第66話:無重力空間は腰や関節に優しいとボヤいたら、宇宙ステーション型保養所が爆誕生した
「はぁ〜……宇宙や異次元の人たちまで僕のリモート画面に集まってきちゃったなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドに寝そべり、特製クッションを抱っこしながら壁の『全自動遠隔拝謁陣』を見つめていた。
画面の端っこには、遥か遠くの宇宙に浮かぶ星々や、ロルフたちの天体望遠鏡が捉えた大宇宙の美しい映像が映し出されている。
だけど、画面の中で腰をさすりながらリハビリに励む王国のおじいちゃんたちや、宇宙戦争の傷を癒やそうとしている異星人さんの姿を見かけた僕は、ふと前世の宇宙飛行士のニュースを思い出してポロリとボヤいた。
「地上だとさ、どうしても重力があるから腰や膝の関節に負担がかかっちゃうんだよね。前世でも『宇宙の無重力空間に行けば体重の負荷がゼロになるから、関節痛や腰痛持ちの人、重い怪我のリハビリには最高の環境だ』って聞いたことがあるなぁ。無重力の中で浮かびながら、ぬくぬく温かい温泉に浸かったりリハビリできれば、誰も関節を痛めずに一瞬で元気になるのになぁ……」
体重がかかることによる腰痛や関節の痛みを心配した、僕のささやかで健康第一なボヤキ。
……のはずだった。
(重力の呪縛から全生命を解き放ち、関節の苦痛をゼロにする神の無重力環境……! そして全宇宙の傷ついた存在を癒やす最高峰の星空保養所……!?)
テラスの陰で天体望遠鏡の倍率を調整していた狙撃隊長ロルフと、建築長ブラム、そしてギドの弟子ヤコブの目が、カァァァッ! と星々を突き抜けるような神々しい光を放った!
「す……凄すぎるぞルーカス様……ッ!」
ロルフがスコープを構えたまま武者震いで大号泣する。
「地上の湯治場にとどまらず、重力という物理の壁すら超えて全宇宙の傷病者を救済する『星空無重力医療』をお示しになられるとは……!」
「お命救済と宇宙建築の極致だぁぁぁッ!」
ドワーフの建築長ブラムが、重力制御魔導陣の構想を羊皮紙に書き殴りながら叫ぶ。
「浮遊魔石と無重力障壁を組み上げ、衛星軌道上に『バルデン式・全自動無重力保養ステーション』を爆速建設いたしますぞッ!」
「待って三人とも!? 僕はただ『無重力だと腰が楽そう』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の建築&宇宙技術チームは衛星軌道上での保養所建設へと爆走していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。夜空を見上げたら、お月様の横で七色に光るドーム型の巨大な建物がピカピカ回ってるんだけど……あれって何?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、窓の外のあり得ない夜空の光景にパチクリと目を丸くしていた。
宇宙空間(衛星軌道上)には、ブラムやギドたちが建設した巨大な宇宙ステーション型保養所『バルデン天空無重力スパ』が浮かんでいた。
内部は絶妙な無重力空間に保たれており、巨大な温泉プールの中では、重力の負荷から解放された腰痛持ちのおじいちゃんたちや、異次元の怪我をした宇宙人たちが「うわぁぁぁ! 腰が全然痛くない!」「体がフワフワ浮いてリハビリが超楽だ〜!」と大歓声を上げてプカプカ浮かんでいた。
そこへ、宇宙服風の防護服に身を包んだブラムとロルフが胸を張って駆け込んできた。
「ルーカス様! 『バルデン天空無重力保養ステーション』の稼働を完了いたしました!」
ブラムが宇宙空間の記録写真を誇らしげに掲げる。
「無重力と保温バリアの融合により、関節痛・腰痛の回復速度は従来の10倍! リハビリ成功率100%を達成しております!」
「宇宙に保養所が一瞬で完成してる!?」
「さらにルーカス様!」
ロルフがリモート画面を指差す。
「『あの少年の作られた宇宙ステーションに行けば、どんな重い関節痛も一瞬で治る』という噂が全宇宙・全異次元に轟き、宇宙各地から患部を押さえた宇宙人や魔王たちが、星空保養所へ大殺到しておりますぞッ!」
「宇宙規模で腰痛患者が集まってこないでーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……重力がなければ腰が楽になっていいなって思っただけなのに……なんで僕の作った施設が『全宇宙から腰痛患者が集まる星空保養所』になってるのーーーーッ!」
重力による腰痛を恐れた少年のささやかなボヤキは、人類史上初となる宇宙医療・ステーション保養所を爆誕生させ、物語は全宇宙を巻き込んださらなるぬくぬく展開へと進んでいくのだった。
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