闇夜に紛れし閃光❺
「それで、痕跡が分かったからどうするのかな?」
ジブリールと広場で合流し、情報の再確認とこの後の計画を簡易的に作る。
ジブリールは天賦能力で追えばいい、と言っているが、正直この国は広いし、それだけではなく、外に行けば当然魔物はいるわけだ。さらにいえば、他国から来た場合もある。
アイリスはフィリエル共和国ではお尋ね者だ。それもかなりの額があの首にかかっているという。
ちなみにそれはノルンも同じらしく、どちらも生け捕りのみなのが救いだろう。これで『Life Or Death(生死問わず)』だったら、殺されていた可能性もある。
いやまぁ、殺されそうになれば当然抵抗するだろうし、それにアイリスは魔神級のステータス持ちだ。そう簡単に殺されはしない。
返り討ちにするだろう。
が、今回は状況が少し違う。
他国である可能性を考慮し、表に出すには絶好のチャンスであり、さらにいえば、フィリエル共和国に攫われた一般人を助け出した、という勝手といえば勝手だが、そんな功績を得ることができる。
まあそんな功績、他国……主にフィリエル共和国からすれば、賞金首を助けたという蛮行に及んだだけだ、と見えるだろうが……。
だが、アイリスはすでにこのアルカンレティアの一般人の一人だ。ありふれた人間の一人に数えることができるが、それでも一般人を誘拐するのは良くない、とアルカンレティアが明言……公言すれば少し変わるかもしれない。
まあそんなことをすれば当然外交問題に発展するだろうが……。
が、アルカンレティアはそう言った類は得意ではなく、下手につっぱねれば戦争になりかねない。戦争は構わない。まずそもそもの話で魔導騎士団を総動員すればフィリエル共和国など相手ではない。
しかし、それではダメだ。
それではただ『アルカンレティアとフィリエルが戦争した』という結果しか残らず、その上、戦争でこちら側の人権を取り戻した、と類似しただけになってしまう。
大事なのは、その戦争ではなく、『七星の闇』が助けた、というアルカンレティアと急激に関係しても問題ないための土台が必要なのだ。
アルカンレティアとフィリエルが戦争をするのならば、そこで別の方法を模索する必要性が出てきてしまう。しかし、それは共闘の必要のない戦争であり、下手をすると冷戦になってしまう可能性もある。まだ冷戦のほうが楽かもしれないが……。
とりあえず、ジブリールは国王代理、という扱いであるため、天才、と呼ばれたジブリール がこんな簡単に引っかかるわけない、と企みを暴かれてしまう可能性すらある。
そんなことをすれば、ジブリール の評判だけではなく、魔導騎士団の評判までもが下がり、アルカンレティアからの追放もあり得てしまう。
それを避けるために、出来るだけこちら側だけが一方的にフィリエルとか変わらなくてはいけない。
さらに、アイリスは助けられたことが理由で加入したことにしなくてはならない。そうしなければ、簡単にバレる。
「そうですね……とりあえず私の『機械仕掛けの神』を呼び出して、痕跡から何かわかるか調べさせます」
そう言いつつ、ジブリール は自分の左腕をなんと言ったこともなく、普通に斬り捨てた。
そしてその斬り捨てられた腕は、ビクンッ、ビクンッ、と痙攣をしながら、だんだんと形を変えていく。
質量保存の法則なんてガン無視。
そこにいたのは、普通の少女……といっても外見は機械でゴテゴテ装飾したかのような少女である。そんな少女が現れた。
識別番号かのように、頭についていた機械には『まきな』と書いてある。いや、彫ってある、というべきか……。
その服装は……何も身につけていない。
しかし、その装飾である機械が要所要所をきちんと覆い隠している。
というか、当たっている機械、痛くないのだろうか?
それとも、神、とつくだけに痛覚などないのか……どちらにせよ、この少女が異常なのは黙認した。
「この子は私の天賦能力のうち、片割れです! えっとですね……」
「痕跡……フィリエル共和国の」
「……………優秀なのは知ってるって……‼ 説明くらいさせてよっ‼︎⁉︎」
「…………ドヤっ」
「ドヤっ……じゃない‼︎」
なんというか、ある意味自分自身に振り回されてはいないだろうか?
天賦能力とはその〝魂〟に根付いている能力であり、持ち主が転生しようが、どこかに行こうが、きちんと残ってくれるのだ。まあ……そう言ったシステムとやらがない世界ではダメらしいが……。
と、文献で読んだのと、ノルンが教えてくれた。
暇さえあれば、ノルンにこちらの事情や他にある世界の事情を聞いてきた。知識には自信がある。
まあ裏を返せば、今は知識にしか自信がない。
やはり、ジブリール も変人なのだろう。
フレアもMっ気のある人だと言っていたわけだし、どうやら真面な人間はいないようだ。
まあそんなことを言ってしまうと、時雨はあの服を着ている時だけは身長が圧倒的に伸びているし、ノルンは反物質だし……。
変な人以外がいるわけない、と言ってしまった方が早いかもしれない。
「それで、フィリエル共和国のなんだよね?」
「ん」
「そっか……さて、あとは賞金稼ぎを特定すればいいわけだけど……」
「ちがう……痕跡……私……わかる」
「ジブリール 、この片言少女はどうにかならないのかな?」
「うぅ……ごめんなさい……」
自覚はあるらしい。
それでも、天賦能力はその〝魂〟の最初の状態、つまりは初期状態にどんなふうに行動したか、どんな人間を愛したかで、決まってしまう。
ボクも行動に気をつけなければ、【破壊】と〈奪命剣〉が変な人格になって欲しくない。
まあまずそも人格を得ることのできる能力だとは思えないが……。
「賞金稼ぎの痕跡だというのを忘れてないかい?」
「ケヒッ、バカらしいな。それでも知識に自信あるのかァ?」
ノルンと時雨が合流したようだ。
というか、〝賞金稼ぎの痕跡〟……なるほどね。
つまり、フィリエル共和国の痕跡ではなく、その根本……問題の発生源の痕跡だということか……。
「理解速度が早くて何よりだね。それともう一つ……」
ノルンはやはり切れ者だ。
そういえば、切れ者は変人が多いと聞くが……。まあ、間違ってはいない……かな?
「ノルン、もう一つ、ここで解決するとしたら、雪梅のことじゃないのか?」
「正解っ!」
パチン、と指を鳴らし、そのままこちらに人差し指を向けてくる。
上機嫌だなぁ、と思っていたら、上機嫌というより、殺戮欲に近いものが出ているようだった。
なるほど、確かにこいつら、殺しを楽しんでいる節が……ないだろ……。
え? 何? こいつそんなにやばかったっけ?
そこまでか……。
まあいい。作戦はどうするか……。
アイリスとの連絡手段がない。そのため、アイリスが今どこにいるかもわからない。
いや、正確にいえば、マキナがいるからどうとでもなるのかもしれないが、それでも確証は薄い。その痕跡はあくまで一定時間しか効果を出さないそうだ。
少し語彙力がなかったか? まあ端的に言ってしまうと、痕跡をたどらせることができるのも一定時間、ということだ。
具体的には三日間。
すでにあ二日。ただ、あくまで知らせてからの話であり、また新しい痕跡か、それかアイリスの髪の毛でも渡せばまた探せるだろう。
それを繰り返していけば、確実だ。
さて、フィリエル共和国。
どこまでの闇を抱えているか……。
ここで喰われるか、それとも喰らうか……。
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