた。

本来貴賓席……それも保持者として最上位の場所にいるべきなのに、普通の観客席で見ている。


 なぜか、と言えば、一番簡単に言えば、貴賓席の他の奴らがうるさいからであり、さらに言えば、観客席ならば、移動することもできる故に、いろんな角度で試合を見ることができるのだ。


 そんな程度の理由で彼が貴賓席に行くことはない。


「ムー……」

「なんです、あれ……」

「…………知らん」


 目の前では、二人の悪魔と一人のようわからん人っぽい何かが今の試合について語り合っている。

魔術国家なのだし、これくらいの人物がいてもまあなんとも思わないアルマ。


 それよりも、あのクラインという少女が気になる。

負けた理由がわからない。


 カレンという少女も十分凄かった。が、目を見張るほどのこともなかったし、比較して、なぜ勝てたのかが全くわからない。

クラインは、圧倒的魔術出力と細かな術式調整、奥の手の温存、色々していた。


 しかし、負けている。

なぜ……。


 前の三人の話を聞いていれば、さらに理解に苦しむ。

魔術も魔法も触れて一日程度の少女がなぜここまで強くなれる……。


 ましてや、なぜ闇に葬られた魔法の一つたる『滅術』を扱えるのかがわからない。

自らの姉が使っていた魔法なのだ。間違えるわけがない。


 あの魔法剣には、微細ながらも滅術が宿っていた。つまり、もしもの話とは言え、あれが100%滅属性を纏った魔法剣であれば、そこら辺の魔術も、同じ構成の魔法剣であろうと簡単に破壊できてしまうわけだ。


 姉の力は本物だ。神代に生きていれば、もっと化け物に進化していただろう。

自分も神代で生きていけるほどには強いと自負しているが、所詮、『星墜』の三席をになっているだけの末席。


『星墜』の中では一番弱いだろう。

確かに限定されているような戦い方であればそこそこ強いかもしれない。が、それだけ。


『神代に待ったなし』なんて言葉があるくらいだ。

要するに、『神代の頃は待ったなんてない』ということだ。そのまんまである。


 不思議だ。

クライン。その名前は知っている。


 歴史上、最も魔法剣について優れた家系たるフェンネルト。その中でも神童とまで呼ばれていた少女だ。

が、燃費が悪すぎる故に、最強かと聞かれればうーん、となる少女だった。


 最後の最後で見せたが、結局魔力残量一万以上でも一分ともたずに欠乏症を発症してしまった。

アルマでも流石にフェンネルトの魔法剣は扱えない。


 フェンネルトの魔法剣は、固有スキルと同じくらい……いや、それ以上に扱いの難しく、レアなものだ。

クラインはスキルで、魔法剣の形態変化スキルを持っているから、より燃費が悪く、レアで、瞬間火力が高いと言える。


 魔法盾で、土魔術を混ぜ、固定することで、弾かれにくくすることができるし、裏で術式を見せないように魔法を用意することもできる。

魔法弓など、魔術と魔法の天敵と言ってもいい。


 魔法と弓では、魔法の方が射程が短い。なぜかと言えば、周りの魔力に摩擦され、威力が減衰するからだ。


 対して、弓は、魔法で生み出した矢で射るとは言え、射程は一メートル以上も長い。

摩擦をより受けにくいから、というのもある。代わりに風に吹かれやすく、当てること自体も難しくなっているのだが。


 魔法剣のさらに剣形態となれば、小さい盾のある片手剣、手数の多い双剣、一撃がおもい大剣などになる。

逆に魔法剣に魔法をさらに重ねれば、威力は単純に二倍、さらに有効射程を限界値は変わらないとは言え、いじることで、有効射程によるダメージ補正を増やすことができる。


 負ける理由がほとんどない。

瞬間火力で言えば、アルマよりも高く、火力だけならあるまを圧倒的に凌駕するティオよりも高いと言えよう。


 決勝に来るのはこの子だろう、と。

他の三人も、信じて疑わなかった。


 しかし、結果は惨敗。

一矢報いる、というほどのこともできず、魔力欠乏症、という強い者たちの間であれば普通ありえない状況にまで陥った。


 魔法剣自体も、燃費はすこぶる悪い。

アルマだって三十分以上はもたない。


「………おい、『魔霊人』、立ってないで座ったらどうだ……」


 一瞬、誰のことか、わからなかった。

いきなりすぎて、息も詰まりかけた。


 『魔霊人』。

『星墜』としての、名前。


「ん? おぉ、アンジェラスのとこの魔女ではないか」


 大体、前の二人の悪魔がなんなのか察した。


魔神王。魔界にいる七十二人のうちの一人とそれ以外の六人の個性的な悪魔たちで構成される、七大罪の悪魔。

そして、稀に生まれる強力な悪魔、そして魔族。


 彼らを総じて、魔界大戦火と呼ぶ。


 アンジェラス、という名自体も久々に聞いた。

アルマ=アンジェラス。彼の名前だ。今ではアンジェラス、という家名も忘れかけるほどに、懐かしいものだった。


 アルマは、アンジェラスという家名に対して、いい思い出がほとんどない。

本来、魔女の家系というのは、女性しか生まれないようなものなのだ。なんの原理かは知らないが、少なくとも、アルマを除き、魔女の中に男は誰一人として存在しない。


 この理由はかなり明白で、女性と男性では、女性の方がINTが高くなる傾向にあるためだ。

対して、男性はSTRやVITが高くなる傾向にある。


 つまり、魔女の家系で生まれることは歓迎されない。故に魔女には女性が多い。

まあ原理の方は誰も解明しようとしなかったからか、いまだに不明のままだ。例え、魔女の始祖であろうと。魔女となった家系には、決して男性は生まれなかった。


 アルマが生まれるまで。

その日に、魔女の間で激震が走った。


 忌み子、魔女の滅び。様々な理由で。

しかし、それ以上に問題になったのは、アルマが魔術に、元素に、精霊に、悪魔に、生物に愛されていたことだ。


 魔女にとって、アルマは歓迎できなかった。

しかし、歓迎したものたちがいた。


 それが悪魔。

彼らはまだ赤子であったアルマを奪い取ると、すぐさま去っていった。誰一人殺すことなく。


 彼が、怠惰だったおかげだろう。

きっと、憤怒であれば、戦争が、嫉妬であれば滅びが、様々なものが訪れる可能性がある中、怠堕という、何もない、が訪れたのは幸運だっただろう。


 アルマは、悪魔たちの元、ここまで成長したというわけだ。

故に、前の悪魔とも面識がある。


 まぁ、まさかこんなところにいるとは思えないが………。


「……久しぶりですね」

「………あ、うん」


 ベルゼちょっぴり不思議な反応を示す。

これで魔界屈指の子供好きなのだからタチが悪い。暴食のくせに。


「初めまして。名無し、と言います」

「……アルマだ」


 尊大なのかなんなのかよくわからない態度はそのままであった。



「この試合、どう見ました?」

「……フェンネルトの圧勝だ」

「同じです」

「むぅう、アンジェラスの魔女でさえも、か。なんなのだ、あの女」

「………あれは類稀なる者ですね」


 ベルゼの発言に、三人一様にはてなが浮かぶ。


「……要するに、稀有、と言いましたか、彼です」


 あぁ、と納得……


「「できるかっ!」」


 アルマはよくわからないが、どこかで聞いた名前だなぁ、と思い出そうとしている。


 誰も、カレンを知らなかったらしい。


床に落ちた酢飯食ったら腹壊しました。なんで?

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