第56話:熟練の職人たちと魔法技術を組み合わせたら、巨大貿易港の管理まで完璧に回っていた件
「はぁ……雨の日でも頭がズキズキ痛くならず、快適にお買い物が楽しめるようになったのは大賛成なんだけどね」
『海上神聖宮殿』の自室で、僕はふかふかスプリングベッドに腰掛け、特製クッションを膝に乗せてリモートモニターを見つめていた。
画面に映し出されているのは、世界最大の『バルデン中央国際貿易港』。
雨上がりの清々しい海風が吹く港には、今日も世界中から数百隻を超える巨大な貿易船が次々と入港してきている。
だけど、あまりにも船と物流が増えすぎたせいで、港の税関や事務所には羊皮紙の申請書類が山のように積み上がり、埠頭では荷揚げの順番待ちで少し混雑が発生していた。
「書類の確認や分類って本当に大変なんだよね。デスクワークでずっと同じ姿勢だと肩や腰がガチガチになっちゃうし、荷揚げも重い箱を何度も持ち上げたらぎっくり腰になっちゃうよ……」
僕は冷えたハーブティーを一口すすり、前世の物流センターや職人さんたちの見事な連携プレーを思い出して、ポロリとボヤいた。
「別にAIとか難しい機械に頼らなくてもさ、経験豊富な事務の職人さんたちが伝達用の気圧チューブや色分けファイルを使ってスムーズに書類を回したり、港の荷揚げ職人さんたちが負担を減らす『魔導補助滑車』や『滑走搬送台』を上手く組み合わせればいいのに。人間の熟練技と魔法の道具が組み合わされば、誰も腰を痛めたり残業で疲れ果てたりせずに、流れるようなチームワークで楽しく完璧にお仕事が回るのになぁ……」
無理な自動化ではなく、働く人間の一人一人が腰や肩を痛めず、誇りを持ってスムーズに連携し合える『ホワイトな職場支援』を願った、僕の切実で安全第一なボヤキ。
……のはずだった。
(職人の熟練の技と魔法技術の融合……! 人間を排除するのではなく、働く者の尊厳と身体を完璧に守りつつ、物流の滞りをゼロにする至高の人間連携システム(バルデン・ロジスティクス)……!?)
テラスの物陰で、新国家の貿易書類を整理していた時計職人ニコと、包装業者ダニエル、そして運送屋ボリスの三人の目が、カァァァッ! と雷に打たれたように見開かれた!
「す……凄すぎるぞルーカス様……ッ!」
時計職人ニコが、精密ドライバーを握りしめて歓喜の涙を流す。
「機械に人間を従わせるのではなく、職人の手技と知恵を魔法のギアで極限まで補助する……これぞ真の技術革新だぁぁぁッ!」
「お命救済と働く喜びの極致……ッ!」
包装業者ダニエルとボリスが、書類の束を掲げて叫ぶ。
「ただちに税関と埠頭に『色別超速伝達チューブ』と『無重力補助滑車』を導入し、職人たちの熟練チームワークを爆発させますぞッ!」
「待って三人とも!? 僕はただ『みんなで助け合って腰を痛めないでね』って言っただけだよ!?」
僕の悲鳴を置き去りにし、狂乱の技術&物流トリオは港湾管理本部へと爆走していった。
◇
数日後。
「……ねえリリィ。夢なら早く醒めてほしいんだけど、なんであの巨大な港の荷揚げと書類チェックが、流れるプールみたいに超スムーズに終わってるの?」
自室でハーブティーを飲んでいた僕は、リモートモニターに映し出された信じられない光景にパチクリと目を丸くしていた。
『バルデン中央国際貿易港』では、ニコやダニエルたちが構築した『職人連携&魔導補助システム』が完璧に稼働していた。
税関のデスクでは、ベテランの事務職人さんたちが色分けされた魔法ファイルを扱い、空気圧でスッと飛ぶ『エアチューブ伝達筒』で瞬時に書類をやり取りしている。ペンの動きには指の疲労を和らげる魔導ペングリップが装着され、肩こりゼロで正確無比なチェックが秒単位で完了していく。
さらに埠頭では、荷揚げ職人さんたちが『無重力アシスト滑車』と『滑らかローラー台』を使い、まるで綿あめでも運ぶかのような軽い力で巨大な木箱をスムーズに積み替えていた。
「おい、次の船の荷揚げだ!」「おう、エアチューブで書類は確認済みだぞ! 補助滑車でヒイッと持ち上げてローラー台に乗せるぜ!」「ははは、腰が全然楽だ! チームワーク最高だな!」
作業員さんたちはピカピカの笑顔で声を掛け合い、誰一人として無理な重労働や残業をすることなく、世界最大の国際貿易港の物流が全自動化級のスピードと精度で完璧に回転していたのだ。
そこへ、ニコ、ダニエル、ボリスの三人が胸を張って駆け込んできた。
「ルーカス様! 港湾管理の『滞留時間ゼロ%』を達成いたしましたわ!」
ダニエルが羊皮紙の記録簿を誇らしげに掲げる。
「書類の誤記ゼロ、荷揚げの腰痛事故ゼロ! 職人たちの生き生きとした熟練技と補助魔法の連携により、港の処理能力は過去最高を記録しております!」
「全自動レベルでスムーズに回ってる!?」
「さらにルーカス様!」
ボリスが沖合を指差す。
「『あのバルデン港に行けば、書類の手続きも荷揚げも一瞬で終わり、港湾作業員もみんな優しくて笑顔だ』という評判が世界中の船乗りや商人の間に広まり、全海洋の貿易ルートがこの港を中心に再編され始めておりますぞッ!」
「世界中の貿易ルートの中心にならないでーーーーッ!?」
僕は悲鳴を上げ、特製クッションで顔を覆った。
「あ、あれ……? 僕はただ……職人さんたちが腰や肩を痛めずに、仲良くスムーズにお仕事できればいいなって思っただけなのに……なんで僕の作った新国家の港が『世界中の船が憧れる奇跡の超スムーズ物流拠点』になってるのーーーーッ!」
働く人たちの健康と熟練技を大切にしたいという少年のささやかなボヤキは、新国家の貿易港を世界一滑らかでホワイトな流通の要塞へと進化させ、物語はさらに誰も予測できない超スケールの展開へと進んでいくのだった。
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