塚原ゆかりという少女
「じゃ、いってくるね」
「うー、気をつけてねー」
「ん……頑張る……!」
どうもこんにちは。今では十四歳と言うことで記憶の復活した鬼灯稀有もとい塚原ゆかりです。
十四歳の誕生日が昨日で、今日が入学試験とはいったいどんな地獄でしょうか? それが記憶を取り戻した人か、ただの地獄なんですが。草すら生えません。林でも物足りない。
どうも実力のある人が入る剣術学院と魔術学院の混同学院の入学試験だそう。
別に剣術はどうでもいいのだ。無の空間と呼ばれる場所で、別れたはずのケイオスと十四年の月日で学んだこともある。のだが、魔術、君はダメ。私が扱えるのは、特定の神を選び、その神に由来する事象を一部扱えると言うものだ。
と言うわけで、魔法はほぼ使えません、はい。
落ち着いとる場合かぁっっ!!
ちゃぶ台があったらガッシャーンしたいですはい。
と言うか……
「余裕そうだね−、レイは……」
「魔法……得意だから……」
「ほほぉーん……」
イラつく。なんで妹は魔法得意で私は不得意なんだっ! 不平等だ! 何がサーシャ を守れだ! 守る力もなしに守れるかボケェっ!
やって欲しいならそれ相応の対価を与えるるのが普通だっつーの! 神様の非常識はこんなところで花開くらしい。フ○ック!(^^)
「……お姉ちゃん……魔法苦手……?」
「うっさいわ万能娘」
そう言えば、鬼灯としての私はもうないらしい。魂の回収をすれば取り戻せるかもしれないが、ほぼ諦めたほうがいいみたいだ。
ちなみに、【破壊】も〈奪命剣〉も鬼灯としての私が死んだせいで失われたみたいだが、どうも【破壊】だけは『鬼灯』が付与能力として渡してくれた。
まあもともと『鬼灯』の能力らしいし、納得したっちゃ納得した。
ついでに、Error Skillとかいうのは〈開放/封印〉というスキルになった。
開放すればいつでもセフィロトになった私の力を扱えるらしい。ちなみに、私が強くなればそれに比例して、セフィロトに闇が増えるらしく、スキルレベルマックスからどんどんマイナスされていくらしい。
マイナスされていけばいくほど強くなるらしい。深遠に近づくのだから、プラスではなくマイナス、ということらしい。
ちなみに、スキルレベルが一つ減るたびに、一つのクリフォトが開放されるらしい。
全部開放すれば守護悪魔を呼び出せるようになるのかな? まだサタンとしか契約してないけど……。
「万能……違う……」
「まぁね。そりゃあ万能な人間なんて、晩成しないものね」
「それも……違う気が……」
「いいの。ほら、こんな速度だと遅れるよ?」
「お互い様……」
普段あまり笑わないレイも、私と二人っきりだとよく笑ってくれる。ちなみに、遅れる遅れる言いつつもゆっくりな私は、普通の人なら見えないほどの速度で動いている。
レイに関しては渋々と言った様子でポーション片手に転移魔法を使い続けている。たまに立ち止まって、私に転移して消費を抑えたりしているけど、最初からそうしろって話……。
私がこんなに早いのも、一つのセフィラだけなら、〈開放〉をしなくても扱えるからだ。普段は実力にカセをつけさせるため、とか言われた。この枷がまじで何してもとれない。
剣術に関しては、『鬼灯』の提供で、配下を一人貸してくれた。どうも日本人らしく、名前は乙鳥征妹と徹底的に読ませる気のない名前だった。
まぁね、そんなことはどうでもいいのよ。大事なのは、あの子、めっちゃ強かった。ロリババアかってくらいに強かった。
あれで実年齢も14だっていうんだから末恐ろしい。『鬼灯』の親友だそう。戦友かな? って思ってたはい。
つか『鬼灯』はおっさんっぽいイメージだけど、実年齢爺じゃ……。
というわけで、基礎的な身体能力は、圧倒的に欠如しております。
なんかセフィラに思いっきり吸収されちゃったらしく、私個人の身体能力の向上にはつながらなかったらしい。
そう、これが欠点なのだ。
どんなに修行して身につけた力であろうと、レベルアップで得たものでない限り、それは全てセフィラに十一等分して分けられてしまい、私には回ってこない。あくまで12番目のイレギュラーなセフィラという扱いで、セフィロトから外れたセフィラみたいな?孤高の狼的扱いされてます。
開放を使えば私のものになるけど、常に開放するのは緊急時だけ、ということで禁止されている。
もしそんなことをすれば、ケイオスの分離体たちが直々に説教しにやってくるとか……。それも一国の軍隊並みの量で……。
まだ二、三人ならいいのだが、いかんせん数が多いのが特徴のケイオス。さすがは空間自体。
というわけで、私がセフィロトを扱えるのはわずか十五分だけ。十五分で決着がつかなければ、クールタイムとして同じ時間を待たなければならない。
ちなみに、クールタイム=使用時間なので、使用時間が短ければ短いほどにクールタイムは短くなる。
「お姉ちゃん……止まる……」
「え? なんで?」
なんで止まらなくちゃならないんだろう。もう周りの光景見えたないから何があったかわかんないけど……。
レイくぅん、遅刻しかけてんだよ?
「行き過ぎ……」
サーセンでした。
私の妹だからそんなこといわなくてもいいよね?
よくみてみると、結構大きめの看板が置いてあった。
試験。
たった二文字書かれた看板を、レイは見つけてくれた。私が吹っ飛ばしている間、そんなに暇なのか……。いや普通に大きいけどね?
次からは気をつけよう……。レイを抱っこしていくとか……。重そう……。
女子にそんなこと言っちゃいけない? 同じ女子だしセーフじゃね?
それにしても、いろんな奴がいるなぁ。歴戦っぽい奴はいなさそうだ。ま、こんなところにカイネルみたいなのが大勢いても困るんだけど……。
それでも今の私個人程度の実力はありそうだ。
「えっと……」
それはいいんですが……。私、この国がどこかすら知らないんですが……。
絶対筆記試験あるでしょ? 私何も知らんのですが……。
「お姉ちゃん……そっちじゃない……。というか目立たないで……」
なんか妹さんのあたりがひどいんですが……。
もしかして、私、実は嫌われてた? いやまさかねぇ……。
「私たちは……すいせ……あ……、待って……!」
ま、いっか、と聞こえたのはきっと気のせいだろう。
というより、随分と並んでるなぁ、試験の受付場。
私もちゃっかり並んでる身としてはあれこれ言えないけど、とりあえず、めっちゃ人がいる。さすがは連合国ってところだろうか? あれ? ちゃっかり記憶まで戻って……きてないか……。
連合国だってのは誕生日の時に知ったんだった……。やっぱり筆記試験は無理じゃ……。
「あ、あの……筆記試験ってあるんですか……」
「いえ、ありません」
清々しい笑顔でそう返されました。
Oh………
「本当に?」
「はいっ!」
あんた、某協会の受付嬢じゃ……という喉元までデカかった言葉はあの世にさよなら。
ウフィーレアさん、元気にしてるかなぁ……。というか懐かしすぎる。いろんな濃ゆい人と出会ってるせいか、彼女の存在感もだいぶ薄くなっている気がしないでもない。
「ないのかぁ……」
よかったです。
一次試験・剣術技能
普通に剣技とかを見せる。
すごいつまらない内容だったが、その命の掛け合いなしでの剣の美しさ、鋭さを見るのはすごくいいと思う。窮地だからこそ開眼する、そんな人物なんてゴミに等しい。いやまあそれをいったら私もそんな一面あるけどね? 一番大切なのは、どんな時でも鋭く、強く、美しいことだそう。
征妹に徹底的に教えられた。そう言えばあと十三年が経ったらきてくれるとか言ってたけど……残り一年か、本当にくれるのかな? 契約期限とかって言ってたけど、事情聞くの忘れてた。
とりあえず、見せる剣技を選ばねば。
見せることができるのは合計三つ。見せ方は自由。普通は一個一個やるらしい。
「次」
簡略化された言葉に、情は感じれない。やはり、身分など、全て関係なくやるからか、審査官の表情がすごく冷たい。
こんなのに見られてやるとなると結構プレッシャーがかかるけど……征妹の比じゃないね。
前ノ太刀
緋扇
抜刀。その一閃はただの一閃ではない。通った後に細かな斬撃が吹き荒れる。それの威力はそこまで高くないとは言え、持久戦では重宝される、チマチマ攻撃だ。
続けて、そのまま体をひねりながら下から腕を振りかぶり、次の瞬間には私の腕は上にあった。
つまり、振り終わった。
壱ノ太刀
斬昇円天
上へと抜けていく、三本の不規則な動きをする剣閃。それに審査官が気を取られるのはわずか1、2秒。だけど、それで十分。
上に上がった剣閃へ向かい、思いっきり飛んだ。剣閃が残るのも1、2秒程度。それだけ残る時点でおかしいが、それが乙鳥流剣術なのだそう。
人智を超えた剣術らしい。ん?いやぁ、征妹は人じゃないと思うなぁ。
上に振り上げた腕がどうなったかって? そりゃもう、一緒に上に投げてありますってば。つか、これがめっちゃ痛い。上に引っ張られるから余計痛いし、私個人の身体に「依存する」のだから、筋力ほぼ平均以下の私にとっては地獄も同然。よくたえた、私ぃ!
剣閃を踏みつけ、剣をキャッチし、そのまま勢いに任せ、下へと斬りかかる。ただ斬りかかるだけでは、意味がない。先にノールックで上に剣をふるい、同時にその斬撃を足で思いっきり加速に使用し、剣を途中でふるい、その斬撃すらも差し置いて、最終的にほぼ同時に地面へ接着し、剣を抱え込むように着地する。
弐ノ太刀
落光斬影
乙鳥流の剣術は単体で使ってもいいが、全ての敵との戦いをできるだけ想定し、全ての技は全ての技につなげることができるように作られているそう。ただ、やはりそれを為せるかどうかは、身体能力や、身体の稼働領域の広さで決まるらしい。
そこは個人差。私にゃ無理です!
「素晴らしいっ!! ここまでの剣技は今までで見たことがないっ!」
だそうです。
そりゃまあ『鬼灯』お墨付きの征妹がわずか数年の歳月にして生み出した至高の剣術ですから当然。
続けて第一次試験・魔術技能
「自分の得意な魔術を行使してください。連携型の場合は申告を!」
明るいTHE魔女つ子って感じの審査官がそう叫んだ。叫んだ。いやまじで。
この子本当にうるさい。もはや真の意味でお○ャ魔女。
え、得意な魔術ですって?
バーゲン開催のお知らせを読んだ主婦並みに目を輝かせ、スッと魔術媒体でもある〈世渡りの剣〉を構える。
早速私の番である。
では、とっておきのお得意様を……。
「『隙間を埋める聖星』」
星落とし。
規模は極小サイズ。調整した。このサイズでも威力は大アルカナの魔術師タロットカードのおかげでかなり強化されている。あ、魔術師タロットも抑えた方がよかったかも。
一瞬焦ったやつもいただろう。だが、どんな魔術でもいいという条件下で、私の魔術は、この世界の魔法や魔術じゃなくなる。
そう。私は神に由来する魔術のみを扱える。
エトワールファレンはケイオス由来の魔術なので、結構熟練度? 的なのが高い。
ちなみに魔術は基本即席で作らなきゃいけない。神の力をどれだけ理解しているかで変わってくるわけだ。
ただ使おうとしても意味がない。エトワールファレンは当人の扱っていた技らしいので、覚えるのが簡単だったが、それ以外となると、毎度毎度命名は必要ないとは言え、考える必要性がある。
窮地に陥って扱えるものではない。
ただ、支援型としての使い道は満点。後ろでボソリとつぶやき、唐突な攻撃で敵を戸惑わせることだってできる。
まあエトワールシリーズとケイオス本人が名付けた『空隙』系統は覚えているので、窮地でも扱えそうではあるが、その分、最高神の一角であり、原初神なので、威力がえげつなく、燃費が化け物級に悪い。
一撃で周辺の大地を焦土に変えることもできるらしい。
そう言えば、改造すれば星落としの剣とか作れそう。
「………は……?」
魔女っ子審査官、ついに黙る。
いやぁ、すげぇ爽快です。その顔。ごちです!
ちなみに一次試験は個人試験なので、審査官以外は部屋にいない。案内人であろうとなんだろうと関係なく受験者と審査官以外は部屋に立ち入ることはできない。
なので、どれだけ全力をだしても試験場を破壊しない限り、規格外の力は外に知られることはない。出す気もないけど。
「いや……え?」
「さーせんでしたー。あはははぁ………」
そういい、試験場を後にする。破壊してないので、怒られはしないだろう。




