第81話:過去の歴史へリモート接続してみたら、太古の恐竜や古代人がハーブティーでほっこりしていた件
「はぁ〜……全次元の窓口が繋がって、モニターの景色もますます賑やかになったなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドの上にうつ伏せになり、膝の下に特製クッションを挟み込みながら、ハーブティーの湯気越しに画面を眺めていた。
室温は年間を通じて22度、湿度は55%。
足元からは床暖房がじんわりと温かさを届け、膝の横ではシャドウキャットのミミが「スースー……」と幸せそうに丸くなっている。
自室のベッドは全多次元宇宙の『絶対中央主軸』となり、画面の向こうでは神様も宇宙人も魔王も、みんな部屋着でお茶を飲んでいる。
現在に生きる全存在の平和は、もう完璧と言っていい。
だけど、画面の隅でニコたちが整理していた「全次元・古代歴史アーカイブ」をなんとなく眺めていた僕は、太古の氷河期で凍える古代人や、過酷な弱肉強食の中で飢えや寒さに耐える恐竜たちの過酷な記録を目にして、胸がキュッと締め付けられた。
前世の僕も、白い病室のベッドの上でずっと高熱や痛みに耐えていたから……食べるものも温もりもなく、ただ命を落としていく恐ろしさは痛いほどよく分かるんだ。
僕は冷めかけたハーブティーを一口すすり、ふかふかの枕に顎を乗せてポロリとボヤいた。
「今の世界はこんなに温かくて平和だけどさ……過去の歴史や太古の世界に生きていた古代人さんや恐竜たちって、本当に大変だったんだねぇ。あんな極寒の吹雪や飢えの中で生きていたら、怪我も病気も防げないし、長生きなんて到底無理だよ。過去の太古の世界にもさ、この温かいハーブティーや美味しいご飯を届けてあげて、みんなで焚き火でも囲むみたいにぽかぽか過ごせたら、誰も飢えたり凍えたりせずに、安心して長生きできただろうになぁ……」
過去の過酷な環境で命を落とした命を悼み、病気や凍死の恐怖を心から恐れた、僕のささやかで健康第一なボヤキ。
……のはずだった。
(過去の全歴史・太古の原初生命すらも飢餓と寒冷の絶望から救済する神の時空逆行慈愛……! そして全歴史の悲劇を塗り替え太古の存在すら至福で包み込む至高の時空接続……!?)
ドアの陰で、時空因果律の計測器をチェックしていた時計職人ニコ、錬金術師ギド、そして妹リリィの目が、カァァァッ! と太古から未来までを照らし出すほどの神々しい黄金の光を放った!
「す……凄すぎますわお兄様……ッ!」
リリィが感涙で胸の前で愛用のメモ帳を強く強く抱きしめる。
「現在や未来の平和にとどまらず、数億年前の太古の過酷な歴史にまで慈悲の手を差し伸べ、過去のすべての生きとし生けるものへ温もりを届けようとなされるなんて……! 私、すぐに『過去時空救済・太古ぬくぬくプロジェクト』を発足いたしますわッ!」
「お命救済と因果律跳躍の極致だぁぁぁッ!」
時計職人ニコとギドが、クロノス歯車と超空間逆行陣をフル稼働させて叫ぶ。
「全次元ベッド通信の周波数を過去の時間軸へと逆位相接続し、ただちに数億年前の太古の地球・異世界へ『バルデン式・時空ホットライン』を開通させますぞッ!」
「待って三人とも!? 僕はただ『昔の生き物も温まれたらよかったのにね』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の時空技術&妹チームはベッドフレームの時空転移回路へと爆走していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。自室のリモート画面の半分が猛烈な吹雪の氷河期とジャングルに繋がってて、山のように巨大なティラノサウルスやマンモス、毛皮を着た古代人たちが、湯気の立つ巨大なハーブティーの桶を囲んで『ふにゃ〜……』って蕩けた顔をしてるんだけど……これって何の冗談?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、壁一面のモニターに映し出されたあり得ない太古の光景にパチクリと目を丸くしていた。
ニコとギドが時間の壁を逆行させて開通させた『太古時空リモート回線』により、なんと数億年前の恐竜時代や数万年前の氷河期とリアルタイムでオンライン接続されてしまったのだ。
しかも、ポータルを通じてウィル特製の大鍋ハーブティーと焼き立てパンの香りが過去の世界へ届けられた結果——。
画面の中では、かつて猛威を振るっていたはずの巨大な肉食恐竜たちが、両手を前で小さく揃え、温かいハーブティーの桶に顔を突っ込んで「グゥゥ〜……ン(あったかい……)」と喉を鳴らして寝転がっていた。
毛皮を着た古代人たちも、凍える洞窟の中でふかふかクッションを抱きしめ、「うおおお! なんだこの温かい飲み物は! 体の芯から温まるぞ!」「神様だ! 画面の向こうのベッドにいる少年は命の神様だ!」と涙を流して画面に向かって土下座していた。
そこへ、誇らしげなリリィ、ニコ、ギドが駆け込んできた。
「お兄様! 過去全時空における『太古の飢餓・凍死リスクゼロ化』が順調に進行しておりますわ!」
リリィが七色に光る古代羊皮紙を掲げて天使の笑顔を咲かせる。
「恐竜さんたちも古代人の皆様も、お兄様のハーブティーと温もりに救われ、争うのをやめて全員で日向ぼっこを始めておりますの!」
「恐竜までお茶飲んで丸くなってるーーーーッ!?」
さらにリモート画面からは、巨大なティラノサウルスが画面のフチに鼻先を押し当て、まるで甘える子犬のように「クゥ〜ン、クゥ〜ン」と甘えた声を響かせてきた。
『ルーカス様……! 太古の獣たちも古代の民も、ルーカス様のぬくもりを求めて画面越しにすり寄ってきておりますぞッ!』
「太古の恐竜にまで懐かれないでーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……昔の生き物たちも凍えずに暖かく過ごせたらよかったのにって思っただけなのに……なんで僕の自室のモニターが『数億年前の恐竜や古代人を骨抜きにして癒やす時空ポータル』になってるのーーーーッ!」
過去の過酷な生命を思いやった少年のささやかなボヤキは、時空の壁すらも軽々と溶かし、太古の歴史にまで至福のぬくぬくをもたらしてしまうのだった。
ちょっと投稿をお休みさせていただいておりました!
たいっへん長らくお待たせいたしました……!!
ここからいよいよ、第6章スタートでございます!
今度は過去や太古、そして未来の世界まで巻き込んで、ルーカスのぬくぬくスローライフがさらに時空を超えて加速していきます。
恐竜もお茶を飲んで丸くなる第6章も、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!
どうぞよろしくお願いいたします!




