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第10話;冒険者になった





「ちょ、ちょっと……今何をしたんですか……?」


「えっ、何って首筋に一発入れただけですけど……」


「いや、そうじゃ無くてどうやって後ろをとったの?それに私には瞬間移動したようにしか見えなかったのだけど……」


「そんなことはありませんよ。ほら、あれを見てくださいよ」


 僕が指指した先には、ヒビの入った壁があった。


「恥ずかしながらまだ細かい調整ができないんで壁を使って後ろをとりました」


 受付のお姉さんは魚の様に口をパクパクさせている。


「あ、有り得ない……そもそも知覚出来ない速度で動く事ですら意味が分からないのに、壁にヒビを入れるなんて……あれは上位の魔法でも傷が付かない代物なのに……」


 あぁ、やってしまったかな……話題を変えなくては……


「それで僕は合格なのでしょうか?」


「えっ、ええ……恐らくね……でも決めるのは私じゃなくて試験官ですから……」


 僕は試験官を見る。そろそろ起きる頃だろう。


「う、うぅ……一体何が起きたんだ……」


「それは……」


 僕がさっき説明した事を僕の代わりにお姉さんがゼダさんに話した。


「はぁ、まさか負けるとは思はなかったな……まぁいい、フェイ=ローレン、合格だ。これからしっかり頑張る様に」


「ありがとうございます!」


 こうして僕は晴れて冒険者となった。





 ◇◇


 僕達は受付があるロビーまで戻ってきた。


 試験の前よりも幾らか人の数が増えている。


「おいアイツだってよ……」


「マジかよ、まだ子供じゃねぇか」


 既に僕の事が噂になっているらしい。何でもゼダさんを倒した新人は僕が初めてなんだそうだ。


 それを横目に見ながら受付に向った。


 僕が受付の前に座るとお姉さんは1枚のカードを取り出した。


「これがフェイ君のギルドカードとなります。再発行にはお金がかかりますので無くさないようお願いします。それとギルドのシステムについての説明はお聞きになりますか?」


 ある程度は〈天の声さん〉に教えられたが、一応聞いておくか。


「はい、お願いします」


「まず、冒険者ランクというものがあり"S〜E"ランクまであります。フェイ君は最初なのでEランクからスタートです。依頼にについてはあちらのボードから好きな依頼が書かれた依頼書をこちらの受付まで持ってきて下さい。そこで依頼書を渡したら手続きは完了です。依頼は自分のランクの1つ上までしか受けられません。それと依頼に失敗した場合は違約金が発生いたしますのでご注意下さい。最後にランク昇格の方法ですが、特に試験などはございません。依頼書を見てもらえれば分かりますが、ポイントが書かれてあります。そのポイントの累積が一定以上になれば上のランクへ上がる事ができます。ポイントのランキングは毎週貼り出されますので、是非ランキングに載れるように頑張って下さい」


 ポイント制ってのは知らなかったな……


 それ以外は殆ど教えてもらった事と一致している。


「分かりました、ありがとうございます」


「今日から依頼を受けられますがどうしますか?」


 僕は少し悩んだが、焦っても仕方ないので今日の所は休む事にした。


「いえ、明日からにします」


「そうですか、分かりました。ではまた明日お越しください」


 話が終わって僕はさっとギルドを出た。


(そういえば受付のお姉さんを見るの忘れてたな……)




 フェイがギルドを出て行った後―――


「ゼダさん、一体何が起きたんでしょうか……」


 こう話すのはギルド本部の受付嬢のリルア=スローンだ。


「分からない……俺にも何も見えなかった……この道は長いがあの年であれだけの強さを持っているのは初めて見た。やっぱりスキルの事を聞いたほうがよかったのか?」


 こっちはこのギルドの幹部であるゼダ=フォルンだ。幹部というのはギルドマスターの一つ下の役職である。


「いや、でもそれはプライバシーに関わることですし、あまり聞かない方が良いんじゃないですか?」


「確かにそうだな……アイツがどう成長していくのか楽しみだ」






 僕はギルドでの試験を終えた後、いつも来ている平原へやって来た。


 ここに来たのは特訓の為だ。


 やはりまだ『バーサーカー』を使った状態では上手く動けない。特に7割以上の出力を出せばだ。


 今日のだって壁を使えたから良かったが、それがなければどうなっていたか分からない。

 

 だからこうして来ているわけだ。


 よし、始めようかな。


 僕は『バーサーカー』を発動させて動き始めた。今からやるのは動きながら徐々に出力を上げていく特訓だ。


 そこからは思考錯誤の連続だった。〈天の声さん〉の知識を使い、様々な身体の動かし方を覚えて、それを試す。こんなことの繰り返しだった。


 それでも成果は徐々に表れてきた。


 止まれなかった所で止まれるようになり、曲がりたい所で曲がれる様になった。


 だが夜通し特訓していた為に疲労はピークだ。


「少ししか寝れないが一応寝ておくか……」


 そう思い、疲れた身体に鞭を打って宿屋まで帰るのであった。

 

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