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鬼灯とシズの休暇旅行 Ⅲ



「大草原、果てしないわね。アルカンレティアとは大違いね」

「ん……」

「何だあの巨木は……え? 何、ここって御神木が群生してるのかっ⁉︎」


 少しハイテンションになるボクに比べ、雪梅とシズはごく普通の感想を抱いているようだ。

うん。ボクが悪かったよ。そんなゴミムシでも見るような目を向けないでくれるっ⁉︎ 部下にそんな目を向けられると上司としてメンタルが……。あ、年下だから良いか。


 いやまて。待つんだボクよ、シズは年下じゃないだろう⁉︎


 おうおう、忘れてたよ。


「にしても……城壁がすげぇでかいなー」

「さすがは龍を撃退した国ね」

「うん? 雪梅、お前今なんて?」

「あら? 知らないの? 『セイントパーク』って何十という龍に攻められて、それを全て撃退した国なのよ」


 雪梅、そんな無理にない胸を張らなくても良いよ。シズよりはあるけどさ……。

シズは……成長しちゃダメだな。成長したら可愛さがなくなっちゃいそう。


 ふと。

カチャ、という物騒な音がボクの超強化された耳が捉えた。


「雪梅、その物騒なものは置いてってね?」

「っ、やっぱバレるわね」

「舐めちゃ、だめ。転移前兆、気づく」


 転移前兆? ああ、あれか。少しだけ風が吹くんだよね、あれ。んー、結構簡単に気づけると思うんだけどなー。ノルンとか絶対気付いてるはずなんだけど。

まあ流石にどこにいくかまでわからないけど、風邪の多さとかから逆算ってできるのかな?


「そう。さすがね」


 褒めても何も出ませんよ? だってあなた最高幹部でしょ? 昇格とかないじゃん。何? 副リーダー? 決まってるでしょ、ノルンだよ。

空きなんてないし、これからどんどん増えてくし、気づけばノルンは手下勝手に増やしてるし。見逃してるのボクだけど。


 雪梅は仙山龍に物騒なものこと爆弾やら暗器やらを収納してもらう。

何つーもんを持ってこうとしているんだ、こいつは? 爆弾とか転んで起爆とかないよね?


「大丈夫よ、ちゃんと加工してあるわ」

「失敗、してたら。そう、言ってる」

「…………わかったわ」


 失敗とか考えません、って顔してるもんね。

なんていうか、全て完璧にこなしてきているからこそ、疑ってはいけない、その理由を知った、みたいな?


 あれだよ、疑ってるとそのうち疑心暗鬼になって、逆に失敗しちゃうやつ。

大事なのは自信を持ち、持ちすぎないこと。その加減が難しんだけど、まあいくつもの仕事をこなしてきたであろう雪梅にいうことはないかな。


「雪梅、何でリーチェって名前もあるのや?」


 気になっていたこと、聞いておく。


「知らないわ。親にお前の真名だって言われたの」

「いつの話かな……」

「さあ。十何年前じゃないかしら」


 歩きながら、そんな他愛無い話を繰り広げる。

ちなみにシズは人化の術を使って普通の女性?男性? どっちかよくわかんない外見をしているルスと話している。


 どうも気が合うらしい。ルスの管理はシズに一任しようかなぁ……。


「自分でやりなさい。それがあなたの仕事だもの」

「はぁい」


 面倒でも、ボクは復讐のためなら何でもする。今でこそこんなのほほんとしているが、ボクの復讐の芽が枯れることはない。


「ちょっと、そんなに殺気をだだ漏れにして。何を考えているの?」

「いや、ちょっとね」


 頭をガツンッッ、と思いっきり殴り飛ばす。

ボクに殺気はない、そういう幻想を作り出す。


「そんなこともできるの? 暗殺者が欲しがりそうね」

「ボクは、暗躍が好きだけどね」

「私もよ。かっこいいもの」


 あはは、と珍しく意見が合い、ボクは笑ってしまう。

こんなになってまで、誰かと共感する瞬間と巡り合うとは思ってなかったからか。珍しく心から笑えた。


「私も、復讐は……あるわ」

「へぇ、意外だね」

「誰にだって、あるものよ?」

「…………聞いても、良いかな?」


 ええ、と鷹揚にうなずき、彼女はゆっくりと入国のために並ぶ列の最後尾いるボクの手を左腕で抱き、右腕で捕まえる。

側から見れば完全リア充だが、まあ今回は見逃してやろう。


「悪いわね。こんなこと、しちゃって」


 いつもとは、少し違う、どこか砕けていて、シャキッとした口調。

彼女らしさは、消え失せ、ボクの目には、一人の奪われた少女の姿が映った。


 彼女の少しだけの膨らみが、ボクの腕にあたる。

特に気になることもないが、どうもシズの方から殺気を感じるような……? 気のせいだろう。まあ一応だが、空いている手でシズの頭を撫でてやる。


 喜んだのは確かだが、どうも恥ずかしかったのか、ルスの後ろに隠れてしまった。全然見えてるんだけどね。


「私はね、先生の幼馴染みだけど、同じ故郷じゃないんだ」


 普段なら、じゃないの、というはずの雪梅がじゃないんだ、と子供っぽく喋っている上、下唇を噛んでいる。

少し、注意しておこうか。ちなみに先生とはノルンのことだ。どうも剣術やら魔術やらを教わったからか、先生と呼んでいるようだ。


「嫌なら良いよ、話さなくても」

「私が四歳の時かな。村が盗賊に襲われちゃってね。村長も父親も、みんな殺されちゃったの。もちろん、女子供生け捕りよ? 女は快楽のために、子供は性別問わず奴隷として売るために、生け捕りにしたの」

「そりゃまた随分な……」

「私は四歳だけど、村には十歳になってない子は四人くらい、十祭より上の子だと、十四歳だったかしら、その子が最低ね。だから、その子も快楽のために……。名前は何だったかしら、ああ、神林よ。よくして貰ってたわ。だから、私はやめろって。でも、無駄だったし、あの時、私は神林ちゃんに迷惑をかけてたの。神林ちゃんは自分から体を差し出すことで、私に向けられていた注意を一身に受けた」


 何も言えないし、いう気もない。

雪梅の闇は、これか? 何かが違う。


 まあ良い。どうせ、ボクの思い過ごしだろうし。


「そこで、先生がきてくれたの。曰く、寝てた、だって。私、笑っちゃったの。そんな状況だったからかもしれないけど、笑っちゃったの。神林ちゃんは処女じゃなくなっちゃったけど、それでも出されはしなかった。先生のおかげ。でも、それは神林ちゃんだけだったわ。他はみんな酷かった。母は抵抗して、そのまま死んじゃったし、他にも大人はみんな死んじゃった。だから、先生が私たちを引き取ったの。ああ、アイリスは別よ? あの子は先生の実妹だもの」


 随分と、ノルンはご都合主義な面があるからな。

ボクは魔王に、ノルンは勇者に向いているんだろうね。


「先生には何度も助けられたわ。もう、数え切れないほどに」

「で、その盗賊は死んだのかな?」

「いいえ。あの時、先生では、敵わなかったの」




 は?




 いやちょっと待て。ノルンより強かったのか、その盗賊たち。

いやいや待てよ。ノルンは生まれつき完全な身体能力とスキルの扱いを持っていたんでしょ? 魔神と戦った時の状態って言っても過言じゃないんでしょ?


 それとより強い盗賊ってなんですか?

神様?


「それで?」

「先生じゃなくて、アイリスが、遠隔だけど助けてくれたのよ。遠隔で、彼らはいきのこるってことにしてくれたみたい」


 やっぱアイリスってチートなんじゃ……。

ノルンも『OS』がなければ即死案件だろうし。


「うん。で?」

「その盗賊は、世界全土で指名手配されている、凶悪犯だった。だから、あいつを殺すために私はあなたを利用する」

「うん。利用されないようにね」


 ちゃんと注意はしたよ? これでボクに利用されても文句言わないでね。

それに、偽物の【深淵の歩】から得た魂因子もあるし、これからどうなるかなぁー。


「それで?」

「え、」


 今度こそ、ボクの反応に雪梅の口が、止まった。

いや、その程度のこと、この世界ではよくあるだろうし、まずそもボクにとって、雪梅はただの部下でしかない。そんな雪梅に、道具とした扱えと言われた存在に、なぜ同情せねばならないのだろうか?


 まあ同じ立場である人間としてはちゃんと同情しているし、可哀想だと思える、かもしれない。

ただ、所詮はたったそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない。ボクはボクとして行動するだけだし、雪梅のために行動する日がくるかどうかすらわからない。


 そう、わからないんだ。

まだ、ボク自身が今後どう生きていくかを決めていないせいだろうけど、今のボクに雪梅の過去を闇を喰らい尽くせるかは正直言って自信がない。ノルンの闇にすら負けてそうなボクが、敵うかどうかは微妙、というわけだ。


「旅行に来たんだし、辛気くさいのはやめだ」

「…………ええ。それが良いわ」


 シズに至ってはルスに見守られながら、そこら辺を走り回っている。

ルスって龍人判定ちゃんと出るのかな?


 尻尾、龍特有の触ると硬い癖にウサギ並みに動く機敏な尖耳、爪は人間みたいだけど……。翼もないし、仙山龍は元より尻尾が短くなるのか、尻尾も短い。


 龍人、ではないような……。


 ま、まあ。ポジティブに行こうじゃないの。




 それから少しして、回ってきた順番で余裕で止められるルスであった。




 一応その場で登録をかけておいたので、街中で……うん? 超大型種が街中で顕現とか、頭おかしいんじゃないの?

ルスは仮にも〈妬龍〉の亜種で、平均全長は一五〇メートルらしい。ルスの全長は二五〇メートルと、仙山龍の中でも最大サイズだそう。


 ノルン曰く、全てはアイリスの『お願い』で召喚したせい、だとか。


 ちなみに希少種だからこそここまで大きく、レヴィアタンは小さいんだろうと思っていたんだけど、レヴィアタンはちょっと頭がおかしい。



 全長十キロ。



 うん? え? うん。

一万メートルのサイズを誇るらしい。


 何その化け物。それでいて、一応ルシファーの側近という扱い。一応同格らしいが、レヴィアタン本人がルシファーの命令には最低限従っているらしい。


 ちなみにレヴィアタンはあくまで海の象徴。さらに陸のベヒモス、空のジズ……ん? ああ、シズじゃなくてジズか。びっくりした。三頭一鼎をなす。ベヒモスとジズもクソでかいというわけだ。


 えっと、じゃあ海の上には十キロの蛇がいて、陸には同じく全長五キロ以上のゴリゴリさんがいて、空には同じく全長五キロ超えのフェニックス。何その悪夢。

確か聖書では世界の終末に食われるらしいけど、え、何? そんな馬鹿でかいのいるの?


 ジズって確か翼を広げると太陽を覆い隠すくらい大きいんだよね?


 もう帰って良いすか? 帰れないけど。


「ルスー、なんでレヴィアタンの希少種なのにルスの方が小さいの?」

「それはですねー、主さま、レヴィ様は一頭だけの存在ですからー、私たち希少種は正確にいうと劣等種なんですよー? レヴィ様が生み出された、模倣生物って言われていますー。まあ正しくはルシファー 様が生み出されたのですがー。まずそれがレヴィ様の亜種で、その亜種が地上に適応したのが希少種というわけですー。ベヒモスとの混合種族とも言われていますが、違いますからねー? そんなことになったら私たちもっと大きいですからー」


 うん。何? ルシファーってそんなに強いの?

確か、ルシファーって一応サタンとかとたまに同一視されてたよね? じゃあサタンと強さは同等くらいでしょ? で、サタンの上にベルゼブブがいて、悪魔にして主神のベルフェゴールが。魔神ってエグくない?


「魔神様はみんな優しいそうですよー?」

「そ、そうだね……」


 うん。侵略を考えないなら優しい……んだろう。優しくあってくれ‼︎


 そう言えば魔神てソロモン七十二柱の王と七大罪の悪魔太刀で構成されてるんだっけ?

まあ良いや。あ、サタンは優しいね。あの人まじで優しかったし。


 治療魔術はふわっとした感じだった。自分で指きってかけて貰ったんだけど……。


 さて、セントパークの休暇旅行計画……ああ、旅行計画か。旅行計画で羽を伸ばそうかなぁー、なんて。



 ボクの不幸体質が邪魔しなければ良いけど……。





あ、これ多分フラグだ。



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