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勇者の処遇

四人の魔術師の続きってことで。



「勇者? 何ぞそれは」


 言葉の意味を考えてか、その意味を考えてか、発言者たるティオを除き、メイドまでもが黙っていた。

そんなある意味重苦しい空気を蹴破ったのは、やはりというべきか、骸骨男・クロムであった。


 クロムはそれはもうド直球に質問した。遠慮も、自分の意見も、全てを差し置いて、まずは状況を知ろうと、理解しようという方向にシフトしたのだ。


「まあ世界を救う勇気あるもの? 選ばれる形式の英雄! みたいな?」


 発言の当事者であるティオも、完璧に理解しているわけではなかった。

いや、理解していないからこそ、『不確定』に終止符を打つべく、魔術という神秘、その結晶である、自らを除いた三人に聞いたのだろう。


「聞いたことはあるわ。中央での逸話にもよく出てくるわ」

「そっか。フレイさんは中央の生まれだもんね」

「厳密には、母が中央出身なのだけれど……まあ似たようなものね」


 剣の東、魔術の西、魔剣の中央、『魔』の北、『塔』の南。

この世界の大陸は、厳密に分けるならばそうなる。魔剣と言っても魔術と剣技の複合、みたいな扱いである。


「ほう、白よ。その逸話、教えてはくれぬか?」

「あら? そんなものに興味があるなら自分で行ってきたらどうかしら?」

「面白いことを言うではないか!」


 ゴブリンのような低い声で、愉快そうにはっはっはと笑うクロム。

ティオの顔が引きつるのは毎度のことであった。引きつると言うよりは軽蔑なのだが……。


「だがまあ、所詮我が行ったところで、結果はさして芳しくはならんだろう」


 クロム。

彼は中央大陸でいうところの、魔王である。


 種族はまんま魔族。ロイディル魔族と呼ばれる、弱小族の生まれではあったが、彼は子供の頃から惜しまぬ努力をし、八歳の時に、師に連れられ、西大陸にやってきた。


 そして、魔術を極め、怪物となった。

しかし、問題があった。ロイディル魔族は、スケルトンの一族だったのだ。


 そればかりはどうにもならない、と。そうクロムは思っていた。

が、彼の師は、ここでなら問題はない、と、そう言い放ち、クロムを変装すらさせず、ただ普通の魔術師らしい服装をして街へ向かわせた。


 無論、魔術の真髄に一切携わっていないような、外の大陸人からは奇異の目で見られ、驚かれ、殺されそうにまでなったが、西大陸の住民は、普通だろう、と。

何がおかしいのだ? と。


 彼は、スケルトンのくせに、その日、初めて泣いた。

感激した。感動した。


 師に感謝をし、人を愛するようになった。

無論スケルトンなのは変わらなかったが……。今では存在進化を幾度か繰り返し、人の肉体を手に入れたが、昔は骨であった。


 それがなぜ、魔王に発展するのか。

それは、彼が黒の魔術師と呼ばれるようになってからであった。


 彼が魔族だというのは西大陸では広く知られ、黒の魔術師となったことは、さらに広く知られた。

結果、彼は魔王なのでは? と謳う輩が、他の大陸に現れた、ということである。


 これだけならば彼は人間だろう、と顔を見せれば済んだのだが、如何せんスケルトンの頃から噂になっただけはあり、元がスケルトンだと割れてしまっていた。


 そんなこんながあり、一部地域ではいまだに勘違いされている。

本当は子供の面倒見がいい優しい……いや、優しすぎる不器用な男なのだが……。


「まあ、そうね」


 それを察してか、フレイはそういうと、自身の聞いた逸話やら物語をいくつかうろ覚えながら唱えた。


 勇者が他の世界から呼び出され、仲間を失い、自身も傷つき、それでもなお、誰かのためにと。安全なところでぬくぬくしている者のためにと、足掻き、仲間を全て失い、魔王を打ち倒した物語。


 はたまた勇者が神々により与えられた力で、誰一人傷つかないよう、全ての事件を被害を出さずに片付ける逸話。


挙げればきりがないのか、いくつかと言ったくせに、フレイはたった二つでこんなものよ、と終わらせた。

だがまあ、これくらいで十分であったのもまた事実。


「なるほど。要するに怪物だな。敵に回せばただじゃ済まなそうであるな」

「まあ、そうなるかしら?」


 少年と猫、そしてメイドは一向に口を開かない。


 ティオも二人の議論? とまではいかないが、会話に押し流されている面がある。


「つまり、そんなものが今この大陸にいる、と。そういうことでいいのね? ティオ」

「うんっ!」


 元気よく返事をするティオ。


 そして、また沈黙が訪れる。

皆、その怪物をどうするか、迷っているのだ。


 勇者が逸話通りならば、物語通りならば……。


 敵に回せば勇者自身の持ちうる全てを犠牲にしてでも潰しにかかってくる可能性がある。

地位も見栄も名声も……全てを差し置いて、平和を求めるとなれば……。


 そして、メイドが口を開いた……。


「それって……暴走したアルマ様ではないですか……?」


 出過ぎた真似をしました、と一言付け足してから、メイドは一歩後ろに下がる。

が、その一言はアルマ……青の魔術師を除いた全員に効果的面であった。


「なるほど、それはやばいな。放っておいていいものではない」

「……暴走した、アルマですか……? 想像できませんが……私からは大陸滅亡の危機、とだけ……」

「うわ〜……」


 全員ドン引きしながら納得していた。


「お前ら、人をバケモンみたいに扱うな……これでも制御には自信がある」

「ま、まあそうだな」


 青の魔術師……アルマが文句を言う。

そして、同時に皆思う。


〝青〟が暴走することなど、ありえない、と。


 アルマの制御とは、魔力だけではなく、自我、精神、肉体、その他諸々全てを合わせて、制御、なのだ。


 アルマとは、そう言うものなのだ。

人智の及ばぬ、神の領域に足を突っ込み、神になることを拒んだ、愚かなる人間。


 『人間』のアルマ、と言う二つ名で知られ、同時に青の魔術師とも呼ばれてきた。


 何度目かの沈黙。

何をいえばいいかを考える。頭の回転は速い方ではあるが、やはり人並みと比べて多少早い程度。そんな化け物みたいに早く回ることはない。


 アルマは例外だろうが、自主的に話すことの少ない彼が意見を言うことは少ないだろう。陰キャだ陰キャ。


「うーん……どうせならパーッと国ごと消しちゃおうよ!」


 と言うのはある意味脳筋、ある意味、幼い狂気であるティオであった。

ティオは広範囲超高威力の魔術を好む。まあ纏めるなれば威力の高い魔術やら魔法やらをブッパしたい変人だ。


「ティオ、そんなことをしたら、本当の意味で勇者が動くかもしれないわよ? あなたの腕を疑うわけではないけれど、もしも勇者があなたの攻撃でも死ななければ……」


 ティオの魔法やら魔術の腕は、威力だけならば四人の中で最強だ。あるまさえも差し置いて……。威力だけならば、だが……。


 総合力でも序列二位。一位がアルマ、三位がクロム、四位がフレイだ。ティオには変動が少ないが、クロムとフレイは毎月毎月ジンクスかのように変動がある。


 そんなティオですら殺せなければ、アルマが全力を出す他なくなる。


「わかりました。皆様の意見がないのであれば、こうしましょう。私は件の国の女王に伝手があります。貸し、と言った方が正しいでしょうか。それを利用し、タイトル戦ひいては青の大会への強制参加を頼んできます」


 青の大会。

もしも勇者が中途半端ならば、アルマが出るまでもない。


 が、もし勇者が強ければ、アルマが出なければならない。

しかし、それも大会の中で、だ。


 アルマは人と戦うことでわかり合うこともあれば、理解することができる。

『人間』と呼ばれるだけはあるのだ。


 そして、もし勇者がそこで人外になったとして、アルマならば、いや、むしろアルマだけが、それを元通りにする力を持っている。


「では、私は件の国へ……」


 そういい、メイドは部屋を後にした。


 それに続き、フレイとクロムが立ち上がり、ティオを誘って部屋を後にし、アルマはネコと一匹と一人、取り残された。

猫を連れてきた分を入れれば、実質一人とも言える。


 アルマは、外の光景を見て、軽く舌打ちし、ため息を吐いた。

そして、少しして、部屋から出て行った。


今週はこれでお休みになる可能性がある……あと一回は投稿すると思う……。


本当だよ?

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