闇夜に紛れし閃光Ⅻ
さて、真っ向から突っ込むことになったわけだが、具体的にどこに突っ込むべきか判断しかねる。
そんなボクはとりあえず、どこへでも行ける移動式どこでも○アたるシズのもとへ向かうことにした。シズの力は転移。彼女は転移が宿っているようで、細かく場所を設定すればするほど簡単に転移できるらしい。それ故に人物に転移するのが一番楽だそう。
神の子である彼女にとっては乱雑で大雑把な方が難しく、複雑だが明確な方が楽なのだ。
これがスキルや魔術と力の差。力は自分にとって分かり易い方が楽に機能し、スキルや魔術はシステムにとってのわかりやすさ、簡潔性が高い方が楽に機能するのだ。
これはこの世界の一種の法則。まあ残念ながら転移関連の魔術はボクには扱えないし、転移させてもらうこともできない。
すべてはこの【破壊】の仕業だ。幻想を破壊する力は魔術やスキルを無効化する能力でもある。このシステム破壊の能力が能力なのかは微妙だが……。まあそんわけでボクが転移するにはシステムに関連しないシズの力に頼るしかないのだ。
「シズ、いる?」
「ん……何か、よう?」
以前の口調とは打って変わって、無口な少女。シズの見た目的には無口な方がイメージにぴったりなのだが、それ以前に見たあの口調。そして変装?である時雨の姿を知っていると、どうしても違和感を感じてしまう。第一、以前の口調と時雨の口調でも随分な違いがあったのだ。
その上さらに変えられると迷惑というか、もう困惑して放棄したくなった。そうか、放棄すればいいか。
「いや何、ジブリール のところまで、頼むよ」
「…………、少し、待って。着替える。あっち、向く」
「ハイハイ」
両手をひらひらとあげ、そのまま指示された方を向く。着替えるというよりかは消えるだけだと思うのだが、見られたくないのだろうか? あれか? たまにあった演劇的なので着ぐるみの頭とれて中からおっさん登場するやつ。
そういうのを嫌っているのだろうか? 確かに本来の見た目と変装?後の口調ではギャップがひどいし……。
いや、それ以前の問題か。
まず時雨とシズの身長は全く一致していない。
時雨は一八〇近くあるのだが、シズの身長はわずか一五二センチ。
この差に何があるのか、それを知られたくないのか……。常時転移発動でもしてどうにか身長を伸ばしているのかな?
まあいいや。どうせ知っても知らなくてもさして問題ではないし。
いつか教えてくれそうな時に聞けば、それでいいや。
「さて、ジブリール ンとこまでだッたかァ? まかせろ」
と同時。
景色がパッと変わった。
無論ボクらが移動したのだ。周りが動いたわけでも、フレームを入れ替えたような現象でもない。
これが転移。一瞬だけ暗転するのが本来だが、時雨にその辺は必要ない。この辺、さすがは〈転移の神子〉と言ったところか。
「あれ? ジブ。まだ潜ってなかったの?」
「? あ……」
どうやらなかなか気が読めなかったらしい。
まあよくわかるよ。友達に家の鍵は空いてるから勝手に入ってと言われてもどう入るか迷うよね。
え?
違うって? まあいいや。ボクはそう感じただけ。ほら、君達もやったんじゃない? 道徳の時間にさ、みんな違ってみんないい、ってさ。ボクはこう考えるだけさ。
「はあ、そんな事で一々悩むようなのに、何で騎士団長なんてできたのか気になるね」
ドアにそっと左手を触れさせる。
その瞬間。ドアは消え去った。
まず、侵入時に音を立てるのは論外。なので【現実破壊】を使用してこのドアに限り存在を破壊し、何もないドア、という常識を作り上げた。
つまり、周りの通行人がこのアジト?を見ても、ここはドアがないのが普通なんだな、と勝手に納得するのだ。ある意味システムを司っているかのような、ボクのこのスキル。
そのまま足音が出る、という現実をボクらのみ破壊し、足音を消す。そのまま気配も消す。無論ボクら同士はわかるようになっている。物凄いご都合主義な能力なのだ、こいつは。
というわけで、軽くものを倒したとしても誰かいる、と思われる事はほとんどなくなった。
なので、あとは正面突破するだけ。
「移神・クリフォト・キムラヌート+クリフォト・アィーアツブス」
移るは物質主義と不安定。
物質主義は概ねとはいえ人によって解釈が異なる故に、様々な効果がこいつにもあるらしい。
ボクの解釈は簡単。オートエイム。即物的な。つまり最も簡単に倒せる敵を倒す。そして、そのまま反転し、オート回避。
実質一種の未来予知能力へと昇華させた。
そして不安定。今の限界は二個同時なので、再代数使っているのだが、不安定と物質主義はそこまで相性がいいとはいえない。どっちかというと拒絶の方がいい。拒絶は何にでもあう。もはやマヨネーズだ。
で、ここで不安定を選んだ理由だが、下手に下位クリフォトと中位、上位クリフォトを組むと、効果が把握しづらくなるのだ。
元々融合は危険を伴う。そう易々とやれるもんじゃない。
ボクが言っても説得力は皆無だが……。
逆にセフィロト同士だと逆で、融合は楽に行える。ただし、善行のために限るが。
「どうも、こんにちは。仲間を取り返しに来ました。というわけで………」
ジブリール はすらっとしたその体に見合うレイピアを構え、
時雨はその大きな裾からまるで人の手のような凶器を構え、
そしてボクは、〈世渡りの剣〉片手に、左手半分に幻想を、もう半分に現実を破壊する力の奔流を流し、
そして始まった。
ボクの身体は丈夫にできているわけでも、ノルン並の身体能力があるわけでもない。
しかし、憤怒の感情に突き動かされたボクの身体は普段と比べ、圧倒的に早かった。
『その憤怒、見事だ。我が主人にふさわしい。ガキ、いや、主よ、力を借してやろう』
そんな禍々しい声が響くのと同時に、さらに大きな力の奔流がボクの身体を流れた。
これは……? そんなふうに思うような事は、もうやめた。ボクには奇跡や急に実力が開眼しましたなんて事はない。必ず理由がなくては成り立たない。そういう体質なのだ。だからこそ、ボクは理由と条件さえ成り立っていれば、なんだっておこるのだ。
だからこそ、もう驚くこともない。
ただ淡々と敵(的)を殺し尽くす。
食い尽くす。そのお前らが抱え込んでいる悪行ごと。全てをボクに寄越せ。お前らの悪行はボクらに名声を与えるんだ。
ジブリール が、囲まれてしまったようだ。
助けるべきか。いや、
「………、デウス!」
『承知』
ボコッッ‼︎‼︎⁉︎ と人ならざる者の、巨腕が降ってきた。
なるほど、デアはあのちっこい幼女判定にギリギリ引っかかる方で、デウスがバカでかいのか。
どうやらジブリール は問題なし。
まあ元々心配する必要もなかったんだけど。
時雨は……。もう終わってやがる。
そう思った瞬間、天井が破れ、空からどんどん悪党さんが降ってきた。いや、まさか、ね?
敵を転移で上空において、そのまま落下させた? 随分とやばい技をお持ちのようで……。
あれ? じゃあなんでボクの時は使わなかったんだ? まあいいや。
ボクが一番遅い気がする。
やっぱ、ボクってどこにいても落ちこぼれなのかも。
一瞬でもチートだと思った自分が恥ずかしいわ……。
敵を蹂躙しつつ、そう感じた。
アイリス救出まで、もうそんなにかからないだろう。
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