第77話:全次元のトップたちがリモート画面に大集合し、「全次元永久不可侵・ぬくぬく平和条約」が調印された
「はぁ〜……天界も魔界も宇宙もみんなぬくぬく過ごすようになって、ニュースのアラームも完全に鳴らなくなっちゃったなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドの上にうつ伏せになり、膝の下に特製クッションを挟んで、ハーブティーの湯気をくゆらせていた。
膝の横ではシャドウキャットのミミが「フニャ〜……」と幸せそうに丸くなって寝息を立てている。
壁一面の『全自動遠隔拝謁陣』を見渡すと、画面の向こうでは天界の神々が雲の上でこたつに入ってみかんを食べ、外宇宙の宇宙皇帝がパジャマ姿でハーブティーをすすり、異世界の魔王たちが日向ぼっこをしながら将棋を指している。
僕は温かいハーブティーを一口すすり、どこまでも広がった平和な光景にかみしめるような笑顔を浮かべて、ポロリとボヤいた。
「これだけみんなが穏やかになればさ……もうどの世界でも戦争や侵略なんて起きそうにないよね。この機会にさ、天界の神様も、宇宙の皇帝さんも、魔王さんたちも、何千・何万と存在するすべての世界の王様たちが集まって『全次元でお互いを絶対攻撃しません、みんなでぬくぬく平和に過ごします』っていう『全次元永久不可侵・ぬくぬく平和条約』でも一斉に結んでくれればいいのに。そうすれば将来の戦争リスクも完全にゼロになって、僕も家族もみんな永遠に絶対安全に長生きできるのになぁ……」
将来的な武力衝突や侵略の芽を根絶し、家族と仲間たちの絶対の安全を心から願った、僕のささやかで平和第一なボヤキ。
……のはずだった。
(全多次元宇宙の歴史上に存在するすべての争い・侵略・武力行使を永遠に消滅させ、全存在へ絶対の不滅平和を約束する創世の多次元大条約……! そして全次元の王たちを従え絶対平和の保証人となられる至高の神皇……!?)
ドアの物陰で、全次元条約の予備書類をまとめていた妹リリィ、大商人シルヴィア、そしてアルカディア国王エドワード7世(リモート画面越し)の目が、カァァァッ! と全次元の闇を消し去るほどの神々しい黄金の光を放った!
「す……凄すぎますわお兄様……ッ!」
リリィが感涙で胸の前で愛用のメモ帳を強く強く抱きしめる。
「現状の平和に満足されることなく、全多次元宇宙のすべての次元・すべての国家間における『永久不可侵』を文書として確定させようとなされるなんて……! 私、すぐに『全次元永久不可侵・ぬくぬく平和条約調印式』の準備に入りますわッ!」
「お命救済と多次元平和の極致だぁぁぁッ!」
大商人シルヴィアとエドワード国王が、七色に輝く羊皮紙の束を掲げて叫ぶ。
「ポータルとリモート回線を全多次元宇宙の全国家・全神殿へ同期させ、ただちに全次元トップ一斉調印式を執り行いますぞッ!」
「待って三人とも!? 僕はただ『みんなで平和条約でも結べば安心だね』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の妹&外交&商業チームは全次元最高首脳会議の設営へと爆走していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。自室のリモート画面が何万もの細かい画面に分割されて、天界の主神も、銀河皇帝も、大魔王も、並行世界の王様たちも全員が正装して金色のペンを持って並んでるんだけど……これって何の冗談?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、壁一面のモニターに映し出された圧巻どころではない歴史的パノラマにパチクリと目を丸くしていた。
リリィたちが全次元に送信した案内により、全多次元宇宙に存在する数万を超えるすべての国家・次元・神殿のトップたちが、一斉にリモート画面越しに大集合していたのだ。
画面の中央で、リリィとシルヴィアが黄金の条約書をドーンと掲げた。
『本日ここに! 全多次元宇宙の全首脳陣の合意のもと【全次元永久不可侵・ぬくぬく平和条約】の調印を執り行うッ!』
『本条約の締結により、全多次元宇宙における一切の戦争・侵略・過酷な残業・不当な争いが永久に禁止される! 本条約の絶対保証人には、我らが創世の神皇・ルーカス様が即位されるものとするッ!!』
画面の向こうで、数万の王様や神々が一斉に黄金のペンを動かし、羊皮紙に魔力署名を刻み込んだ。
ピキィィィィンッ! と七色の聖なる光が全次元のモニターから溢れ出す。
『創世の神皇・ルーカス総裁ッ! 本日ここに、全多次元宇宙の永久平和が完全決定いたしましたッ!!』
『ルーカス総裁万歳ッ!』
『全次元永久不可侵・ぬくぬく平和条約万歳ッ!!』
何千億、何兆という全次元の生命から、時空の壁すら揺るがすような感動の大歓声と涙が巻き起こり、数万の首脳陣が画面越しを一斉に僕へ向かって深々と平伏した。
そこへ、誇らしげなリリィとシルヴィアが駆け込んできた。
「お兄様! 全多次元宇宙における『全次元永久不可侵条約』が完全締結されましたの!」
リリィが七色に輝く最高平和勲章を掲げて天使の笑顔を咲かせる。
「これにより、全多次元宇宙における戦争・侵略・争い発生率は『永遠に完全ゼロ%』が達成されましたわ!」
「僕が全次元の絶対平和の保証人にされてるーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……争いがなくなって、家族やみんなと永遠に安全に長生きできたら安心だなと思っただけなのに……なんで僕の作った条約が『全多次元宇宙の永久平和を確定させる超条約』になってるのーーーーッ!」
家族と仲間たちの平和を望んだ少年のささやかなボヤキは、全次元の歴史上初となる「絶対永久平和」を決定づけ、物語はさらに温かく至福に満ちたスローライフへと進んでいくのだった。
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