闇夜に紛れし閃光❽
『七星の闇』直轄特殊部隊〈Keter〉。そのリーダーである、白髪灼眼の少年。
巷では『白い悪魔』や『名前の無い怪物』で知られている、魔神族である。魔神族と魔族は違う。正式にはアイリス神族とでも言えばいいのだろうか、アイリスを祖とする、神々の家族みたいなものだ。
もっとも、厳密にはアイリスの家族というよりかは、アイリスが創造した眷族の集まりである。が、中にはアイリスの血縁もいる……かもしれない。
神とは不規則だ。姉妹が結婚し、子が生まれるなど、ごく普通の話だったり……。
それに倣い、彼、ケテルには性がない。
しかし、子を孕むことも、孕ませることもできる。性がないのだから、自然。性器もない。しかし、それでも孕ませ、孕むことができる。外見だけは本人の意思でいじれるため、無性、という範疇であれば、女のようにも、男のようにも、老人にも幼子にも青年にもなれる。
片手には姉分であるアイリスより貰い受けたカランビットナイフという刃物の改造版である、指輪型からナイフにできる特殊な武器を身につけ、その手ではバタフライナイフと呼ばれる、アイリス曰く娯楽用ナイフだそう。
その反対、左手にはセミオート式のアサルトライフルが握られている。長すぎて地面に届くかと思われるような状態だが、彼が座っている岩はかなり巨大な岩だ。それこそ、軽く五メートルはある。
まあ、その程度彼にとっては階段の段差以下の認識なのだが……。
「ッと、今の危なかッたな」
刃物への認識も、危ない、とは言っても内心ではほとんど何も感じていない。
まるで指が切れようが問題ない、というかのように……。
「そんで、なんか用か?」
抑揚のない。無感情な声が彼の後ろに殺意と共に向けられる。
「俺は確かに奴と姉は許したが、テメェが近づくことも許した覚えはねぇぞ?」
その言葉に、彼女、初雪は多少とはいえ、動揺する。
初雪の視線の先には、スッと添えられたセミオート式のアサルトライフルがあるからだ。ノールック。それが彼の気配察知能力の高さを示している。
「それは……同じ同士として……」
「あ? 勘違いしてんじゃねぇぞ? たかが同志だろ?」
「っ………」
正論と言えば正論であり、詭弁……屁理屈と言えばそうだろう。
だが、初雪にとってそれは正論であった。
彼らはただの同じ志、同一の目標を持っているから、という理由でいるだけであり、もしも運命が、アイリスや彼が動いていなければ、敵になっていた可能性すらある集まりなのだ。
それを見越してか、アイリスも彼も、全員が全員仲良くする必要はない。ただ戦闘の時だけでも協力していればいい、と言った。
それは正しかった。それがあったからこそ、ここに入ってもいいかもしれない、と。ここの隊長になってもいいかもしれない、と思うことができたのだ。
いや、そうなると確信を持っていたのかもしれないが……。
彼は、ケテルを超える天才だ。
たかが十数年しか生きていない彼が、すでにケテルを超える、というのは通常ありえない。なぜあそこまでの化け物になれるというのか……。あれは人間と呼べるようなものではない。あれが人間だというなら自分はそれ以下になってしまう。
少し前に特異点と呼ばれた、複製不可能とまで言われた帝国の『銃』を作り上げるどころか、それ以上の性能を持つものを生み出した。
帝国が何をしてたのかは知らないが、それと同等以上のものを生み出せる彼は化け物である。
そう、ケテルはあくまでも鬼灯に従っているのだ。
決して『初雪』に従っているわけでも、『初雪』の仲間というわけでもない。『七星』の直轄部隊とはいえ、正確に言えば鬼灯の直轄部隊である。それ故に鬼灯のからのお願い以外は聞く耳すら持たないのだ。
まあ『初雪』に対しては同志としてか、話くらいは聞いているようだが……。
「ンで、話は?」
あくまでふわっとした、それでいて優しい口調。
それが意味するのはわずかな仲間意識なのか。それとも自分にそう見られていることへの同情心からか……。
「……もういいです」
「…………あ?」
わけわからんといった風な彼の表現しがたい顔を見て、妙に誇らしげな顔をする『初雪』は、続きを話す。
「というのは冗談でして、主さんがフィリエル共和国の勇者を殺害しておけとお願いして来ましたよ、といいにきました。どうします? 二人でやりますか? 十五の罪徳なんて呼ばれていても、結局は二人。これからふえるかもわかりませんしね」
そう、十五の罪徳は、十五というわりにふたりしかいなかったのだ!
その理由として、もとより彼らは『七星の闇』に並ぶ実力者を集める予定だったもので、そう簡単に十五人もそろわない。というかそんな簡単にそろってたまるか、という話なのだ。
ちなみに『初雪』はアイリスの、『名前のない怪物』は鬼灯の紹介である。
この調子だと雪梅やノルンまでもが加担していきそうな。ノルンはすでに『十一人の執行官』という十一人の配下を持っている。そう考えるとノルンは加担しなさそうな……。
「フィリエルの勇者だァ? あの拍子ぬけかァ?」
「みたいわね……って、勇者は勇者でしょう? 勝手に現実逃避しないでください」
「あの勇者、今どンなもンだッけか?」
「だいたい、魔導騎士団長程度でしょう? あなたなら問題なく」
そォか、と吐き捨てるように呟き、天を仰ぐケテル。
彼は極度の面倒くさがり屋だ。事あるごとにサボりたい怠けたいという始末である。時折闘技場に参加していたが、だいたいは攻撃が通らない相手の選手がリタイアして終わってきた。それ故にその怠惰な性格は治っていない。しかし、その厳格さのようなある種の傲慢さは残っている。それがなんなのかは、『初雪』もしらない。
ケテルは一言もいわず、『初雪』の事を気にとめることもなく、フィリエルの勇者を殺すために、走っていった。
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『十五の罪徳』って名ばかりでしょうか??
8/11
あ、なんかセリフがとち狂ってたようです……(読み直しています)




