第51話:国王陛下と各国のトップがやってきて、「この新陸地を最高聖国として建国する」と言い出した
「うぅ……頭が痛いよ……」
自室のふかふかスプリングベッドの上で、僕は特製クッションを強く抱きしめ、毛布の中からチラリと窓の外を覗き込んでいた。
海の真ん中にドカンと生えてしまった超巨大な常春の島。
そこに爆速で建設された『バルデン中央国際貿易港』には、今日も世界中から数千隻の貿易船が押し寄せ、大賑わいを見せている。
港の職人さんたちが腰を痛めず笑顔で働いているのはすごく良いことなんだけど、僕は新たな大問題に頭を痛めていた。
「これだけ世界中から船が集まると、今度は『この島はどこの国の領土だ』とか『関税はどうする』『入国手続きはどうする』みたいな国境トラブルが絶対起きるよね……」
もし領有権を巡って各国が揉め始めたり、高い関税の掛け合いでいがみ合ったりしたら、せっかくの平和が台無しになってしまう。
僕は冷めたハーブティーを一口すすり、胃のあたりを押さえながら切実にボヤいた。
「はぁ……そもそもここは、僕の魔法が勝手に暴走して海の上にできちゃった『誰の土地でもない場所』なんだからさ。面倒な国境の手続きとか関税なんて全部無しにして、世界中の人が自由に仲良くお買い物や貿易ができれば一番平和なのに。争ったり意地を張り合わないで、みんなで助け合ってお互いを高め合えば、誰も傷つかずにみんな笑顔で長生きできるのになぁ……」
国境紛争や関税トラブルによる武力衝突の恐怖を心から恐れた、僕のささやかで平和第一なボヤキ。
……のはずだった。
「「「なんという慈愛……ッ! なんという天地を統べる大御心……ッ!!」」」
「ひぇっ!?」
突如として、自室の扉が「ババァンッ!」と音を立てて開かれ、豪華絢爛な衣装に身を包んだ「おじ様たち」が雪崩のように雪崩れ込んできた!
アルカディア王国第15代国王エドワード7世。
エストリア帝国皇帝ジークフリート1世。
ルミナス教教皇クレメンス15世。
そして大樹の国・エルフ国王セルフィア。
全世界の最高権力者たちが、涙をボロボロと流しながら僕のベッドの前に一斉にドゲザしたのだ!
「王様たち!? なんで僕の部屋に直接入ってきてドゲザしてるのーーーッ!?」
僕が悲鳴を上げると、エストリア帝国のジークフリート皇帝が床に額を擦り付けたまま叫んだ。
『ルーカス殿……! 我らは恥ずかしい! 愚かにもこの新陸地の利権や関税の分配をどう分かつか、裏で醜い議論を重ねておった! だが、貴方の仰る通りだ! 神の創世魔法によって生まれたこの聖なる大島は、一国のエゴで切り刻んでよいものではなかったのだッ!!』
ルミナス教教皇クレメンス15世も震える手で聖印を結び、感涙にむせぶ。
『関税を撤廃し、国境の手続きを無くし、全人類が対等に平和を分かち合う……! これぞ神の与え給う真の楽園! 本日ここに、我がルミナス聖国は主権の一部をこの新島に献上いたしますぞ!』
エルフ国王セルフィアも神々しい笑みを浮かべて頷く。
『我が大樹の国も同じく。この新陸地において、いかなる国家も領有権を主張してはならない。ここは全人類の共通の聖域である!』
「え……? あ、うん、みんなが仲良く手続きなしで貿易してくれるなら、それが一番なんだけど……」
僕がパチクリと目を丸くしていると、アルカディア国王エドワード7世が黄金の羊皮紙をドーンと掲げた。
『皆の者、意見は一致したな! これより、この超巨大常春島における全国家の主権を統合し、国境・関税・戦争の存在しない世界初の超国家……【バルデン神聖楽園国】の建国を宣言する!!』
「超国家の建国宣言ーーーッ!?」
『そして! この国家の初代最高元首(神皇)の座には……創世の神童・ルーカス子爵殿に即位していただくッ!!』
「神皇に即位させないでーーーーッ!?」
僕の制止も虚しく、自室の『全自動遠隔拝謁陣』を通じて、世界中にこの歴史的大宣言がリアルタイム中継されていた。
『創世の神皇・ルーカス様万歳ッ!』
『バルデン神聖楽園国万歳ッ!!』
画面越しに、何億という世界中の人々が歓喜の涙を流し、僕の名を連呼している。
僕の隣では、妹のリリィが「ルーカスお兄様が世界の神皇様になられましたわーッ!」と黄金のメモ帳を掲げて大爆笑していた。
僕はガタガタと膝を震わせ、特製クッションで顔をすっぽりと覆って絶叫した。
「あ、あれ……? 僕はただ……国境の手続きや関税で揉めないで、みんなで仲良く貿易してほしかっただけなのに……なんで僕の作った新島が『超国家』になって、僕が世界最高の神皇様になってるのーーーーッ!?」
国境トラブルを恐れた少年のささやかなボヤキは、世界の政治構造を根底から塗り替え、ついに「神聖楽園国」という前代未聞の超国家を誕生させてしまうのだった。
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