第32.5話:【設定資料】バルデン領の技術水準と、僕のボヤキが爆速発展を招く理由
第二章までお読みいただきありがとうございます!
「なぜバルデン領はこんなに爆速で発展するの?」という世界観の秘密を、ルーカス視点のちょっとした資料としてまとめてみました。本編の補足としてお楽しみください!
僕、ルーカス・バルデンは声を大にして言いたい。
僕はただ、前世の記憶を頼りに「もっとぬくぬく、無病息災で暮らしたいなぁ」とボヤいているだけなのだ。
それなのに、なぜか我がバルデン男爵領は、王国最強の快適領地へと爆進している。
その背景には、この世界の『ちょっと歪な文明構造』と『我が領の絶妙な環境』がある。
ちょっとした備忘録代わりに、その秘密を書き残しておこう。
■ 1. 「土台はあるのに超不便」という歪な文明構造
この世界(アルカディア王国)は、一見すると中世ファンタジー風なのだが、技術の発展の仕方がかなり特殊だ。
一言で言うなら、【ハード(土台)はあるのに、ソフト(応用)が絶望的に遅れている】のである。
はるか昔の古代魔導文明の遺産や、かつての国家事業のおかげで、王国各地には以下のような重厚なインフラが最初から揃っている。
・巨大な「石造りの水路網」
・頑丈に整備された「石畳の街道」
・莫大なエネルギーを生む「大型魔石動力炉」
普通なら、これだけあれば超快適な生活が送れるはずだ。
しかし、この世界の人々はそれを生活に活かす「ソフト面」や「応用加工技術」が極めて未熟だった。
・【水路はあるのに……】
室内への配管や『蛇口』、『温水ボイラー』という概念がない。そのため、立派な水路の横で、わざわざ冷たい水をバケツで汲み、薪で火を熾して沸かしている。
・【立派な街道はあるのに……】
馬車に『ショック吸収用のサスペンション』や『保冷魔導具』を積み込む発想がない。そのため、ガタガタと激しく揺れる馬車で盛大に乗り物酔いし、運ぶ食材はすぐに腐る。
・【頑丈な石造りの屋敷はあるのに……】
『二重サッシ』や『断熱材』がない。隙間風が吹き込み、冬は室内でも凍えるほど寒い。
■ 2. 僕の「ボヤキ」=足りなかった最後のピース(ミッシングリンク)
つまりこの世界は、「技術がない」のではなく、「技術を生活に結びつける発想が抜け落ちていた」だけなのだ。
そこに、前世の快適な現代地球を知っている僕がやってきた。
僕が「あ〜あ、蛇口をひねるだけでお湯が出ればいいのに」とか、「馬車のサスペンションがもっと効けば酔わないのに」とボヤく。
すると、この世界の優秀な(そしてちょっと頭のネジが飛んだ)技術者や変人たちにとって、僕のボヤキが【足りなかった最後のピース】としてバチコーンッ!と脳内にハマってしまうらしい。
「なるほど! その発想はなかった! 土台ならすでにあるから、すぐに作れます!」
こうして、僕の何気ない一言が着火剤となり、既存の古代インフラと組み合わさることで、数十年分の技術革新がたった数日で起きてしまうわけだ。
■ 3. 平民や職人との距離が、近すぎる
さらに拍車をかけているのが、我がアルカディア王国の、というか特にこのバルデン領の「風通しの良さ」だ。
他の厳格な帝国なんかとは違って、ここでは貴族と平民の距離がめちゃくちゃに近い。
領主である父上も普通に街を歩いて領民と世間話をするし、平民の職人や商人が、新しい提案を持って我が家の屋敷に直接上がって談判してくることも日常茶飯事だ。
おかげで、僕が部屋の窓際や庭先でポロッと漏らした「ボヤキ」が、従者だけでなく地元の職人たちにもダイレクトに伝わってしまう。
「おい、ルーカス様が今度は『音速で服が乾く洗濯機』が欲しいってボヤいてたぞ!」
「なんだその神の道具は! よし、魔石動力炉の出力を調整して今すぐ試作するぞ!」
……という具合に、僕のあずかり知らぬところで、爆速開発ネットワークが形成されてしまっているのである。
我がバルデン男爵領は、王国の北東辺境に位置する、自然だけが豊かな極小の領地だったはず。
古いインフラ遺構を活かせず、細々と暮らしていたはずなのに……。
今日もどこかで、僕のボヤキを拾った変人たちが、目を血走らせて世界を塗り替える発明品を生み出している。
お願いだから、僕を部屋から出さないで、ただぬくぬくと長生きさせてほしい。
(第三章へつづく)
世界観の裏設定資料でした!
これだけの超技術がなぜ一瞬で生み出されるのか、実はこんな背景があったりします。
面白いなと思ってくださったら、ぜひ画面下の【ブックマーク登録】や、評価の【星(★★★★★)】をポチッと押して応援していただけると、第三章の執筆への凄まじい励みになります!
どうぞよろしくお願いいたします!




