第三話 組織結成/弐
やっぱり2000字が妥当。
たまに4,000字になるかも……。
僕が誘いたい人間、それはフレア、と言いたいところだが、残念ながら別の人だ。
一度だけ文献で読んだことのある人物。
アルカンレティアに巣食う巨魔とも虚魔とも呼ばれている人物。
〈初見殺し〉時雨。
そんな異名で呼ばれる、アルカンレティアの裏側の住人。
所在地、活動範囲、その姿を見たことのある人物、これらに関する情報……ほぼゼロ。
もし、出会えたとしても、話しかけずに立ち去ることをお勧めする、と。
そう本には綴ってあった。というか、本に出るとか、どれだけ生きているんだ?
その性別は声から女性だとされているが、実のところ、わかっておらず、僕は中性と見做している。
ちなみに、本名も不詳。
その能力が時に関連している可能性があり、その上で雨のように絶え間なく続く攻撃からこの名で呼ばれているらしい。
僕の狙いはソイツだ。
魔導騎士団ですら手を焼く存在。
そういえば、レベルが絶対という僕の考えは違った。
ダメージがゼロになることはなく、最低でも小数点となるそうだ。それに、クリスやアリスを見てわかったが、個人差がある。
個体差もあるらしい。
実質、レベルというのはあくまで一定の物差し。
体力……HPもあくまでここまで減るとやばいよな物差しだそうだ。HPが残っているのに死ぬ、とかゼロなのに生きている、というのもあるらしい。
怖いな……。
「あ?」
パシュッ、と。
何事もなかったかのように、一閃。
まるでそれが当たり前だ、とでもいうかのような、綺麗で、自然な一閃。
それが命を救った。
飛んできたのはカランビットナイフを改造したような、そして付け根に鞭のようなもので操れるものがある、不思議な武器。
間違いない。
コイツだ。
青と黄色を基調とした、顔の見えない、縦に細い蟹のような服装。
名を……
「出たね、時雨」
「ヒヒッ。人様の家に土足で踏み込んどいて何いってやがる」
頭に直接流れ込んできたような、高い声。
騒々しい金切り音にすら感じられる。コイツ、声帯をいじっているのか?
次の瞬間、トッ、と。胸に違和感があった。
ス、とまでは行かなかったが、もし後ろに全力で逃げず、余裕ぶっていれば……。
「あんれェ。おっかしいなァ。確かに心臓とったと思ったんだけどなァ……」
チッ。
胸部の肉を少し持ってかれた。
それも、中の肉だ。外の皮とかそっちじゃない。体内の肉を、だ。
体内で出血が起こっているとすれば、即座に治療しないとまずい。
現にステータスを見ると、HPがガンガン減っている。
グィ、とポーションを飲み、強制的に治す。あまりこのやり方はよろしくないそうだ。どうやら、身体に負荷がかかるらしく、初代魔神を倒した不死身の勇者は回復薬の中毒となり、すっているタバコに回復薬の原料である『レフリヘリオの薬草』を混ぜた、特別製のを吸っていた。いや、吸わなければ死んでしまうような、そんな感覚に襲われてしまうという。
寝ることすら許されない。
だが、多少の我慢。
今はまだ大丈夫だ。もっと短時間にガバガバ摂取すれば話は別だが……。
「お前、強いなァ」
ローブ?で隠された瞳がギラギラと光っているような気がする。
見えないからわからないが、まずい。
コイツ、ノエルですら足元に及ばないんじゃないか?
フレアでもトントンとはいかない。人蹴りされて終わる、そんなレベルだ。
S級の枠組み? バカらしい。コイツ、神クラスじゃないのか?
ノルン曰く、神クラスの存在がたまにいる、とのこと。通称『超級』。
またの名を……
「これが……神子……」
「ヒヒ、いい加減諦めろ」
何度も何度も、この間攻撃を浴びせられた。
休む暇が本気でない。どうしようもないが、単調的だ。
〈初見殺し〉が『初見』を殺せていない?
成長不足、知識不足、実力不足、どれだ?
乱撃を使えないのか?
コイツなら乱撃を覚えればさらにやばくなると思うんだが……。油断は禁物。
温存しているかもしれない。
右手で、奴の武器を弾き返す。
「ッ‼︎‼︎‼︎⁉︎」
奴が武器を壊され、後ろに大きく、そして低めにジャンプする。
上手い。そして無駄がない。足を伸ばせば地面に届く程度でジャンプし、好きを少なくする。
戦い慣れては、いる?
じゃあ、なぜ?
もしかして……
「おい、お前、今何をした」
俺の手にかかれば、あんな鈍、壊すなど造作もないさ。
なんて嘘です。すべては【破壊】のおかげ。
【破壊】は体を二等分して、その二つに〈幻想〉と〈現実〉のどちらかを破壊する力を片方ずつ与えてくれる。
ただ、僕の場合は凝縮させ、腕に限定している。
制約だ。
今は〈現実〉を右にセットしている。
そのため、剣や盾といったただの武器は俺に通用しない。
鈍未満だ。
反撃開始といこうじゃないか……。
§
反撃開始。
と言っても、やはり基本は防御主体。
それ以上はかなり難しい。
攻撃に回ろうとすれば、心臓を取られそうになる。
どんな攻撃かわからないし、その上、取られれば終わりなのだ。
簡単には攻撃できない。
「攻撃を続けりゃァお前は攻撃できねェんだよ‼︎」
その通りだ。
悔しいが、応援が欲しい。仲間三人しかいないけど……。
ふと。
気がついた。
「君のそれってさ、魔術かスキルなんだよね」
「教えると思ってるのか?」
ま、答えるわけないよね。
だから、試す。
代償は、命。
しくじれば、すべてパアだ。
やってみるだけの価値はある。
さて、賭けてやろうじゃないの。この命。




