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第3話;【湖の主】討伐依頼 その2



僕は早速『鑑定』してみる。




《湖の主 アングス》


スキル:不明



不明?こんな事は初めてだ。今まで何かしらは見えていたのに、コイツはスキルの1つすら分からない。


余程の格上なのか?それとも別の何かなのか?全くもって検討がつかない。


だがここまで来て引き下がる訳にもいかない……何としてでも倒してみせる!


希望が無い訳ではない、僕はこの半年間で『天秤座(リブラ)』の第三階位を開放させた。名前は付いておらず、効果だけが分かるようになっていた。


・第三階位


『  』  ほぼ全てのスキルを使用可能にす

      る。


この階位を開放した僕は、世界の理を超越した者となった。だがこういう存在は僕だけに限った事ではないらしい。俗に言う『Sランク冒険者』は、世界の理を超えた者ばかりだ。


それでも「lv,80なのにスキルが11個」みたいな感じなので、ほぼ全てのスキルを使える僕はもう一段階上の領域にいる事になる。


今はその可能性に賭けるしかない。


僕は使用するスキルを慎重に選定し、発動させる。


『バーサーカー』『思考加速 大』『身体硬化 大』『武器硬化 大』『付与:(エンチャント:)(フレイム)


硬化系統のスキルによって僕の剣と体はミスリルとほぼ同等の硬度を得た。そして『付与:(エンチャント:)(フレイム)』により炎属性が付与され、その刀身は轟々と燃え盛り、少しでも気を抜けば辺りを焼き尽くしてしまう程の勢いだ。


準備が粗方終わって、改めて湖の主と対峙する。


改めて見るその姿には王者の風格が感じられる。


心の中までも見透かされているとまで錯覚させる真紅の瞳、見るだけで何者でも呑み込んでしまいそうな漆黒の体表、何よりも対峙するだけで気圧されてしまうそのオーラ。


僕は自然と体が萎縮してしまっていた。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


緊縛された体を解放する為に気合を入れて大きく1歩を踏み出す。


そのまま地面を抉り取る様にして踏み込む。そこから生まれた超加速によって瞬く間に《アングス》まで近づき、勢いそのままに斬りつける。


しかし斬れるどころか傷も付かず、剣は皮膚を滑るようにして往なされた。


『天歩』を使いすぐさま空中で体を切り返し、再び斬りつけるがそれでも、金属と金属が当った様な甲高い音を立てるだけでやはり傷は付かない。


そのアングスが動いた、ほんの僅かに。その兆候を見た僕は後ろに引こうとするが、それは予想以上に早くやって来た。


《アングス》の体表から紫色の霧が吹き出し、辺り一帯を染め上げる。


すぐに息を止めようとしたが僅かに遅く、体内に取り込んでしまった。それは1秒もしない内に体内を駆け巡り、効果を及ぼす。


体が動かない、それどころか喋ることすらできない。『状態異常回復』というスキルがあるが、間に合わない。今はただ重力に身を任せ、湖に落ちるのを待つだけだ。


湖面が目と鼻の先の距離まで迫ってきたその瞬間、湖面に風が駆け抜ける。セロの風魔法だ。


(あとは任せておけ)


(すま、ない……あとはたの、む……)


僕は最後の力を振り絞り、『状態異常回復』を使う。そして僕は……意識を手放した。




 ◇◇


重い瞼を上げると、空は赤く染まっていた。一体どれ程の時間が経ったのだろうか……


そうだ!セロは?


微かに戦闘音が聞こえる、まだ戦っているらしい。僕は上手く動かない体を無理やり起こしてセロ達の方を向く。


そこにいたのは僅かに消耗したように見える《アングス》と、白い毛並みの所々が赤く染まっているセロの姿だった。


セロは風で創った鉤爪を《アングス》に振りかざす。《アングス》はそれを寸での所で躱し、尻尾でセロの腹に打ち込む。そのまま数十メートル吹き飛ばされて、木を何本かへし折った所で止まった。


セロが動く気配が無い。『念話』にも応答しない。間違い無くセロは気絶させられてしまった。


それでも《アングス》は攻撃の手を止めない。大きく口を開けている。そこに急激にエネルギーが集められ、轟々と燃え盛る火球が形成された。更にエネルギーが高まる。後数秒も経てば、あれがセロに向かって放たれる。


「止めろぉぉぉぉ!」


僕は咆える、だが《アングス》は見向きもしない……


そして火球が放たれる。


その刹那―――僕の中からエネルギーが溢れ出る。


(な、何だこの感覚は……?)


体が軽い……手も……足も……今までより動く……


(これなら……)


僕はさっきと同じ様に、『バーサーカー』『思考加速 大』『身体硬化 大』『武器硬化 大』を発動する。


そして全力の一蹴りでセロへの射線へ割り込む。僕の体に火球が直撃する。


「グッ……止まれぇぇぇぇ!」


更に『魔法障壁』も展開する。そうすると火球の勢いが目で見て分かるほど減衰した。そのまま僕は火球を《アングス》に向かって押し返す。


突然の出来事に対応出来ず、押し返された自身の火球に襲われる。


《アングス》が少し怯む、その間に武器に『付与(エンチャント)』を施す。


「『付与:(エンチャント:)(ホーリー)』!」


何故〈聖属性〉を付与したのか自分でも分からないが、それが最適解に感じた。


刀身は驚くほどの輝きを放ち、その存在感を示す。僕は剣を構える。


そして『天歩』で空を駆け抜け《アングス》を斬りつける。


すると体は真っ二つになり、大きな音を立ててピクリとも動かなくなった。


「勝った、のか……」


全てを出し切った僕は覚束ない足取りでセロの所に戻る。


僕はセロに右手を突き出し、スキルを発動する。


「『回復(ヒール)』」


淡い光を放ちながら徐々にセロの傷が消えていく。


「スゥー……スゥー……」


どうやら眠っている様だ。


全てが終わり、安心した途端に疲労が押し寄せてくる。僕はゆっくりと瞼を閉じて、体の力を抜いて眠りについた。



 ◇◇


僕達が再び目を覚ましたのは次の日の朝だった。


《アングス》の討伐証明部位を取って『空間収納』に入れる。『空間収納』とは、中は時間が止まっているから食料を入れても腐らない、何を入れても大丈夫な便利スキルだ。


そして依頼を終えた僕達は「フォルセ」に戻る為に来た道を歩き始めた。


30分ほど歩くと魔物の気配を察知した。この森は魔物が生息していない筈、何かおかしい。


「セロ、行ってみよう」


「了解した、主」


道から外れて数十メートルほど進んだ所に少し開けた場所があった。


そこに居たのは数体のオークと、その中心に倒れている一人の少女だった。



面白いと思ったら是非、評価、ブックマークの方を宜しくお願いします。


感想、アドバイス等も受け付けておりますので、どんどんと書いて頂けると有り難いです!



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