第73話:宇宙規模の誕生祭(全次元バースデー)で、夜空の星々が七色に光り輝いているんだが
「はぁ〜……全異次元の極寒世界までポカポカになって、いよいよ平和そのものだなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドの上に転がり、膝の上のミミを撫でながら、壁の『全自動遠隔拝謁陣』を見つめていた。
画面の中では、かつて猛吹雪に覆われていた氷の世界で、住民たちがアロハシャツのような薄着で「床暖房最高〜!」と踊り明かしている。
だけど、壁のカレンダーをふと見つめた僕は、またしても僕の「誕生日」が近づいていることに気づいて、冷や汗を流して身をすくめた。
15歳の誕生日の時は、全世界から数万隻の貿易船が押し寄せて海を埋め尽くす大パニックになったんだよね。
僕はハーブティーを一口すすり、静かな夜空を見上げてポロリとボヤいた。
「今度の誕生日くらいはさ……どこかの会場に大勢で押しかけられたり、大騒ぎされたりせずに、自室のベッドの上で家族やミミと静かにぬくぬく過ごしたいなぁ。夜空を見上げた時に、外宇宙の星々や天の川が七色に優しくピカピカ輝いてさ、静かで幻想的なお祝いムードを作ってくれれば、大声で大騒ぎしなくても心の中で静かに祝福できるのに。誰も怪我しないし、僕も安全に静かに長生きできるのになぁ……」
人ごみの大騒ぎによる疲労や事故を心から恐れた、僕の静寂第一なボヤキ。
……のはずだった。
(全多次元宇宙の夜空を一つの巨大な光の聖域となし、全天の星々を七色に明滅させ全存在の静寂なる祈りを束ねる神の星空祝祭……! そして押し寄せることなく全宇宙で同時に静かな愛を捧げる至高のイルミネーション……!?)
テラスの暗がりで天体観測レンズを磨いていた狙撃隊長ロルフと、写真機のヤコブ、そして天界のリモート画面越しに見つめていた神々の王の目が、カァァァッ! と全宇宙を貫くほどの輝きを放った!
「す……凄すぎるぞルーカス様……ッ!」
狙撃隊長ロルフがレンズを握りしめ、感涙で全身を震わせる。
「大声で騒ぐのではなく、全宇宙の星々の光そのものを七色に輝かせ、静寂の中で全次元の愛を捧げる……! これぞ宇宙の理を超えた至高の誕生祭……!」
「お命救済と星空ライティングの極致だぁぁぁッ!」
写真機のヤコブと天界の神々が、高次元光導変換陣をフル稼働させて叫ぶ。
「ポータルと通信回線を全宇宙の星座に同期させ、ただちに全夜空を七色にライトアップする『バルデン式・全次元星空イルミネーション』を展開いたしますぞッ!」
「待って三人とも!? 僕はただ『静かに星空が見たい』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の天体&神々チームは宇宙規模のライトアップ工事へと爆走していった。
◇
数日後、僕の誕生日の当夜。
「……ねえリリィ。窓の外の夜空を見上げたら、お月様も、天の川も、何兆という宇宙の星々が一斉に七色にピカピカ光って文字を描いてるんだけど……これって何の冗談?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、窓の外のあり得ない天体パノラマにパチクリと目を丸くしていた。
夜空全体が、まるで巨大な七色のクリスマスツリーかイルミネーション会場のように美しく輝いていた。
星々が繋がって「HAPPY BIRTHDAY LUCAS」と夜空いっぱいに七色の光で浮かび上がり、静かで心地よいアロマの風が吹き抜けている。
海の上にも、異次元にも、誰一人として押し寄せてくる者はいない。
全次元の何千億という住民たちが、それぞれの場所で静かに夜空を見上げ、胸の前で手を合わせて涙を流していたのだ。
そこへ、誇らしげなリリィ、ロルフ、ヤコブが駆け込んできた。
「お兄様! お誕生日おめでとうございますわ!」
リリィが七色に光る羊皮紙を掲げて天使の笑顔を咲かせる。
「全多次元宇宙における『全次元星空イルミネーション誕生祭』が完成いたしましたの! 大騒ぎによる事故・疲労リスクは完全ゼロ%ですわ!」
「夜空の星々を全員で七色にライトアップしてるの!?」
さらにリモート画面には、天界の神々や異次元の魔王たちがズラリと映し出された。
『創世の神皇・ルーカス様! お誕生日おめでとうございます! 我らはルーカス様のご意向に従い、一歩も押し掛けることなく、全宇宙の星々を光らせて静かに祝福を捧げておりますぞッ!』
「静かに祝福するスケールがデカすぎるーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……大騒ぎせずに、部屋から綺麗な星空が見たかっただけなのに……なんで僕の誕生日に『全宇宙の星々が七色に光る宇宙規模のイルミネーション』が開催されてるのーーーーッ!」
静かな誕生日を望んだ少年のささやかなボヤキは、宇宙の星々すらも七色にドレスアップさせ、物語はどこまでも幻想的でぬくぬくとしたスローライフへと進んでいくのだった。
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