ドラゴン退治2
前半ちょっぴりグダリました。
痛い。
久しぶりに痛みを感じた。
足が竦む。恐怖を感じているんだろうか、ボクは……。
それとも、なんだ。
力がなければ、所詮この程度。
ボクは別に、特別な人間じゃない。もちろん、元より選ばれし人なんてそんなにいない。生まれた時から運命が決まっていたわけがない。
ボクは、途中で努力を放棄した人間だから。
確か、中学二年くらいの時に、逃げた。
ボクは鬼灯の前、塚原、という姓だった。母が結婚した家、塚原成哉。ただ、ボクが生まれて二年ほど、何があったのかは知らんが、母が妹二人を連れて、離婚。ボクは成哉……父のもとで育てられることになった。
なんだかんだで武道や勉学をたくさんさせられた。
ただ、中学二年の時、二年になった時、妹が、同じ中学にやってきた。
不思議なことじゃない。母はもともと住んでいた家を売っぱらったわけじゃないから、妹二人とそこに住んでいた。家も遠くないし、学区も同じだ。
小学校は違ったとはいえ、中学が同じになる可能性は全然ある。
妹は、ボクを知らなかった。母、美弥が教えなかったからだろう。塚原稀有とか言われても、ん? と小首を傾げるだけだった。
けれど、ボクは違った。
でも、気にはならなかった。そんな話題、あってもなくても変わらないからだ。
父はどうせ話を聞いても、それがどうしたって反応しかしないし、使用人たちに話しても、理解できるとは思えなかった。
学校では、そのせいもあってか、友達が大して出来なかった。
遊びに行くのも、きてもらうのも無し。まずゲームも漫画も、ラノベ とかも読んだことがなかった。
読むとしたら、ロウソクの化学とか、そっち方面だった。
妹二人を見て、きっと憧れていた。
アリスはクリスにぶん回されながらも、人の輪の中で、笑っていた。
もし、自分が女性だったら。きっとあんな感じになれたのかもしれない……。
そんな思いもあってかなくてか……。気付けば家出していた。
その後何があったかも知らず、気付けば使用人に捕まっていた。
使用人と言っても、同年代。最上聖奈って名前だったっけか……。
顔やスタイルは良い方なのに、ドがつくほどの陰キャ、コミュ障だった。
その反面、運動神経抜群、頭脳明晰など、もはやボクの後を継いでくれってほどの子だった。
いわゆる、持っている子だ。
もし、彼女と入れ替われるなんて展開があれば、それはそれでよかっただろう。
結局、そんなこともなく。
最上はボクの家出に加担したと言い出した。自分が、家出をして、美弥のところに行けば……そんな話をしたと。
成哉は、それを信じなかった。一番意外だった。
その後、ボクにこの家は向いていないと理解してかしないでか、美弥の元にいかせてくれた。
多分、ボクがはめられたんだと思う。家出を、させられたんだと思う。
まあ、なんだかんだで、掌の上で転がされる人生だった。
美弥の、母のもとに行ってからは、妹の仲がちと悪いのに驚かされたり、だんだん、楽しさを覚えた。
聖奈が時折訪ねてきて、調子はどうだと聞いてきたが、その度に変わらないと、素っ気なく追い返していた。それでも聖奈は嬉しそうだったから、いつの間にか、それが普通になっていた。
でも、成哉とはまだ話せていなかった。
普段から近寄りがたいオーラをすっ飛ばしてきていたけれど、もしかすると意外と明るい人だったのかもしれない。
さて、記憶の思い起こしはこの程度にしよう。
走馬灯なんて見たくもないもん見たんなら、一度全部忘れて暴れてみよう。
『エラースキルを、複合スキルに一時変化させます』
なんかよく使ったことなかったけど。エラースキルは他のスキルに成り代わってくれる、時があるスキルだった。
確率ではなく、意志の強さに応じる、珍しいスキルだ。
『複合スキルを作成します。「魔導書 滅びの章」から抜擢。カイネル=フレイド=メイザースより、特殊状態異常「覚醒睡眠」。「変転」を複合化。複合スキル「睡りの滅術師」を作成完了』
『「睡りの滅術師」を発動。「変転」の効果により、肉体を再構成。同一魂魄体「塚原ゆかり」に倣い、肉体を構成。完了。魂を分割し、二重人格を作成……完了。「睡りの滅術師」、「鬼灯稀有」のスキルを連携……完了。』
ところでこの間放置されていたドラゴンはというと、大口を開け、ブレスを溜めていた。
今のこのドラゴンのステータスであれば、山一つ、国一つ消し去るのではないだろうか、誰でもそう思うほどの威力が込められていた。
それが、放たれた。球形ではなく、円柱状にドラゴンブレスが放たれ、彼を飲み込む。
彼は彼でまるで放心状態かのように目から意思か何かが抜け落ちていた。それでも立っているのは、なんの力か……。
ブレスは一体何度の熱を誇るのか。異世界の人間とて、いくらステータスをあげようと、熱に対する耐性はまた別になる。
魔物は種族的に耐性を獲得することが多いが、人間という種族は耐性を獲得する種族ではない。着飾ることで補う種族だ。
そうして、得た耐性ですら、本場のものには劣ってしまう。
だからこそ、模倣や利用ではなく、自分自身が本物になればいい。
変転し、『睡りの滅術師』となった鬼灯に、生半可な攻撃は、通用しない。
『「エラースキル」を「睡りの滅術師」へと変化させます』
『「睡りの滅術師」が「睡りの滅魔女」へと変質しました。』
『「鬼灯稀有」を素体に、「睡りの滅魔女」を合成する事で、「神化」することが可能になりました』
頭に流れ込んでくる情報……ゲームシステムに似てるからシステム、アナウンス、どっちかでよんでおこう……を無視して、ドラゴン……面倒だから龍にしよう……のブレスを喰らい続ける。
正確には、喰らっている。ボクは食らってない、って言った方が伝わりやすい……はず。
『魂の分割』って事だし、大方二重人格に近くなったんだろう。
ところでこれって作業できるのだろうか。
さっき『神化』がどーのこーのと聞こえたし、どうせならそっちの作業をしていたい。
あとはスキルの整理と……。
奪命剣で集めた魂には、まれ……大体25%程度の確率でスキルが残留していることがある。要するにそれを取り込めるのだけれど……。
如何せん容量が大変な事になってて、今更整理してる暇がほとんどなく、ずっとほったらかしだったのだ。
スキルの獲得にも容量が決められており、うまくやりくりしないとパンクする。
普通の人間として生活していても、容量オーバーになることは滅多にない。
なんで知ってるかって? この前一気に全部取り込んじゃえ! ってやったらパンク注意報が出たからですねはい。
外の光景はといえば、赤黒いオーラを手に纏わせてブレスごと消し去る化け物さんが暴れまわっていますわ〜……。わー、今日の天気は悪いみたいだしヒッキーしとこうか〜。
えっと……共和国の騎士団やら魔術師団から大量にゴミが届いております、と……。
あー、剣術は欲しい。魔導ないかな〜……。あー、王城とかの守りに持ってかれちゃってるからないか〜……。流石に魔術師団長は殺してなかったか〜……。剣聖とかないかな。
剣聖術ってのがあるらしいから欲しいっすね。
チラッと外を見れば当たり前のように魔術を使ってる自分|(?)がいる。
チッ、羨ましいなぁ本当に……っ!
一応スキルで魔術補正タイプのが大量に入ったのだけれど……。
あ、はい。向こうも共有されてるからオリチャーには意味ないね。
剣術が大量に入ってきたおかげで、物量でカンスト。
入ってくる時、スキルレベルは1に戻る。ただし、同じスキルをいくつも獲得していくと、レベルが上がる。要するに、剣術lv1に同じく剣術lv1を大体4つぶつければ剣術lv2になるとかいうシステムだ。
一番気になるのは、深淵種の取り込みと神子の取り込みなんだけれどね。
残念ながらどっちもまだ確保できていない。もしくは、一部しかない。
『深淵歩兵』くんが深淵種だったのはマジらしい。確か空中歩行かなんかのスキルがもらえたようなもらえなかったような……。
ただ、歩兵ってそんな大きく取り出せないらしい、魂を。それにかろうじて魂の知覚できるノルンが持ってきたとはいえ、品質も悪いし、欠片と大差なかった。
本物はどれだけすごいんだろうか。自在歩行的なのが手に入ってしまうんだろうか! だろうか!!
神子は能力通りにもらえない気がする。別のスキルに変換されるんだと思う。
確か『淑女』の魂片は『性転換』……TS能力だった。おかげで今は『睡りの滅魔女』なんてふざけた便利道具が出来上がってしまったんだけれども。
しっぽ切ってよ! 役目でしょ!
尻尾を切らないとは、素材解体の風上にも置けぬにゃあ。
解体スキルが手に入った。龍は尻尾か頭部を最初に解体するっぽい。
そういやしっぽって即興の鞭になるんじゃね? ほら、先っぽもてば……。
いや、やめておこう。なんていうか、ドラゴンて蜥蜴でしょ? グルグル回したら尻尾切りが……。
お、おうふ、トラウマが……。
ま、待て! 切るんじゃない!
ボクの静止を振り切り、切り飛ばされた竜の尻尾は、地面に落ち、そのままビッタンビッタンと跳ね回りやがった。
う、うぐ……。
説明しよう!
ボクは子供の頃、蜥蜴の尻尾を切ってしまった時、手に持っていたソレがあまりにもウネウネ動くもんで、発狂して気絶したとかいう壮絶|(?)な過去があるのであった。
そんなこんなもあり、クソほど高い耐久と防御力の竜を削り続ける『滅魔女』さんとスキル整理を続けるボク。
生理的に無理大男からは『怪力』が手に入った。Lv1だけど。
STRが1.1倍されるっぽい。一レベル上がるごとに0.025倍上がるっぽい。
えっと、だからカンスト20で……1.6倍か……。うーん、カンスト……しかもレベル割高で1.6か〜……。まあいいや。
……………………………………。
ハァ〜。やっと終わった。なんだろう、眠いな。おやすみ((スピ〜
久しぶりの痛みなど忘れ、ボクは全てを忘れ、至福の睡眠を久々に味わうことができた。
後半ちょっぴり疲れました((スピ〜




