第十二話 スタンピードの計画
俺の目の前にいる、王国から派遣された、という騎士団や魔術師団たち。
当然、育成のチャンスとばかりに王国も勇者を派遣してきた。つまり、俺の読みが甘かった。
スタンピードとは大規模な災害の一つ。
それでいて、一つの国が総力をもってすれば、大抵は退けることができる。
それならば、勇者、という極大戦力を入れるのは当然と言えば当然だったのだ。
もう仕方ない、と割り切るしかない。
あっちはこっちに気付いていないのだ。
あいつらが出るのは前衛。対して俺はあの三ヶ月でCまでしか上がっていない。それ故に中衛あたり。
だとすれば、あいつらとかち合う可能性は極めて低い。
ならばそれを利用して、この場から立ち去り、あいつらが前衛に行った後に中衛に向かう。
前衛とはいわば、生まれたばかりの魔物、ではなく、生まれた魔物の中から出た強力な魔物を狩る、という役目である。
実力的にも俺は中衛に甘んじるのが一番だ。
後は中衛に行くことをフレアさんに伝えれば完璧だ。
「フレアさん、俺らは中衛にしましょう」
「え?」
「いえ、ちょっと問題が発生しまして……」
「? 問題なんてないはずよ? だって……」
気遣ってくるのは、毎回ありがたいと思っています。
ですが、違うんです。
「人間関係の問題です」
「…………」
こればかりは、フレアさんにも、どうしようもできないし、させません。
それだけいうと、俺はその場を立ち去る。
フレアさんには悪いが、貴方の夢は切り捨てさせてもらう。
あいつらとの接触は避けたい。
危険だ。何が起こるかわからない。
サーシャ様の陣営が収まっているとはいえ、他は収まっていない。どころか、俺を始末しようとする輩がいるほどだ。
ちなみに、情報を提供してくれているのはノエルだ。
ノエルは俺に対し、最後の恩義として、俺に王国……王城内での問題を教えてくれる。
一種のリーク。情報屋だ。
ノエルは王国のメイドとしてではなく、ただの一個人として助けてくれているのだ。
期待に応えなくてはならないし、情報を無駄にするわけにはいかない。
ならば生き残る。
ノエルが殺し屋なら勇者を陰ながら殺してもらいたかったが、そういうわけにもいかないし、あいつらがいなくなれば世界の保たれていた均衡が崩れるそうだ。
それ故に、俺は何もできなかった。
というか、さっきからやけに頭がまわるな。
高揚感でも出始めている。
嬉しいというのだろうか、災害が……。
それよりも、大事なのは戦略だ。
相手の、スタンピードの規模と中衛に出現する魔物の強さを想定しなくては……。
情報的には中衛ならBが出るかどうか。
だが、フレアさん曰く、今回は普段よりも異常性が高く、Bが平均となる可能性があるそうだ。
つまり、最初から全力で挑まなければ、即死ぬ。
その上、温存も必要となる。
スタンピードのボスは基本的にAが出る場合が多いが、大抵その中でも下位の方が出る。
しかし、今回は同じく異常。Aの上位が出ることを想定しておいた方がいいかもしれない。
俺の戦力的に、Bを二体相手にできるかどうか程度。
体力面の心配は要らないし、〈奪命剣〉のおかげで、初めて倒した魔物のぶんレベルアップ時のステータス上昇がその魔物分ふえ、実質一度勝った魔物にはほぼ負ける可能性が低い。
ならば、出てきた魔物を一種ずつ狩っていき、そのついでに他の魔物を狩る。
これを繰り返せば、勝機はある。
一応ギルド長も参戦してくるそうだし、最悪の場合は騎士団長や魔術師団長が参戦してくれる。
あの二人が来るだけでかなり違ってくるから、できれば最初からいて欲しい。ただ、そんなことをすると、隙をついて組織が介入してくる可能性があるため、軽々と腰を浮かせられないのだ。
まあ他に理由があるかもしれないが……。
実質戦力としてはA相当がギルド長一人、B相当が大勢。
こんなふうに考えておくといいかもしれない。
勇者の戦力は未知数。
あいつらはカウントしない。カウントする気にもならないが、未知数なのは本当だ。知っているわけがない。
教育を担当しているサーシャ様に進捗状況を聞いてもいいが、拗ねているというか、機嫌が悪いというかで、話さない方がいい、とノエルから言われている。
厄介だが、それならば仕方ない、と思っているし、知らなくても問題はほぼない。
後は俺がスタンピードで生き残るために何が必要か、か。
最終的な切り札はあれで決定でいいだろう。
さて、始めるか……。
サイレンの音がけたたましく鳴り響き、冒険者協会とダンジョン管理協会のどっちものロビーを照らしていたライトが赤色に染まる。
緊急時にのみこうなるらしい。
不吉な合図。
それとともに。俺はフレアさんのところに行き、戦場に向かっていく。
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