第15話:第一章完結・僕のぬくぬくスローライフは(まだまだ)終わらない!
「ふぁぁぁ……よく寝たぁ……っ!」
熱狂のフェスティバルが明け、眩しい朝日が差し込む自室で、ルーカスはベッドの上で大きく背伸びをした。
「二重サッシ」に守られた室内は暖かく、防音効果により外の喧騒も一切聞こえない。
「スプリングマットレス」のおかげで腰も身体も軽く、体調はまさに最高そのものだった。
「ふふ、昨日はみんなで美味しいものを食べて、お礼も言えたし……最高の夜だったなぁ」
ルーカスはテラスに出て、澄み切った朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
目下に広がるバルデン男爵領の街並み。
そこには、かつて辺境の寂れた領地だった頃の面影はどこにもなかった。
「魔導コンクリート」で美しく平らに舗装された街道。
「ソーラー街灯」と「自動清掃機アリス1号」が守る、世界で最も清潔で安全な街並み。
立ち上る湯気が風情を醸し出している、大人気の「露天風呂温泉街」。
そして、朝から焼き立ての「フワフワ食パン」と「特製フルーツミルク」を求めて、笑顔で買い出しに歩く領民たちの姿。
「……うん、なんだかんだ大ごとになっちゃったけど、結果オーライだよね」
ルーカスは満足げにうなずき、手元の特製ハーブティーを一口すすった。
病気や怪我の恐れがない、完璧な衛生環境。
冬の寒さも、夏の猛暑も、害虫の脅威すらシャットアウトされた絶対快適エリア。
そして、自分を心から愛してくれる温かい家族と、頼もしすぎる(少し暴走しがちな)仲間たち。
「よしっ! インフラも娯楽も完全に整ったし、これでようやく……念願の『ぬくぬく長生きスローライフ』が本格的にスタートできるぞ!」
ルーカスが前世から夢にまで見た、完璧なひきこもり&長生き生活の完成を確信した、その時だった。
ババァンッ!!
自室のドアが、見たこともないほどの勢いで勢いよく開け放たれた。
「お、お兄様ぁぁぁッ! 大変ですわーッ!!」
息を切らせた妹のリリィが、両手に抱えきれないほどの「羊皮紙の手紙の山」を抱えて飛び込んできた。
「リリィ!? 転んだら危険だから落ち着いて……って、なにその大量の手紙!?」
「これ、全部お兄様宛てのお手紙なんですの!」
リリィが目を目を輝かせながら、テーブルの上に手紙の山をドサリと置いた。
「昨日の『大感謝フェスティバル』の噂が、王都どころか隣国や世界の果てにまで瞬く間に広がりまして……!『伝説の創世神童・ルーカス様に謁見したい』『我が国にもその技術を導入してほしい』という大国からの親書や、世界中の名だたる専門家・冒険者・豪商たちからの訪問予告が、山のように届いておりますのッ!」
「えっ……? 他国からの親書……!?」
ルーカスが固まっていると、部屋の中にズラリと「第一章で集まった暴走従者たち」がドカドカと雪崩れ込んできた。
「ルーカス様! 国防総監ラグナル、ただちに『第一期・領外防衛・外交応対体制』を発令いたしました!」
元SSランク冒険者のラグナルが、黄金の魔力をギラつかせてドゲザする。
「技術開発部のギドとブラムも、全世界からの受注に応えるべく『第二大型魔導プラント』の建設に着手しておりますぞ!」
「衛生隊長クララ、国境を超えてやってくる全訪問者の『完全消毒・手洗い強制検問所』を設置いたしましたわ!」
「ロザンティ商会のシルヴィアです! これより全世界規模の『バルデン・グローバル貿易網』を展開いたしますわッ!」
「「「ルーカス様のために!! 我らがバルデン領の平和と誇りを、世界に見せつけてやりましょうぞぉぉぉッ!!」」」
50名を超える凄腕の従者たちが、歓喜と忠誠の熱気で部屋を揺らす。
「待って待って待って!? 僕はただ……自分の部屋でぬくぬく長生きしたかっただけなのに……! なんで世界中を巻き込む大ごとになってるのーーーーッ!?」
ただ平和に健康でいたかった少年の切実な悲鳴が、快晴の朝空へとこだまするのだった。
——男爵領の『爆速発展』と、少年の平穏をかけた戦い(?)は、まだまだ終わらない!
(第一章 完)
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