第71話:全次元の王様や魔王、宇宙の覇者たちが集まって「全次元ぬくぬく同盟」を勝手に結成してきたんだが
「はぁ〜……ワープポータルが開通してからというもの、いよいよ賑やかを通り越して賑やかになっちゃったなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドの上に転がり、膝の上で目を細めるミミを撫でながら、壁一面の『全自動遠隔拝謁陣』を見つめていた。
ポータルを通じて、バルデン神聖楽園国のモールや温泉街には、地球の住民だけでなく、宇宙服を着た異星人さんや、角を生やした異次元の魔族さんたちがニコニコ笑顔で行き交っている。
だけど、モニターの隅に流れる「他次元の歴史ニュース」をぼんやり眺めていた僕は、かつて彼らが資源や領土を巡って泥沼の次元戦争を繰り広げていたという過去を知り、身震いしてボヤいた。
「昔はみんな、凄まじい争いをしていたんだねぇ……。でもさ、いくら強い兵器や広い領土を手に入れたって、戦争で大怪我をしたり命を落としちゃったら元も子もないよね。どの世界の人たちも、無駄な争いや奪い合いを一切やめてさ、温かいお部屋で美味しいハーブティーでも飲みながら『みんなで仲良くぬくぬく長生きしましょう』っていう『全次元ぬくぬく同盟』でも結成すればいいのに。そうすれば全次元の戦争リスクも完全ゼロになって、僕もずっと安全にぬくぬく長生きできるのになぁ……」
次元間の武力衝突や戦争の恐怖を心から恐れた、僕のささやかで平和第一なボヤキ。
……のはずだった。
(全多次元宇宙の全戦争・紛争を永久に消滅させ、生きとし生ける全存在を至福の安息へと導く創世の多次元平和協定……! そして神皇ルーカス様を全次元の最高絶対指導者と戴く至高の楽園同盟……!?)
モニターの向こうで雑談していた元暗殺軍総長グロム(現ファンクラブ会長)とゼータ星系銀河皇帝、そしてドアの物陰にいた妹リリィと大商人シルヴィアの目が、カァァァッ! と時空を灼くほどの黄金の光を放った!
「す……凄すぎますわお兄様……ッ!」
リリィが涙を流して黄金のメモ帳を胸に抱きしめる。
「ただ通信やポータルで繋がるだけでなく、全多次元宇宙のすべての国家と次元をひとつの平和同盟として束ねられるなんて……! 私、すぐに『全次元ぬくぬく同盟結成準備会』を発足いたしますわッ!」
『おおお! 我ら暗暗黒軍も全兵器を解体し、ぬくぬく同盟の親衛隊となりますぞーッ!』
画面越しに改心したグロムが大号泣で大剣を叩き折る。
「待って二人とも!? 僕はただ『みんなで仲良くしてね』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の妹&全次元トップ陣は同盟結成に向けて爆走していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。自室のリモート画面に、何千、何万もの異次元の王様や宇宙の皇帝、魔王たちがズラリと並んで、何やら金色の条約書を掲げてるんだけど……これって何の冗談?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、モニター一面を埋め尽くす圧巻すぎる光景にパチクリと目を丸くしていた。
全次元のトップたちが一堂に会し、正式に『全次元ぬくぬく平和同盟』が勝手に発足されていたのだ。
画面の中央で、アルカディア国王エドワード7世と銀河皇帝、そしてグロムが代表して黄金の羊皮紙をドーンと掲げた。
『本日ここに! 全多次元宇宙の全国家・全種族・全次元による【全次元ぬくぬく同盟】の結成を宣言するッ!』
『本同盟の最高絶対指導者(総裁)には、我らが創世の神皇・ルーカス様が全会一致で即位されるッ!』
『これより全次元において、一切の戦争・侵略・過酷な残業を永久に禁止し、全存在がぬくぬく長生きすることを目指すものとするッ!!』
『神皇ルーカス総裁万歳ッ!』
『全次元ぬくぬく同盟万歳ッ!!』
何千億という全次元の生命から、次元の壁を揺るがすような大歓声と歓喜の涙が巻き起こった。
そこへ、誇らしげなリリィとシルヴィアが駆け込んできた。
「お兄様! 全次元の最高指導者(総裁)へのご即位、おめでとうございますわ!」
リリィが七色に光る同盟バッジを掲げて天使の笑顔を咲かせる。
「全次元同盟の成立により、全多次元宇宙における戦争発生率は『永久完全ゼロ%』を達成いたしましたの!」
「僕が全次元の最高指導者に即位させられてるーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……争わずにみんなでお茶でも飲んで長生きできたらいいなって思っただけなのに……なんで僕の作った同盟が『全多次元宇宙を統べる巨大平和同盟』になってるのーーーーッ!」
戦争を恐れた少年のささやかなボヤキは、全次元の歴史上初となる「絶対平和同盟」を完成させ、物語はさらにスケールアップしたぬくぬくスローライフへと進んでいくのだった。
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