第5話;【湖の主】×2=一軒家
フォルセの街に帰ってきた僕たちはその足でギルド支部に立ち寄った。
中に入ると、昼過ぎということもあり、朝方の喧騒とはかけ離れた静寂が広がっていた。
所々に居るのは朝の依頼争奪戦に負けた人や依頼を終えて報告に帰ってきた人達だけだ。
その人達を横目に僕達は受付へ向かう。声を掛けるともう見慣れてしまった営業スマイルを見せる。
「こんにちは!依頼でしょうか?」
「いや、報告をしたいんですけど、支部長は居ますか?」
「支部長ですか……それはまたどの様なご要件で?」
受付嬢が怪訝な顔で僕を見る。そういえば最近用事も無いのにギルマスや支部長を呼び出すイタズラが頻発しているって噂を耳にした。僕もその一端だと思われているのだろう。
「【湖の主】の件と伝えて貰えれば分かると思うんですけど……」
「【湖の主】ですか……分かりました、支部長に報告しきます」
受付嬢は持っていた筆を置いて、足早に後ろの階段を駆けていった。
待つこと数分―――
2階から慌ただしい足音が聞こえ、それは下に降りてきた。
僕達の前にやって来た40代くらいの男性は息を切らしながら話しかけて来た。
「ハァ、ハァ……君が、ハァ、フェイ君、だね?ハァ、ギルマスから、ハァ、ハァ、話しは聞いているよ……」
相当慌てているから余程走って来たんだろう。そんな支部長に僕は水を差し出す。
ギルマスは直ぐに1杯を飲み干して、落ち着きを取り戻す。
「やぁー、済まないね。あまりの知らせに嬉しくて飛んで来てしまったよ」
そう言うと、僕の肩を掴んで嬉しそうに前後左右のあらゆる方向に揺さぶる。
「ありがとう、ほんとありがとう……」
その目には薄っすら涙が溜まっている。そんなに嬉しい事なのか僕には分からないが、こっちには計り知れないものが有るのだろう。
「この依頼はね、1年前に突如として現れてからずっと未達成の依頼だったんだ。何度も優秀な冒険者達が挑戦したのだけど悉く失敗を重ねていってね……そんな時に舞い込んできたのが君の【湖の主】討伐の知らせだよ。いやー、ほんとギルマスに頼み込んで良かったよ」
余程手こずらせてきたのだろう、その話口調から今までの苦労が感じ取れる。
「それは良かったです。役に立てて何よりです」
「あっ、そうだ」
ハッとして何かを思い出した支部長は一度裏へ戻り、数分してまた戻ってきた。その手にはパンパンに膨れ上がった麻袋を持っている。
「これは報酬の金貨500枚だ、受け取ってくれ」
「えっ……そんなにですか?」
一般的には金貨1000枚で立派な一軒家が買えると言われている。500枚はそれの半分なのでかなりの額だ。それに……
「【湖の主】の素材って買い取りしてもらえるんですか?」
まだ素材が残っている、これも買い取って貰えるならかなりの儲けになる。
「勿論それは出来るけれど何処にあるんだ?」
「ここに有りますよ」
『空間収納』
僕はそう言って何も無い場所から【湖の主】の一部を取り出す。
「そ、それは……超レアスキルの『空間収納』では無いか。それだけの実力がありながらそれ程レアスキルを持っているなんて君は一体……?」
「まぁ、隠しておきたい事だってあるんですよ」
僕のスキルに関してはまだ話さない方が良いだろう。
「そ、そうか、残念だ……」
「それで?何処に素材を持っていけば?」
支部長は完全に頭から抜け落ちていたようで少し何の事か思い出せていなかった。
「あぁ、素材はこのギルドの裏にある作業場に持っていってくれ。そこで素材の解体と査定を行うから」
「分かりました、じゃあ今から持っていきますね」
そう言って僕達が作業場に行こうとしたその時、支部長が僕達を引き止めた。
「フェイ君……少し『お願い』が有るんだが……」
ここに【湖の主】討伐以上に難易度の高い依頼なんて無かった筈だけど……
「ある依頼を受けて欲しいんだ……それは『ペット探し』なんだ……」
「『ペット探し』!?」
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