四人の魔術師
今回は青、赤、黒、白の四人の魔術師たちのお話です。
黒く、白く、青く、そして最後に赤く光る球体がテーブルの中央におかれ、机の上のミラーボールのように辺りを照らす。それはミラーボールのように明るくなく、暗くもない。辺りを照らすものではなく、ただ象徴として置かれているのか……。
ミラーボールのように、光を放つだけで、あたりがその色に染まることはない。
それに、この場所は光が少ないとはいえ、このミラーボールもどきに頼らなければならないほどに暗くはない。
全体的にスカイツリーの展望台を小さくし、来客ようにでも仕立てたかのような風貌であった。
そんな部屋には、黒い色のローブを纏い、骸骨の仮面をつけた、悪趣味そうな男が机の一角に座っていた。椅子ではなく、机に、だ。
男の近くには、一人のメイドがいた。彼女は特に何をするでもなく、彼がすることなすことを見守っていた。
彼がそうして、生と死に溢れる外の光景を眺めている時、入り口がどことも知れぬこの部屋の、その入り口が開いた。
入ってきたのは、黒髪黒目で、青と黒を基調とした貴族のような服を着る少年と、その少年の足元を、踏まれたり蹴られたりしない距離を保ちながら歩く灰色の猫であった。
彼と一匹が入ってくるのをみかねた骸骨男は、片手をあげ、
「久しぶりだな、友よ」
と、どこか楽しげに、かたや面倒臭そうにそう言った。
それに対して、友、と呼ばれた少年は、対して表情も変えず、席に座ってから、久しぶりですね、と無愛想に返した。
それから、骸骨男が近くに立っていたメイドに、片手で合図のようなことをすると、メイドは少年に紅茶を淹れた。
少年は何をいうこともなく、その紅茶を少し口に含み、足元の猫を机の上に抱き上げた。
静かな部屋に、ウナーォ、という猫の構って欲しげな声が響いた。
そして、少年が猫を絶え間なく、腕が疲れることすら気にせず撫で始めると、また静かになった。
骸骨男は、話すことがないのか、それともまだ誰かを待っているのか、外の光景を見て、ため息をつきながら座っている。やはり、机の上であった。
それから程なくして、ドアがまた開いた。
しまっている時はドアなのかどうなのかさえわからないが、開く時はきっちりとわかる。
入ってきたのは、紫の髪をサイドポニーテールにした少女だった。その背丈は少年よりも低く、みた感じでは14歳くらいに見えるかもしれない。
「あれ? おっかしいなー。いつもなら二人とも一番最後にくるくせに。なんで今日に限って最初に来てるの?」
子供の無邪気さを彷彿とさせる声で椅子に向かいながらそう答える、紫紺の髪をした少女。
それに対して、骸骨男と少年は何を答えるでもなく、各々が先ほどまでしていたことを繰り返す。
残念ながら少年の猫は少女の方に向かい、撫でてーと腹を見せ、ころん、コロンと転がっているが……。
少女は猫を見て、そちらに意識が移ったのか、二人が返事をしないことを、さして言及することはなかった。
むしろ、邪魔するな、とでもいいそうだ。
そんな中、白髪に毛先だけが赤いメイドが紅茶をいれる音が室内に響く。
少年はやることがないからか、腰に下がっている剣の柄のようなものやポーチなどから一冊の本を取り出し、膝に本を持っている手を置き、目を閉じた。
骸骨男は何も変わらず、少女は無邪気に猫を触る。
そして、またドアが開く。
入ってきたのは、白髪のメイドであった。お盆を持ち、お盆の上には茶菓子が載っていた。
「皆様が変わらず、欠けることなく、またここに四人集いましたことを嬉しく思います」
メイドはなんと言ったか。それを気にするものは誰一人いなかった。
骸骨男は、自身の近くにいたメイドに、少年と少女の間の席にさっさと座るよう促す。
「なるほど、バレていましたか」
「友を騙そうとは……随分な挨拶ではないか、白」
「そちらこそ、友を顎で使うのはどうなんですか?」
いがみ合う二人だが、少女のあーという声と共に、二人の間に割り入った猫により、睨み合いつつも、大人しくなる。
入ってきたメイドが茶菓子を配り終え、入り口の横に立つと、灰色の猫は四色に光る球体の上に座り、にゃーごと鳴いた。
沈黙が流れる中、口火を切ったのは骸骨男であった。
「我が友よ、息災だったようだな」
その言葉に対し、口を開いたのは、少年であったが、それを見かねてか、それとも気づかずか、メイドのふりをしていた女性が遮り、喋る。
「見ればわかることを、言わなくてもいいですよ」
その女性の言葉に、紫紺の髪をした少女が反応する。
「ボクはクロムのことだし、別にいいと思うけどなー」
骸骨男もといクロムが不機嫌そうに唸る中、無邪気に少女は喋り続ける。
「大体、フレイはなんでクロムが嫌いなの?」
その質問に、毛先の赤い白髪のメイド女性、フレイは答えなかった。
「大方あれであろう。序列」
その一言をクロムが発した瞬間、フレイの形相が変わる。ほぼ一瞬にして術式を組み上げ、あろうことかそれを、組み終える前に放出した。
この世界には、変化しきれなかった物質をこう呼ぶ国がある。
『原点』
魔術の暴発を生み出し、それを利用すること。
して、その威力はこの部屋など吹き飛ぶであろう威力のはずだが……。
クロムはそれを避けることもせず、真っ向から受ける。
クロムの目の前。その場で、中途半端な魔力は消え去った。
結界に阻まれて、だが。
「久しぶりであるな、貴公と闘るのは……」
「そうですね……」
黒と白の影がおり……。
お互いに術式を組み始めようとした。
その瞬間であった。
「やめろ」
明確で、正確で、絶対。
逆らえば、死ぬ。
二人は、直感でそれを感じ取った。
組もうとしていた術式を暴発させずに消去し、軽く睨み合ってから椅子に座った。
「三日後まで、待て。待てないのであれば、仕方がない……」
不満を口に出そうとしたフレイ。それを見た瞬間、仕方がないと言いながら、立ち上がる少年。
少年が立ち上がった瞬間に、フレイは再度座り直した。
壁がある。
無論、フレイが不満を言うならば我も、とクロムは思っていたが、フレイが座り直すのと同時、それはやめることにした。
威圧されたのは、フレイだけでなく、クロムも、だからだ。
見透かされていた。
「全く……毎度毎度……。何のために集まっていると思っている」
「「それは……」」
フレイとクロムの声が重なった。
二人して顔を見合わせて、睨みあったかと思えば、軽く苦笑した。無論、クロムに至っては顔が見えないのだが……。
何はともあれ、一つ問題は解決した。と言っても今限りかもしれないが……。
「本日はティオ様からお話があるそうです」
話の区切りを見つけたメイドが、二メートルと近い入り口からそう言った。
そして、それを受け取ったティオ……紫紺の髪をした少女が口を開く。
「えっとね……多分、この国が勇者を召喚したっぽいんだよね」
軽い口調で。
彼女はそう言った。
あくまで会議に近い感じで、毎月一度開かれますが、話題がない時は開かれません。
ぶっちゃけメイドさんの変わらず、欠けず、というのは、誰かがいなくなってタイトル戦が面白みに欠けることがなく、嬉しい、という感じで言っています。
評価ください!
ブックマーク70件目、そしてPV六万!
ありがとうございます!!
次はもうあれだね、十万目指そう




