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第十四話 スタンピード第一波


 スタンピード開始の合図。

開始というと大海な雰囲気が出てしまって、緊張が少し緩んでしまった。


 フレアさんにあの対応はないなぁ、と後になって思ったが、今は目の前のことに集中しなくてはならない。


 あとで謝れば済むことを、ネチネチ引きずるのはやめなくては……。


 ギルド長が前衛に向かい、俺はフレアの案内で中衛に向かう。

まだ準備段階。


 ギスギスとした、緊迫の空気に、誰もが口を開かず、今にでも魔物が出現しても大丈夫なよう、ずっと武器を構えている。


 俺も倣って構える。


 出てくるのはまだか……。

精神が自然に緊張と危険ですり減っていく。


 ダメだ。集中がもたない。

どうしても崩してしまう。しかし、そうしていられる時間自体が少ない。すぐに戻さなければ、死ぬ可能性があるのだから……。


 片手にあの木剣を構え、襲いくるだろう敵がどこから来るかを予想する。

それ以外何もできない。したらしたで陣形に問題ができる可能性がある。


 好き勝手に動けるのは戦闘開始から。

それまでは動かない。動けない、というのが正しいか……。





「こっちだ‼︎」




 大柄な重装備な戦斧使いが声を張り上げて叫ぶ。

そこでは深層からわらわらと魔物がやってきていた。


 スタンピード中、魔物の深層からの出現は、構造と全く関係なく動く。

ダンジョンが溜まりに溜まった地脈を発散できるだけ発散しようとするため、ダンジョン構造をある程度無視させる。


 無論、侵入者には容赦しない。


 さて、第一波が始まったか。






§






一波の開始と同時に、俺は木剣の鑑定結果にあった能力【象徴の(シンボリック)】を予め発動しておく。


このスキルのおかげで、低確率とはいえ、一撃必殺となってくれることがあるのだ。

まあステータス差があるとできないわけだし、INTが低いと大した威力にならない。


 それでも、今の俺ならば四万位は一気に削れる。

固定ダメージということもあり、効果はかなり高い。


 パギャッッ‼︎‼︎⁉︎ という木剣にあるまじき音が響き渡り、現れた魔物を一掃する。

確率制であるがゆえに、その発動は読めないが、それでも賭けに出られるわけだ。


 その代わり、クールタイムとして三十秒かかる。

とりあえずかなり倒せたのだし、少し休ませよう。


 俺は市販の剣に取り替え、魔物と戦う。

木剣なので、どうしても耐久力が減ってしまう。《神木の枝》であるがために耐久も攻撃もまあまあ高いが、それでも所詮は木。


 炎属性に弱い上、今はフレアさんまでいる。

巻き込まれでもしたら木剣は一溜まりもないだろう。


 近くに現れたフォレストウルフに斬りかかる。

まだ前衛に余裕があるのか、Bランクは現れていない。


 目の前のフォレストウルフはCレベルだ。ランクではなく、レベルとしてはCランク相当の魔物、という意味である。


 結構強いのだが、それでも所詮、元がD程度のステータス。

ステータスをS・A・B・C・D・E・Fで分ければ、D。その程度。それをレベルで補ったに過ぎない。


 数撃で片付けられるが、裏を返せばこの程度でも数撃。




 これから現れる魔物はもっと強いだろう。




 対応し続ければこちらの自滅に繋がってしまう。

ダンジョンは地脈に溜まったエネルギーを発散する時、周りの環境には配慮しない。


 爆発するダンジョンもあるくらいで、下手をすると発散し終わるまで、永遠とダンジョン自身が動く、という動く城のようなダンジョンもあるくらいだそう。

そう言ったダンジョンは圧倒的に数が少ないそうだ。


 何せ危険ゆえに、コアを破壊して消滅させられてしまったため、絶滅の危機に瀕しているとか……。


 それと比べると、やはりこのスタンピード、という発散の仕方は安全な方ではある。

が、それはあくまでダンジョンが、であり、こちら側、他の生命からすれば厄介極まりないスポナーに見える。


 ちなみに、ダンジョンコアを破壊するのはリスクあるため、本当の意味での最終手段であり、それはそこに埋まっている地脈によって発生する恩恵や影響を放置・放棄することを意味する。

行えば、最後。溜まった地脈から龍が一度に何十と発生することもある。


 だからこそ、冒険者や国は総力を上げてスタンピードを阻止しようとする。


 それにしても、一波がかなり長い。

フレアさん曰く、一波は大体三十分も続かない。そのはずだった。


 すでに一時間戦い続けている。

俺以外の冒険者も、かなり消耗しているだろう。


 前衛が抑えてくれなければ、すでに戦線は崩壊。

俺も〈奪命剣〉の奪命効果がなければ、すでに死んでいた。


 ちなみに、向かってくる魔物を殺し続けた結果、ステータス補正値がかなり上昇し、並の魔物はワンパンになった。

ただ、同種の魔物からは五匹までしか搾取できず、すでに上がらなくなっており、きつくなってきた。


 これ以上は死ぬ可能性すら出てきた時、中衛の中でも最前線で戦っていた冒険者や騎士たちが走ってやってきた。


「第一波が終わったぞ! 各自休憩‼︎」


 ようやくだ。

一時間という時間の中戦い続けた冒険者や騎士たちがその場で座り込む。


 俺も例に漏れず。


 唯一、フレアさんだけが立っていた。

やはり、何かを隠している。


 炎魔術だけを使っていれば燃費はいいけど……。


 フレアさんは自ら見張りを買って出た。

その間、俺たちは休む。


 そうしなければ、次の戦いで戦線を維持できないし、死ぬかもしれない。


 何度も死ぬかもしれない、と思っていたが、本当の意味で死ぬかもしれないのは、これから先の戦いかもしれない………。





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