三人の休日……?
今回はサタン、|ベルゼブブ(ほぼ初登場)、|名無し(外套少女)の話です。
「む、おい! 見るがいい!」
「「………?」」
サタン、名無し、ベルゼブブたち三人は、翌日、稀有が「申込ぃぃ」と飛び出して以来、することもないので、国内ひいては街中を散策することで満場一致した。
サタンもベルゼブブも、二人ともまずはこちらの世界の文化にでも慣れてしまおう、と言う感じもあったわけで……。
「なぜ屋内ではなく外で飯を売っているのだ?!」
「…………おい……」
「……………」
サタンは、飲食店らしき店の前で串焼きを売っている店員の方を指差し、無邪気(………おっさんだが)な声でそういった。
それに対して、ベルゼブブのおい、とは、考えもしないで「質問する」と言う選択肢を選んだサタンの頭に対してなのだが、サタニスくんはそんなのお構いなしで、名無しに質問をしている。
ちなみに名無しとは外套少女のことである。名前もないし、じゃあそのまま『名無し』って名前でいいじゃん、と言う結論に至った。
「はぁ。あれは外で料理する事で客足を引く、と言う狙いですよ」
少し考えれば………、とジト目で、しかもため息セットで名無しはそう答えた。ベルゼブブは自身の考えがあってたのか、うんうん肯いている。ただし、本当にわずかな動きなので、大して動いていないようにも見えるのだが……。
「ふむ、一つ欲しい。買ってくるのだ」
待ってろ、といい、店員の方へとふら〜、と歩いて行くアルティメットバカ。店員と少し会話して、結局そのまま戻ってきた。
「「…………」」
もう二人とも黙るしかなかった。
サタンは、ちょっと考えれば済むことを考えない、要するに、脳筋の中の脳筋だったのだ。
そう、魔界で使われていた金貨が、人間の世界で使えるわけないのだ。
「………まったく」
ベルゼブブは、顔に手を当て、やれやれと首を振る。
(……戦闘となれば、最も相手にしたくないほどの頭脳を持つと言うのに………)
どうやらサタンは、頭の有効活用ができないらしい。
「はぁ。ちょっと待っててください。買ってきますから……」
「おぉ、ありがた………って、おい、ため息やめい!」
ベルゼブブは一人、お似合いだなぁ、などと思いながらその光景を見送っていた。混ざる気も、混ざらない気もない。中間を生きる。
ただし……。
「…………おい」
「わかってますよ。幾つですか?」
「…………小腹程度だ。十二本」
ベルゼブブは、『暴食』である。
それをわかってかわからずか、名無しは微笑みながら数を聞き、否応、文句ひとつ言わず、買いに行った。
「………我にだけ……厳しくないか、あれ……」
「………日頃の行いだ」
ムー……ウー……と不平を鳴らすサタンを放り、ベルゼブブは食事をするのに適した場所……ベンチや机と椅子のある場所を探す。
「はい。サタンは三つね」
「………おい、少し多くないか……これ……。ある意味嫌がらせだぞ、お主……」
三つ、と言っても、結構な量である。まず、串焼き自体が一般層と冒険者や傭兵といった、がっつり食べる系の層で区切られて売っており、かつ元々のボリュームが相当なため、三つでも量があるのだ。
十二本て、とサタンはベルゼブブの方を見るが、彼にとっては、小腹が空いたから食べる程度のものであり、腹を満たすために食べるような量ではないのだ。
「むぐむぐ、名無し、主は食わんのか……」
「自分が食えないからって人に食わせない」
「ち、違うぞ……! 我は断じてこの程度の量が食えぬわけでは……っ!」
「…………自らの胃の容量を把握するんだな」
食えない、と判断しようとしている名無しに対して、サタンが必死に弁明をしようとするも、横では本物の大食い野郎ことベルゼブブが七本目を食い終わったところであり、かつ横槍まで入れられた。
ぐぬぬ、とうなりながらも、やけくそなのか、サタンは我慢して食べ始めた。
サタンがゆっくりと、確実に食べ終えようと努力する横で、名無しとベルゼブブはある音を聞いた。いや、声というべきか。
「空耳ではないようですね」
「………なるほど。強者のお出ましか」
「いや、バレてはいないはずですけど……」
二人が聞いたのは、いや、聞くと言うか異常すぎる聴力が拾ったのは、黄色い悲鳴である。正直鬱陶しいほどの……。
「人気のある冒険者でも帰ってきたんじゃないですか? イケメンで、人気のある強い冒険者は一般人からも好かれるそうですし……」
「……………私は一度も好意を寄せられたことはない」
「それは……まあ……格が違いますし……」
魔界で彼に告白しようなど、分を弁えぬものか、アスモデウスのような変態極まれりなアホくらいである。
「まあとにかく! そう言うものなんです!」
少し声を強めに、名無しがそう言った。陰キャかっ! ってほどに静かすぎる三人の集まりで、今日一番の大声だったかもしれないほど、と言っても、伝わらないだろうが……。
「………おい、こっちに来ないか、これ……」
「えぇ。だんだん足音がうるさく……」
そんな二人の後ろから、声がかかる。いや、正確には三人だが、一人は……「うっ」だったり、「くっ……鳥に対してここまで嫌悪を抱く日が来るとは……」などなど、周りの目すら気にせず、鶏肉と格闘している真っ最中で、周りに目どころか意識すら向かっていない。きっと今の彼には、鶏肉しか見えていないだろう。
「ヤァ、すまないけど、そこ、どイテもらえるかナ」
少し鈍っていると言うか、発音にどことなくおかしなところがある。違和感、と言った方が正しいか。
まあ魔界からやってきた鶏肉格闘男子・サタンと状況説明求ムマン・ベルゼブブからすれば、自分らと発音は五十歩百歩なので、口出しするほどではないのだが。
「…………誰だ」
「えぇ。いきなりきて、どいてもらえるかと言われましても……」
二人が当然、抗議すると、取り巻きABCがピーピーと騒ぎ立てる。
「ちょっと! あんたたち! レセディ様が退けって言ったらどきなさいよっ!」
(レセディ? 知らない名前ですね)
(………同じく。聞いたこともないな。魔界で知られる人間など、二十といない)
「そこ! こそこそ喋らないっ!」
(…………学校の先生か? こいつは)
(にしては品性のかけらもございませんね)
「レセディ様の方を向きなさい!!」
(レセディって。ちょっと言いづらいし、かっこいい名前ではないですよね)
(………ん? 言われてみれば確かにそうだな。どこかレディに通ずる気がする)
(ダメですよ、声に出しちゃ!)
尽く無視され、さらにはこそこそと話されたせいか、ABC三人衆は、顔を真っ赤にしてプリプリ怒っている。
「なァ、君たち、そこは僕が普段から使ってる席なんだ。どいてくれないかい?」
どこか鬼灯に似た口調に、一瞬だが鶏肉格闘男子・サタニスくんが顔を上げかけ……鳥肉を撃破した。所有時間は五分ほどである。たった一塊に、五分……。
「うむ。食べ終わった……ぞ……?? なんだ、このマヌケそうな生物は……?」
開口一番、レセディに反応し、そして瞬間的に罵倒してしまうサタニス。やはりバカはバカだ。単細胞にして脳筋。細胞すらも筋肉なのでは?
「「「レセディ様をバカにするなぁぁああああっ!!!!」」」
騒がしくし、襲いかかる取り巻きABC。ぶっちゃけると、三人ともどもABCの動きは目で余裕で追えるし、襲われる前に席から立ち上がり、何処かへ走り去ることもできる。
だがしかし、彼らにそんなことをする必要はない。
『果てなき飢餓』
自身のVIT75%以下の攻撃全てを吸収する、結界。バリア。
『収まらぬ憤り』
自身のレベル十万以下の者の攻撃を無効化する、王の盾。
『触れられぬ自然』
物理攻撃を一切無効化する。
彼らに、生半可な攻撃は、通用しない。
むしろ、ダメージを負ったのは三人の方だった。
「づっ!!!?」
「いっっ!!!!???」
「がっ!?!!?」
弾き返され、さらには体力を五割近くも持っていかれたことに、彼女たちは驚愕する。
そして、その一連の流れを見ていたレセディは、揉め事は起こさんとばかりに、こう言った。
「仕方がない、こちらも引き下がろう。だから、そちらも引き下がってはどうだろうか」
そんな提案を受け、サタンは正直どうでもよく、ベルゼブブは興味がなく、名無しはここには用はないとばかりに立ち上がり、歩き出した。
そして、三人一様にこう思う。
(((無能)))
魔神、とでも呼ばれ、ベルゼブブに至っては魔界の王。彼らに喧嘩を売り、ただで済むわけがない。
盛者必衰。諸行無常。身の程を弁えぬものは、はかなくも散って行く。
とくに、約束を守らないくずは。
後ろから、小規模だが、威力の高い爆発が起こり、悲鳴が聞こえる。
三人にとって、その悲鳴は、とても心地の良いものだった。
「散策、確かにいいものですね」
「………あぁ。そうだな」
「我は遊びたいがな!」
彼らは、鬼灯が思っている以上に、問題児である。
評価ありがとうございます。




