第64話:第四章完結・海の上の新国家の神皇になっても、世界がどう変わろうと、僕は永遠に自室のベッドでぬくぬく過ごします!
海の真ん中に立ち上がる『海上神聖宮殿』の中央——僕の自室。
二重サッシと多重防音結界に包まれた室内は、外の喧騒を完全にシャットアウトし、温度22度・湿度55%という究極の快適空間に保たれている。
床暖房の優しい温もりが足を温め、加湿空気清浄機からはアロマの澄み切った空気が静かに噴き出していた。
膝の上には特製クッション。傍らのサイドテーブルには、ウィルが焼いてくれた甘いいちごタルトと、湯気を立てる特製ハーブティー。
僕——ルーカス・フォン・バルデンは、スプリングベッドのマットレスに頬をすりすりしながら、壁一面の『全自動遠隔拝謁陣』を見つめていた。
画面には、新陸地『バルデン神聖楽園国』を中心に、地球上の全都市がひとつに繋がった平和な世界が映し出されている。
『バルデン中央国際貿易港』では、世界中からやってくる貿易船を巨大なクラーケンや深海龍が優しく護衛し、職人さんたちが滑らかなローラーと補助滑車で笑顔で荷揚げを行っている。
『バルデンモール』では、雨の日でも低気圧頭痛に悩まされることなく、子供からお年寄りまでが温かいハーブティーや焼き立てパンを手に談笑している。
全天候型植物園や天体観測タワー、温泉街、そして全学校で大切に学ばれている『ルーカス道徳憲法』。
他国の王様も、商人たちも、職人も、神様たちも、全員が「ぬくぬく長生きスローライフ」を愛し、地球規模で戦争0%、犯罪0%、過労0%が達成されていた。
「ふぅ……前世の僕はさ、ずっと白い病室のベッドの上で、点滴に繋がれて外の景色を眺めることしかできなかったんだよね」
僕は冷えかけたハーブティーを一口すすり、静かに過去を振り返った。
都市ガスの爆発事故で命を落とす直前、僕が心から祈ったこと。
それは、世界を救う大勇者になることでも、強大な魔法使いになることでもなかった。
『病気にならず、怪我もせず、温かいお部屋で家族と一緒にぬくぬく長生きしたい』
ただそれだけの、ささやかな願い。
それがどうしてか、妹のリリィがメモ帳に書いて世界中に布教したことで、優秀でちょっと暴走しがちな従者たちや世界中の要人たちが集まり……気づけば海の上に新しい国ができ、僕が『全世界の神皇様』なんて大層な立場にまつり上げられちゃったけれど。
ピコンッ……!
リモートモニターが優しく発光し、画面の中に世界中の首脳陣と、僕の大切な従者たちの顔が一斉に映し出された。
アルカディア国王エドワード7世、帝国皇帝ジークフリート、聖国教皇クレメンス、エルフ王セルフィア。
そして、ガブリエル先生、シルヴィアさん、クララさん、ギド、ブラム、カイル兄さん、ラグナル……総勢50名を超える仲間たちが、画面越しに溢れんばかりの感謝と笑顔を僕に向けていた。
『神皇ルーカス様! 本日も全地球上の平和と至福、そして全人類の健康長寿が完全に保たれております!』
『ルーカス様のご創世のおかげで、私たちは毎日が楽しく、誰もが笑顔で長生きできておりますぞ!』
「みんな……本当にありがとう」
僕は特製クッションを強く抱きしめ、画面越しの全員に向かってほっこりとした笑顔を向けた。
カチャン。
ドアが静かに開き、大好きな家族が部屋に入ってきた。
「ルーカス、採れたての甘いいちごをもってきたよ」
アロイス父さんが優しく微笑む。
「ルーカス、今日も元気でいてくれて何よりだわ」
エレナ母さんがお茶を注ぎ直してくれる。
「ルーカス、外の警備も防衛結界も完璧だよ。今日も安心して過ごしてね」
カイル兄さんが脱力した優しい手で僕の頭を撫でてくれる。
「お兄様! 本日も世界中から『ルーカスお兄様大好きです』のお手紙が1億通届きましたのーッ!」
リリィが黄金のメモ帳を掲げて天使のような笑顔で跳びはねる。
膝の上では、シャドウキャットのミミが「にゃ〜ん」と甘えた声で喉を鳴らした。
僕を取り巻く、世界で一番温かくて優しい愛。
(そっか……。僕のささやかなボヤキから始まった大騒動だけど……世界中の人たちが笑顔になって、僕の愛する家族と仲間たちがこんなに幸せそうなら……うん、最高じゃないか)
僕は温かいハーブティーを飲み干し、ふかふかのスプリングベッドの真ん中に深く身を沈めた。
特製クッションに頬を寄せ、世界で一番幸せそうな笑みを浮かべて宣言した。
「みんな、本当にありがとう! ……でも、僕が海の上の新国家の神皇様になっても、これから世界がどう変わろうと……僕は永遠にこの自室のふかふかベッドで、みんなと一緒にぬくぬく長生きさせてもらうからね!」
少年のささやかなボヤキから始まった創世の物語は、地球規模の至福と平和を結実させ、愛と笑顔に包まれた完璧な常春の楽園で、これからもどこまでも永遠に続いていくのだった。
第四章を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ルーカスのただのボヤキから、まさかの超巨大島が爆誕生し、勝手に世界最高元首【初代神皇】へ祭り上げられてしまいました……。「ただ海を眺めてゆったりしたかっただけなのに!」というルーカスの絶叫が、ホワイト楽園国家の波に今日も揉まれて消えていきます。
さて、天界の神々までリモート画面で巻き込んで大騒ぎしてしまったので……【明日 8/5(水)】は、頑張ったルーカスに丸1日お布団から出ない「ぬくぬく完全お休み(引きこもり許可証)」を与えてあげようと思います!
(※というわけで、明日は丸1日更新をお休みさせていただきます!)
ゆっくり英気を養ったルーカスとバルデン領の変人たちは、【あさって 8/6(木)】より、ついに新章『第五章(全次元編)』の爆速お祭り連載を大開幕いたします!
【第5章からの更新頻度について大切なお知らせ】
これまで第4章までは「1日4回」というバルデン領なみの爆速お祭り更新でお届けしてまいりましたが、第5章からはルーカスの健康(と作者のストック笑)を守るため、【毎日2回(21時・22時)】の定期更新へと、ほんわかスローライフなペースに移行させていただきます!
(毎日2回でも、なろう全体で見ればかなりの爆速ですのでどうぞご安心ください!)
【読者の皆様へ、ルーカスからのお願い】
ここまで読んで「この勘違いのスケール感、最高すぎる!」「4章完結お疲れ様!」「神皇ルーカスのホワイト楽園国家の続きが早く読みたい!」と思ってくださったら、ぜひ、ルーカスのお休み中のぬくぬくオヤツ代代わりに、画面下にある【ブックマーク登録】や、評価の【星(★★★★★)】をポチッと押して応援していただけると、執筆の凄まじい励みになります!
皆様からいただく応援の星とブクマこそが、バルデン神聖楽園国をさらに快適に発展させる最大のエネルギーです。
続く第五章でも、さらなるボヤキと暴走をお届けします。8/6(木)の新章開幕をどうぞお楽しみに!!




