第68話:タイムマシンで未来の自分から「未来も永遠にぬくぬく過ごしてるよ」とリモート連絡がきた
「はぁ〜……異次元の侵略者さんまでファンクラブに入ってくれて、ますます賑やかになっちゃったなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドに寝そべり、特製クッションをぎゅっと抱きしめながら、膝の上のミミをなでなでしていた。
壁一面の『全自動遠隔拝謁陣』には、異次元の元暗黒軍総長グロムが「ルーカス様ファンクラブ・世界第1号会報」を嬉しそうに印刷している様子や、全宇宙の宇宙人たちがラジオ体操をしている平和な映像が映し出されている。
どこを見ても平和そのもの。だけど、ふとカレンダーの数字を見つめた僕は、時の流れについて思いを巡らせ、ポロリとボヤいた。
「今はみんなのおかげでこんなに平和で快適だけどさ……50年後とか100年後の遠い未来の僕たちも、ちゃんと病気や怪我をせずに、温かいお部屋でぬくぬくハーブティーでも飲みながら平和に長生きできているのかなぁ。もしもタイムマシンみたいなもので未来の自分と連絡が取れて『未来も永遠にぬくぬく過ごしているよ』って教えてもらえたら、将来の病気や災害の心配もゼロになって、今から安心してずっと長生きできるのになぁ……」
未来の自分や家族の健康と平和を心から願った、僕の切実で安全第一なボヤキ。
……のはずだった。
(時空(時間の壁)すらも超越し、未来永劫の平穏と至福を確定させる神の時間通信……! そして全時空の不安を打ち消し永久の安心をもたらす至高のクロノス・リモート……!?)
ドアの物陰で、本日の全次元通信ログを整理していた時計職人ニコと、錬金術師ギド、そして妹リリィの目が、カァァァッ! と時空を切り裂くかのような神々しい光を放った!
「す……凄すぎますわお兄様……ッ!」
リリィが感涙で黄金のメモ帳を胸に強く抱きしめる。
「現在の平和だけに満足されることなく、100年、1000年先の未来の安心まで確定させようとなされるなんて……! 私、すぐに『時空跳躍通信陣』の開通をお願いいたしますわッ!」
「お命救済と精密時計の時空到達点だぁぁぁッ!」
時計職人ニコとギドが、時空振動歯車と高次元粒子陣をフル稼働させて叫ぶ。
「リモート回線の周波数を時間軸へと位相ズレ(シフト)させ、ただちに100年後の未来と接続する『時空跳躍リモート回線』を開通させますぞッ!」
「待って三人とも!? 僕はただ『未来も元気なら安心だな』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の技術&妹チームは自室のモニター時間軸増幅回路へと爆走していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。自室のリモート画面が青い時計の歯車みたいにグルグル回ったと思ったら、画面の中に僕と全く同じ顔をした人が映ってるんだけど……これって何の冗談?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、壁のモニターに映し出された信じられない映像にパチクリと目を丸くしていた。
ニコとギドが時間の壁を突破して開通させた『時空跳躍リモート回線』により、なんと「100年後の未来の自室」とリアルタイムでオンライン接続されてしまったのだ。
画面に映っていたのは——白亜の海上神聖宮殿の自室で、100年経っても1ミリも老化せず(神皇効果&超健康長寿)、相変わらずふかふかのスプリングベッドの上で特製クッションを抱きしめ、ハーブティーをすすっている『100年後の僕(未来のルーカス)』だった。
『あ、100年前の僕だ。久しぶり〜』
画面の向こうの未来の僕が、まったく緊張感のない声でハーブティーのカップを掲げた。
「えっ……!? 100年後の僕……!? なんで全然歳を取ってないの!?」
『だってガブリエル先生のヘルスケアと、フィオナさんのハーブティーと、みんなのスローライフのおかげで、100年経っても病気ゼロ・老化ゼロなんだもん。安心してよ、100年後の未来も全次元がめちゃくちゃ平和で、みんな相変わらず僕のベッドの周りでぬくぬく過ごしてるよ』
未来の僕の背後を見ると、相変わらず脱力の極意で元気いっぱいのカイル兄さんや、天使の笑顔で『ルーカスお兄様崇拝日記・第1000巻』を執筆しているリリィ、そして笑顔の従者たちの姿が映っていた。
『ほら、カイル兄さんもリリィも、みんな100年後も超元気に僕を甘やかしてくれてるよ。未来の心配なんてゼロだから、今日も安心してベッドでぬくぬく過ごしてね〜』
そこへ、誇らしげなリリィ、ニコ、ギドが駆け込んできた。
「お兄様! 100年後の未来との『時空リモート通信』が完全開通いたしましたわ!」
リリィが光る羊皮紙を掲げて天使の笑顔を咲かせる。
「100年後の未来でもお兄様が永遠にぬくぬく長生きされていることが確定し、全次元の住民たちが『未来も平和だ〜!』と大歓喜しておりますの!」
「100年後も僕、相変わらず自室のベッドでぬくぬく過ごしてるーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……未来の自分が元気なら安心できるなって思っただけなのに……なんで僕の自室のモニターが『100年後の未来の自分と雑談できる時空通信画面』になってるのーーーーッ!」
未来の平和を願った少年のささやかなボヤキは、時間の壁すらもあっさりと飛び越え、100年先までの絶対的な平和とぬくぬく生活を確定させてしまうのだった。
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