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鬼灯とシズの休暇旅行 Ⅳ

 

さてさて、街に来はしましたが、この後どうしましょうか。

旅行・ファッションが大好きな雪梅に聞いてみるか。それとも久しぶりに冒険者稼業でもするか。いや待て待て待て。ボクはそもそもの話〈選定〉について知るためにここにきたんだった。そんなことしている暇……


「る、ルス! あ、あれは何っ……⁉︎」

「シズ様ー。あれはですねー、多分ですがオークションと言われるものではないかとー、思いますー」

「あら? オークションに興味があるの? 観に行きましょう」

「は、早くしなさいっ!」


 ………多分、暇しかない。


 あ、置いてかないでー。


 それよりシズの方が興奮状態のせいかツンデレ令嬢っぽくなってしまっている。まあ可愛いからいいけど、頼むからやめてほしい。恥ずかしい……。

雪梅に至ってはオークションを自分が見たいだけだろ、と突っ込みたくなる。


 さてさて、オークションの品とは。


『まずは、ユースティア王国のダンジョンから取れたという超高濃度の黒龍の魔石‼︎ 一千万オーロから!』


 オーロってあれか。ユースティア王国といいアルカンレティア民主共和国といい、フィリエルは知らんけど全部金貨何枚と銀貨何枚とかそう言ったふうな金額提示が多かったからか、オーロがよくわからない。

シズは……アルカンレティアだからアウトか。雪梅は……えっと、どこの生まれだったけ? 話では……あ、聞いてなかった。ルスは……魔界に住んでいたと言っていましたねー。うん。わかんないねー。


「雪梅、オーロって何?」

「ああ、そういえばあなた、アルカンレティアとかの方だから、オーロはあまりなれてないのね。そうね、金貨一枚で一万オーロ。銀貨一枚で千オーロ、銅貨一枚で百オーロって感じね。ちなみに正確には大銅貨とかあるそうだけど、あなたは持ってないわよね……。後で換金所にいきましょう」

「あ、はい」


 換金所ですね。覚えておきます。


「それにしても、よくそんな知識で組織リー……むぐっ‼︎⁉︎」


 ちょっとやばいこと喋りそうになったので、後ろに蛇のようにするりと回り込み、口を抑える。癖で首までしめちゃったけど、まあ口だけ抑えるのは難しいから仕方がないと割り切ってもらおう。

そして抑えた瞬間の反応が珍しく可愛かったのだが、この世界に録音機は存在しないらしい。少なくとも、ボクの周りが知っている限りでは……。


「ちょっと、何をする気なのかしら?」

「大衆の面前でそういうこと言わないの、メッッ」

「今は女子だからって調子に乗らないでほしいわ」

「そうですかー。耳タコ耳タコ」

「食べてあげようかしら?」

「ごめんなさい」


 声帯自体は多少高くなった程度だったので、低い声は出たので男っぽくなっていたのですが、体は女です。心は男だけど。トランスジェンダー状態に強制的にされるこの気分。ヒ○ラー様も大っ嫌いだ、というだろう。


「女子になるのは仕方ないでしょ?」

「あんなことしなければよかったのよ」

「自身の強化のためには仕方がなかった」

「あ、そう」


 だめだ。まともに取り合ってもらえない。

クッ、これがツンデレというやつか……。手強い……っ!


 というわけでいつも通りなボクらであった。


 オークションを眺めている間、シズはだんだんと上がっていく値段に顔を引きつらせ、雪梅は出どころを知っているからか、時折誰かさんを眺め、ルスは黒龍が何かを思い出そうと躍起になっていた。

ボク? ボクは眺めるだけです。だって、金なんてほとんどないし。え? フィリエルを『パーチェ・デルニエール』にあげたときに入った金? 組織の資金にされてボクには回ってきませんでしたが、何か?


 はあ、とりあえず旅行の軍資金を手に入れるために稼業するか。


「雪梅、ギルドってどこかな?」

「? そこにあるじゃない」


 あらまあ。視力落ちたかな?

いやいや、常人の百倍を越す視力にもなれるボクが視力不足? んなわけあるかい。


「ギルドですねー。懐かしのー」

「ん? ルスって冒険者だったのか?」

「あー、まあそうなりますねー」


 あそう。まあいいや。

B-初になったけど国外追放で何もしてなかったなー。久々に依頼受けるかねー。


 そういや、町によって依頼が変わったりするんだろうか? ギルドカードからも依頼を受けれるように、何かと他の町のギルドで受けなくていいようになっていた。

何故だろうか。後どうも冒険者だからと言ってただ冒険するだけのやつはいないそうだ。


「それじゃ、ボク遊んでくるねー」

「そうですねー。では私もご一緒しますー。雪梅様ー、シズ様のこと、頼みますよー」

「任せなさい。私を誰だと思ってるの?」

「なんか舐められてる気がするわ。稀有、面貸しなさい」


 どうもシズさんは怒ったことで性格が入れ替わったようです、本当にあいつは自分を制御できてるんだろうか?

ルスは何故ボクについてくるんですかね? いやね、確かにボクがご主人らしいけど、それでも、ねぇ? たまには一人にさせて……あ、ルスって人じゃなかった。じゃあいいか。


「お邪魔しまーす♪」


 ドゴッッ、とギルド入り口のドアが壊れない程度に蹴って開ける。

多分この世界で唯一の入り方だろう。流行ればいいのに。力加減はマジで難しいけど。

…………はい、嘘です。力加減なんてしてません。ただ単にこのドアが壊れるという現実を破壊しただけです。一時的だけど。


「どうもどうも。なんか面白い依頼、ある?」


 ほぼ瞬間的に受付カウンターの方に行く。ここは受付嬢らしいが、ルスがいた場所はバーテンダーだったらしい。世の中、何があるかわかったもんじゃないな。


「そうですね。『面白い』依頼だと、こちらになります」


 『面白い』依頼っていうのは、元々裏社会の俗語らしい。何ていうか、ギルドだと『クソ難しい』とか『最難関』とか、そう言った方面になるそうだ。あ、ギルドカードを出しているから、あくまでB-初として最難関と思われる依頼しか出してこない。


 ちなみに出された依頼がこちら。


『ダンジョン中層セーフティーゾーンの確保』


 ここのダンジョンはどうやらセーフティーゾーンと呼ばれる安全地帯があるらしい。その上三箇所。

セーフティーゾーンは安全地帯だが、解放するためには守護者を潰さねばならない。守護者は中層にいる魔物よりも強い、上層の魔物レベルになる上、どこにあるかは手探り。


 それ故に最難関だそう。


 で、そんな依頼を受けて意気揚々とルンルンと鼻歌まじりにウキウキ歩きをしてダンジョン(どこにあるかすらわかっていないくせに……)に向かうボクの前に人影が降り立った。


 ちなみに身長160あったボクの男性側の身体と違い、女性側の身体は何かと身長まで落ちている153しかありませんはい。

小さな冒険者でリトルルーキーとか呼ばれそう。


「おいテメェ、俺に挨拶なしとはいい度胸じゃねーか」

「? テンプレは他所でお願いします」

「ほお、随分と腕に自信がるみたいじゃねーか」


 こいつすげぇじゃねーかじゃねーかうるさいんですが?

よし。この人は今日からジャネーカさんだ。


 ついでに、この後知ることになるが、他所でお願いしますってある意味面貸せって言ってるようなものらしい。


「そっちの女も上玉だしなぁ」


 あのー、品格はどこへ?

上位冒険者なんでしょ? 品格って必要なんじゃないの⁉︎ これ女性ってバレたら終わりそう。そしてその後男性に戻ってまた終わりそう。


 さてさて、こういうのは早めに黙らせるが吉。


「瞬連の輝」


 そう呟いたボクは、絡んできたジャネーカの首にピースの人差し指と中指を合わせた形の手刀を添えていた。

スキル『瞬連の輝』はそういうスキルだ。任意の自身から見える地面で半径十メートルの円を作り、その範囲内であればどこに立っていける、というスキル。ただし、上に行く際、見えない場所にはいけない。


 簡単に言えば、ちょっとした瞬間移動。連続で使用することもできるが、最大三連。なので、三連内で上に登ればいいわけだ。


「っ‼︎‼︎⁉︎」


 負けた理由がわからなかったのだろうか?


「テメェ、何をした?」

「瞬間移動、かな♪」


 ドッッ、とジャネーカの肩を突き飛ばす。

ちなみに全力でやればそのまま肩から右腕を離すこともできた。


 耳を済ませれば、あいつ誰だ、とかいろいろ聞こえてくるけど、とりあえずダンジョンに向かう。こういう奴らに最後まで構う趣味はない。


「ルス、黙らせといて」

「えーっと………すいませんー」


 ゴキッ、と音がして、ジャネーカ君の首にルスの足が直撃する。威力は言わなくてもわかるだろう。龍にふまれると同義なのだから。

ちなみに死んではないない。死ぬことはない。骨折もない。大切な上級の冒険者だ。怪我なんてさせておくわけがない。


 それはさておき。

女性の身体はどうも筋力、防御は落ちるが、速度が上がるらしい。ついでに魔法適性も。魔法が使えるようになっちゃった。


 さて、切り替えますか。


「ルス、行くよ」


 片手にケテルの形見になってしまった改造したカランビットナイフをクルクル回し、そう言った。ドアを蹴って開け、そしたらあとはダンジョン管理協会に行き、ダンジョンに潜るだけ。


 と。その前に。


「あのー……ルス」

「はいー? なんですかー?」

「鱗一枚売ってきて……」

「…………お金、なかったですよねー。でもー、何に使うんですかー?」

「人手」

「…………ここのダンジョン中層にヒトデがいるんですかー?」

「人手不足解消だよ……」


 ルスは支援型。ボクは前衛だけど今では攻撃力不足で何もできない。驚くべきか、女性の身体では半分が魔法・魔術適性に変化し、破壊が片方しか組み込めなくなってしまった。


 代償というやつか。ならば破壊を上手く組み換え続ければいい、と思ったのだが、流石にそれはダメらしく、一度変えたら十五秒は変えられない。

というわけで、金で手に入れる。人手を。


 つまり、ボクは奴隷を購入する。

戦闘奴隷って強いんでしょ?


「ルスー、奴隷商会はどっち?」

「それです」


 あ、はい。すいません。目の前にありましたよね。

ん? そういうことか。現実の破壊による視力アップや理解力アップがなくなったからこんなになったのか。えっと、頼りすぎはダメですね。


「すいませーん。戦闘奴隷って売ってますー?」

「はい、こちらです」


そう言って店員らしき人は案内してくれたが……。なんかやけに視線が刺さる。何というか、憎しみ? みたいな?

何故だろうか。感覚までとち狂ったかな?


 と思っていると、ルスが小声で耳打ちしてきた。


「多分ですが、彼も奴隷なんでしょう。ちょっと調教しましょうか? 奴隷が奴隷でない人にそう言った感情を向けた場合、誰彼構わず調教する権利が生まれるそうですよ。彼は奴隷に対して奴隷なりに何か思いがあるのでしょう。それならば説明がつきます。まあ私も奴隷みたいなものですが」


 だそう。よくわからないけど、そういうことみたい。


「店主、お客様です」

「おお、これはこれは」


 何というか、小さくて無駄にゴテゴテした服装に丸形サングラスをした小太り……と言えるかどうかのギリギリの身体をした男性がいた。

こういう人あまり見なかったからちょっと嬉しかったりした。


「で、戦闘奴隷でしたね。どのようなのがお望みで?」

「前衛職なら、何でも」

「⁉︎ や、やめたほうがいいですよー?」


 ルスは焦っているのか落ち着いているのかよくわからないなー。

それに、問題はない。


「こちらは獣人族ですねー」

「忠誠心が高い奴はどれかな?」

「それはですねー……」

「勿体ぶらなくていいよ」

「こちらになります。生まれた時から奴隷としての調教、そして何よりも隠密であり前衛もこなす奴隷です。気配遮断はもちろん、前衛としても超一級品でございます。値が張り……」

「これ、買うよ」

「おお! ありがとうございます。さすがは私の見込んだ人」


 見込んだ、そういうことか。客としてではなく、奴隷を買う人として、見られていたわけだ。奴隷の店員に対する対応は例外だろうが、その中で奴隷商人への対応の仕方。それでどの奴隷をどこまで見せるか決めているわけか。

やりてだな。


「これからも、時々、犯罪奴隷が入荷するかもね」

「ふふふ、さすがは私の……」

「いいから。次、行こっか?」

「私、久々に続々としちゃいましたよ」


 意外といい人なのかもしれない。


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