模擬試合
てなわけで迎えた第二次試験。内容は簡単。普通に模擬試合をするだけだ。
ちなみに、私は我流です。魔術も……。
模擬試合って言っても、実剣を使うので、痛みに関してはどうしようもない。それに、回復魔法等もあるので、部位欠損以内なら大丈夫だそう。あれ? 部位欠損はダメなんだっけ?
どうでもいいや。どうせ、私の身体はすぐ再生……できまへんがな(゜゜)。
開放しなかったらできまへんがな。
それよより、
「会場はどこぞ」
普通に声に出して行ってみたが、誰もいないこの場では意味がなさそうであった。声に出すだけ意味あるんだってば!
というかここどこよ!
仕方ない、じゃあ……
「《開放》」
走って探しゃいいんでしょっっ!!!? もう知ってるよ!
伊達に何年もこの世界にいるだきゃあるんだよぉっ!!
数分後、ようやく見つけました。学園敷地の外でした。なんで通知なかったんだろ? 外ならあるはずだけどなぁ……。
通知……そんな便利機能ないわな?
さあ、模擬試合だ!
〈世渡りの剣〉は使用禁止って言われそうなので、木刀に戻ってもらいました。セフィロトを吸収したせいか、こういうこともできるようになった。
意外と便利で、打撃→打撃→斬撃→打撃というのも扱い方や集中次第でできるようになる。そんなに集中する暇があるとは思えないが……。
というか、今更とはいえ、剣技は剣技。大剣やら片手剣やら、剣ならなんでもいいようだ。
剣術って東方の国が主流だってノエルとかジブとか言ってたけど、ここってどこなわけ?
「すいません、ここってどこですか……」
道行く人にそんなことを聞いてみた。
「あん? おかしなことを聞くやつだな。流れもんか? まぁいい。ここはいわば東の大陸だな。ここは連盟国だから、どの国かって言われてももうよくわからねーけど、ま、エストゥアレント連盟国ってーとにかくでっけぇ国だって思ってりゃいいさ」
「ありがとうございます」
「おう、あんたの旅に、守護神獣様の御加護があらんことを、ってな」
なんか別れの挨拶? みたいなのなんだろうけど……このおっさん、見た目からして冒険者か傭兵っぽい感じだが、随分と軽ノリで言ってないだろうか? そう言った大事なある種の〝呪文〟を軽薄に扱っても……大丈夫そうだが……周りからはどんな目を向けられるかわかったもんじゃない。
それはそうとして、〝ここ〟がどこかは聞いてない気がした。
確かに、質問の系の汲み取り方次第では、この国が何処かとだけ聞いているが、普通、ここの地名を答えないかっ!?
なぜ国……それもなんか連盟とか同盟とか、私の知るそれとは全く意味の違う国の塊で一つの国ですハイなんだよ!!!
それはそうと、でも東方の国ってことで一応あっているみたいではある。というか、東西南北・中央で大陸があるらしい。さすがは地球の十倍の面積を誇り、世界の陸地と海洋の面積が陸地の方が比率の多い世界なだけはある。
東といえば日本風な国があるイメージなんだが……。あ、東ってこっちか。そっちは西か。うーん……脳内マップを記憶の中から引き摺り出してみたけど、やっぱり東の大陸のどこがどこなんて覚えてないや。
いやまあ覚えてる方がおかしいけどね。おかしいけど、ねっ!
というわけで、模擬試け……ん? いや違う違う。模擬試あ……い? んー……なんか違うような……。こう、言葉の響きがっ……。
まあ二次試験。
どういうわけかコロシアムである。いやまあこの世界の言語・単語からすると闘技場っていう方が正しいかもしれないけど……。
とりあえず入場である!
えっと……私の控え室ぅー……ここか。
23番。
結構早い番号だが、どうもまだ闘技場等の下見だけでどこが入り口かわからんという人が多いだけらしい。その分、速度がえげつない私は早かったわけだ。
運がいいのか悪いのか、初戦から私である。
こ、恒例事業さ。ご当地イベントパート2ってだけ。そう、だけだってば。ちょ、そんな焦らせないでよ。
どんな化け物が出てくるかわかんないでしょ? レイ級の化け物と当たりたくないっ!
というわけで、まずは受付。
ルールが複雑で、実は受付はこれかららしい。今行ったのは、あくまで番号の登録。簡単にいえば、二次試験での試験番号を受け取っただけである。
「すいません、試験番号23番で登録を……」
「はい、じゃ、順番に質問するから、答えてね。あ、これは合否には関わらないから大丈夫だよ」
何十人か先客がいて、並んで回ってきた順番。結構視線が集まったり集まってなかったり。
「じゃ、まずは魔術はどうやって覚えたの? 先生がいた? それとも親が?」
「い、いえ……独学です……」
あ、前世からだし、独学ってことになる気がする。あれ? でも……結局独学か……。いくら鬼灯=塚原の図式がセフィロトにまで刻まれたって……私は私って自分で決めたもんね……。
「おい、みろよ。あいつ独学だってよ」
「は? バカなんじゃねぇの?」
「分を弁えろってーの」
「本当それな」
小声でも聴こえてございますよー。
「剣術は?」
「えっと……その……」
これだけは答えづらいな……。征妹はあくまで私の考えをただ無邪気に自分の剣筋に当て嵌めただけだろうけど、『鬼灯』がいうには、システム上では君が開祖ってことになるね〜、って軽ノリでいってたし……。
開祖私なら……我流? 我流でいっか。どうせ、責められても当人が言った上、あの化け物が認めた?んだし。
「我流です……」
あれ? でも我流て名前あったりしたら我流じゃないのかな? それに剣筋だけってことでもないし……。
まあいいや。
ちなみに、征妹、名前は乙鳥流にしたらしい。これは『鬼灯』の圧が原因らしい。元々塚原流だったとかどうとか……。
神の世界に影響を及ぼす剣術を神々の敵として今認識されてる私の名前にするのはダメらしい。
「ハッ、剣術を独学かよ、いかにも弱そうだしな」
弱そうですいませんね! 生憎とこっちには厄介な弱体化の呪いがかかってるんですよ!
「おやおや、剣術も魔術も独学とは、さぞかし貧乏なのでしょうね」
何このボンボン坊ちゃん系貴族野郎は。
いや、うちの家、すごい金持ちですが……。それこそ、一国の国庫開いても足りないくらい金ならありますが……?
うちの親はそこらの森に私を言葉通り家から角度調整とか風速計測とかきっちりしてぶん投げて修行してきなさい、な鬼畜だから。
「あ、そうですか」
十四年間、途中であのおバカ三人組がちょっかい出しに現れ、とりあえずエリスちゃんを友達にして、ロキを手懐け、ヘルメスとはお金で契約してもらった。契約、といってもこれからちょっかい出さずに友達になろうねっていう契約だ。
意外と気のいい奴らだったので、気に入ってたが、もう会えないのか……。
で、エリスちゃんと色々話してて、教訓を教えてもらった。
ヘラクレスが旅をしていると、狭い道に林檎に似たものが落ちているのを見て踏み潰そうとした。しかしそれは倍の大きさに膨れ、もっと力を入れて踏みつけ棍棒で殴ると、さらに大きく膨れ上がって道を塞いでしまった。呆然と立ちつくすヘラクレスのもとにアテナが現れて言った。「およしなさい、それは|
アポリア(困難)と|エリス(争闘)です。相手にしなければ小さいままですが、相手にして争うと大きく膨れ上がるのです」
だそう。
どう考えても自分を貶されてる話にしか思えないが、エリスちゃんはこういった。教えてやったのです、えっへん!
これは当然、無視した。どういっても喧嘩か口論になりそうだし、返答を思いつくこと自体困難であったからだ。
そんな教訓もあり、コイツの相手はしない。
ただ受付を早く終わらせるだけ。
「それじゃあ、次の質問だけど、実戦経験はある?」
「(この身体になってからは)ありません」
実際は格上との戦闘大好き戦闘狂みたいな経験があるのだが、それは前世だし、カウントには入らなそうだ。
「僕を無視するな! こっちを向け! 平民の分際で貴族に話しかけられているんだぞ!」
「そう。あt、次の質問ってあります?」
「はい、大丈夫です! それでは、守護神獣様の籠があらんことを」
これってどう返せばいいんだろう。
「頑張ります……」
「ふんっ、せいぜい頑張るがいいさ」
君にはいってないから。ぽっちゃり体型|(※実際は太ってません)ボンボン坊ちゃん上から目線うざいですよ系貴族さん。
受付前からわかってたとはいえ、初戦が自分だとこんなに憂鬱なのか……。
試合の場所は事前に番号で決めてあったので、うまく狙って入ることもできるのかもしれないが、そんなことをする必要はない。
ようは誰よりも強ければいいんだから。
〜十四年のお話 ※一部〜
「………え? ここどこよ」
「にゃあ。大体十四年間魂が何もせずいるのは勿体にゃいのニャー」
「というわけでね」
「ニャーと」
「ボクが」
「「稽古つけてあげるのニャ」」
両方揃いも揃って猫語でキメ顔をするアホさ。
稽古、といっても『鬼灯』の後ろには木刀と実剣を持った少女が控えているので、大方そっちにやらせる気だろう。
「で、剣術と魔術、神術。どれからやりたい?」
先生! 全体的な説明を要求します!
「そうだニャー。神術がわからニャいんだニャー。神術ってのはだニャー」
「ま、君が扱ってた、魔術モドキだね〜」
あれって神術っていうんだ。
「魔術の中で、神の力を借りるってゆー特殊ニャ魔術だから、神術って呼ばれてるのニャー」
でも、そこまで威力がなかったような……。
もしかして、それもなんか無理やり稽古させられるのかな?
「神術にゃら、ニャーの出番じゃニャいニャー」
「ボクでもないね〜」
え? じゃあ誰が……そんな言葉が口から振動として出る前に、一人の少女が前に現れた。
「こんにちは。私は『神の代行者』です」
ミカエル。神とほぼ同様の力を持つ熾天使にして天使長。
その容姿は私の予想とはほぼ真逆で、天使のような翼?はなかった。あるのは孔雀のような翼を持ち、少女の体躯を模したわけでもなんでもなく、完全に少女そのものであった。
あれれ?
「なんでそんな容姿なの? 男じゃ……」
「あ、これは『鬼灯』様の意向でこうしろ、と」
だいたい察しましたわ。
天使ってなるもんじゃないね。そんな神様?の気分とかで性別決定されたら流石に耐えれんわ。
さすがは天使長です。そんな理不尽に屈することもなく従うとはっ!
うん? 従ってたら屈してるのかな? ま、大事なのはそういうことじゃないのよさ!
「チッ」
あ、舌打ちした。
「神術っていえば天使だからニャー。ミカエルニャら師範でも問題ニャいのニャー」
軽い調子でケイオスはそういうと、陰と同化し、何処かへ行ってしまった。
『鬼灯』は見張は任せたとばかりに後ろに控えていた少女をおいて遊びに行った。
というか見張って何よ。
別に逃れる場所なさそうだし、力は欲しいから逃げるわけないじゃん。
「では、神術の基礎は分かりますね?」
「いえす」
「現時点でどの神々の力が扱えますか?」
え? うーんと……ニュクスでしょー、アヌビスでしょー、セフィロトは今となっては私自身だからカウントに入らないから……エアヴァクセンは破壊の象徴ってだけだから……二人?
「えっと、使ったことがあるのは、一人で、使えるのが一人で、使えるかもしれないのが二人ほどですね」
「基礎だけでそれほどの容量であれば、十分ですよ。私は必要ないとはいえ、一応天使は現在『鬼灯』様の管轄なので、破壊の神術なら使えますよ。では、早速訓練?を開始しましょうか」
そういうと、ミカエルは空中から剣を取り出し、左手を初めて見せたかと思うと、そこには左腕共にどこに隠していたのか、巨大な秤があった。
「そういえば、ティファレト様は元気でしょうか」
「? ティファ??」
どちら様でしょうか。えっと、ああ、美のティファレトか! そういうことね。でも、どう答えればいいんだろうか。
死んでます? 違うなー。私が取り込んだし……。
会話とか念話とかできるのかな?
「そうですか、元気なのですね」
そういえば、笑顔を一度も見ていない気がする。微笑することもなかった。笑う以外の感情しかないのだろうか?
「では、私に神術を使用して一撃を与えてください。話はそれからです」
でたよ。
何しても全部避けられるやつ。
で、結局何を行使すればいいのかな? 得意なやつでいいのかな? 得意って言っても全部一回しか使ったことしかないし、アヌビスとかセフィロトの一部は一回も使ってない。
『クリフォト・セフィロト』って融合することで魔術?的なのができるけど、あれも神術なのかな?
「神術は魔術の原点ですので、神術こそが魔術、という風に考えていただいて結構です」
せんせー、意味わかりませーん。
「では、始めましょう」
ドサッッ、とミカエルが剣を地面に突き刺す。そして、人一人普通に乗るのではないか、というくらいの大きさを誇る秤を物理的に小さくし、剣の頭にある謎の穴に秤の細く、製作者の技量が窺える鎖を通した。
つまり、両手に何も持たず、完全に無防備な状態で私の一撃を受けようというのだ。
「……………」
何故だろう。声出す必要がない気がする。今この状態とこの場所だからだろうか……。
というか声出したら空気漏れるじゃん。もったいなさすぎて声出す気なくしたわ。
さぁ、行こう。
「そこですね?」
唐突に帳の降りた暗闇の中、ミカエルは私の一閃をさも当然というかのように素手で受け流した。
「ふぇっ!??」
「…………」
ミカエルは口元に手を当てて、可愛らしく笑う……のかと思ったら思案を始めた。
やっぱりというかそれが絶対なのか、笑わない。多分今も笑うはずだったんだろう。でも、笑わなかった。
何か理由がありそうだ。
バックステップで元の位置あたりに戻ってきた私は、通常の攻撃は意味をなさないと考え、次の行動に移る。
負担も考慮する。
『三重地獄・無神論』+『原型の世界・王冠』
一撃限りとはいえ、超威力の一撃。そして神々の力さえも打ち破る無神の力。
それが、セフィロト、クリフォトそのものが扱えばどうなるかは、言わなくてもわかるだろう。
納刀の瞬間、わずかに煌く刃が見えただろう。
ミカエルはこれと言って警戒はしていない。私が彼女を殺す事もない。
だからこそ、彼女は私の一撃がどの程度の大きさかを、誤認している。
「閃————」
意味もない言葉ではあるが、忠告にはなる。
これを聞き入れるかどうかは彼女次第だが……。
「何度やっても結果はおな………なるほど、ちゃんと、授業内容には沿っているようですね」
結局、至極当然とでも言いたげに弾かれて終わった。
「神術に対抗する方法がないわけではありません。神術というのは先ほど言った通り、魔術の原典です。では問題です。魔術に対抗するのにあなたは何を使いますか? あなたができない事も入れて結構ですよ」
やはり笑わない。営業スマイルとでも言えばいいのだろうか、笑いたいから笑うのではなく、強制されない限り彼女は笑うことはなさそうだ。
「えっと……魔術、スキル……あとは素手とか風圧とか??」
「最後の方に珍回答がありましたが、概ねあってますね。これを踏まえた上で、神術をどう防ぐか、わかりましたか?」
「素手で受け流す」
「………………(あ、これ私の教育ミスだ)」
ミカエルは私の回答に戸惑い、渋々と謝り、答えを教えてくれた。
「わかりづらかったですね。私は素手で受け流したのではなく、素手に気法と同じ容量で神術を纏わせて受け流していたのです。ケイオス様の神術は空間と煌星の二つでして、空間をうまく扱えば先ほどのようにどのような攻撃でも受け流すことができます。つまり、答えは神術には神術で対抗する、ということです。これから先あなたの敵に神術を扱うものは数人と少数ですが、確実に現れます。ここで最低でも応用、最高でコンプリートしてもらいます」
鬼畜……と思ったが、力を得られるのならばいくらでも利用するつもりだ。
それに、修行をしなければする事もなく永遠とこの暗闇で一人寂しく過ごすことになりかねない。
とりあえず……、楽しもう。




