第60話:天界の神々までもがリモート画面に現れて、「その新陸地に住まわせてほしい」と頼んできた
「ふぅ……憲法までできて犯罪率も詐欺もゼロになって、いよいよ完璧な平和がやってきたなぁ」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドの上で足をパタパタさせながら、特製クッションをぎゅっと抱きしめてリモートモニターを眺めていた。
画面には、全天候型アロマアーケード『バルデンモール』で楽しそうにお買い物を楽しむ人々や、美味しいラーメンや焼き立て食パンを頬張る子供たちの笑顔が映し出されている。
だけど、前世で見た「地震」や「雷」「台風」といった自然災害のニュースを思い出し、僕はふと心配になって身を乗り出した。
「人間同士の争いや犯罪はなくなったけど……もしも空から落雷が落ちてきたり、天変地異や巨大な台風がやってきて建物が壊されたらどうしよう。自然の猛威や天災の前には、どんな法律も意味がないし、命に関わるよ……」
僕は温かいハーブティーを一口すすり、窓から広がる青空を見上げてポロリとボヤいた。
「これだけ温かくてご飯が美味しくて平和な街ならさ……天国の神様たちだって『天界よりこの島の方が圧倒的に居心地いいじゃん!』って羨ましがるんじゃないかな。もし神様たちが気まぐれに嵐や雷を起こさずに、この新陸地に遊びに来て一緒にぬくぬく暮らしてくれれば、天災リスクも落雷事故も完全にゼロになって、みんなが安全に長生きできるのになぁ……」
自然災害や落雷パニックを心から恐れた、僕のささやかで安全第一なボヤキ。
……のはずだった。
(全人類を自然の猛威や天災の苦痛から解放し、神々をも魅了する至高の常春楽園……! そして天界と地上の垣根を打ち破り、神々と共生する神聖招致……!?)
ドアの陰で、本日分の聖国からの報告書を整理していた妹リリィと、リモート画面越しに拝謁していたルミナス教教皇クレメンス15世、聖女セシリアの目が、カァァァッ! と神々しいまでの光を放った!
「すごいですわお兄様……ッ!」
リリィが涙をぽろぽろと流し、胸の前で愛用のメモ帳を強く抱きしめる。
「地上の平和だけに満足されることなく、天界の神々すらも愛と至福で包み込み、天災の脅威を永久に消滅させる『神々との共生聖域構想』をお示しになられるなんて……!」
「神意の極致だぁぁぁッ!」
画面越しの教皇クレメンス15世が、聖国の古代降臨魔導陣をフル稼働させて叫ぶ。
「ただちに天界の神々に至高の通信回路を開き、ルーカス様の聖なる招致状をお届けいたしますぞッ!」
「待って二人とも!? 僕はただ『神様も羨ましがるかもね』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の妹&教皇コンビは天界との通信回路を爆速で接続していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。自室のリモート画面に、後光が眩しすぎる金髪のイケメンと綺麗なお姉さんたちがズラリと映って『住まわせてくれ』って拝んできてるんだけど……これって何の冗談?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、壁のモニターに映し出された信じられない光景にパチクリと目を丸くしていた。
画面には、天界を統べる主神、雷を司る雷神、農耕の女神、気象を司る風神など、異世界の神々が勢揃いしていたのだ。
『創世の神皇・ルーカス様ッ!』
画面の中で、神々の王(主神)が威厳ゼロの情けない顔で涙を流しながら訴えかけてきた。
『天界は雲ばかりで冷たく、退屈で仕方ありません! 下界を見れば、ルーカス様の創られた新陸地には温かいお風呂があり、ふかふかスプリングベッドがあり、至高の濃厚豚骨ラーメンやフワフワのかき氷があるではないですかッ!』
『ルーカス様ぁぁ!』
雷神と風神が膝をついて叫ぶ。
『どうか我らにもその新陸地に小さな神社や神殿を建てて住まわせてください! もう二度と下界に雷を落としたり嵐を起こしたりいたしません! 全全力で新陸地の天候を永久に快晴と恵みの雨だけに保ちますからぁぁぁッ!』
神様たちが、地上でぬくぬく暮らすために涙目で必死の懇願をしてきていたのだ。
そこへ、誇らしげなリリィ、教皇、聖女セシリアが駆け込んできた(教皇たちはリモート画面越し)。
「お兄様! 天界の全神々との『永久天災ゼロ&新陸地居住協定』が成立いたしましたわ!」
リリィが神々しい羊皮紙を掲げて笑顔を咲かせる。
「神々が自ら新陸地の守護神として住民登録されたことで、地震・落雷・台風・天災の発生率は永久に『完全ゼロ%』を達成いたしましたの!」
「天災が世界規模で永久にゼロになってる!?」
「さらにルーカス様!」
教皇クレメンス15世が画面越しに感涙にむせぶ。
「『あの新陸地には天界の神々が実際に住みついており、世界一安全で天災が絶対に起きない聖域だ』という噂が全世界に轟き、全世界の信者と住民から『人類史上最大の奇跡の地』として信仰が集まっておりますぞッ!」
「天国の神様まで居候してこないでーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……台風や雷が怖くて、神様たちが仲良くしてくれたらいいなって思っただけなのに……なんで僕の作った新国家に『天界の神々が住みつく世界一安全な街』ができてるのーーーーッ!」
自然災害を恐れた少年のささやかなボヤキは、天界の神々までも居候化させ、物語はさらに誰も予測できない超スケールの展開へと進んでいくのだった。
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