43話 S級ダンジョン③
「なぜそこまでして外に出たいんだ?」
外に出て暴れるわけでもないのになぜそこまでして外に出たいのか分からない。
「さっきも言ったが外の世界を見たいのだ。我は生まれてからこのダンジョンの中しか知らない。外に興味があるのだ」
「隷属されてでもか?」
「そうだ!たまに部下が殺した人間の持ち物を我に持ってきていたのだが中には書物もあった。それには外のことが書かれていたのだ。冷たい白い粉が降る場所や雷が降る島、とてつもなく高い建物、我の興味をそそるものがこの世にはあるのだ!それを見たいと思うのはおかしいか?」
こいつは本当に自分の好奇心で外に出たいのだと強く伝わった。
「シュリ、こいつを隷属してもいいですか?」
「本気で言ってるの?」
「はい。こいつが悪い奴には思えないんです」
「まぁ蒼空がそう言うなら止めないけど」
「ありがとうございます」
隷属する以上こいつの自由は制限されるので俺たちが心配することもない。
「ちなみになんですけどシュリって隷属魔法の使い方って分かります?」
「まったく。知らないのにそんなこと言っていたの?」
シュリは呆れた顔をしながら隷属魔法の詠唱を教えてくれた。
「話は終わったか?」
「ああ。本当に俺に隷属されてもいいのか?」
「問題ない」
「じゃあお前をここから出してやる」
「本当か!感謝する!」
「じゃあ隷属魔法を使うぞ」
隷属魔法は本来、相手を降伏させないと使えない。なぜなら隷属されたくないという感情が強いと魔法をレジストされてしまうからだ。
逆に言えば相手がどんな状態でも心が折れてなければ魔法を使っても意味がない。
だが今回の場合はもう相手が隷属されてもいいと思っているため降伏させなくても隷属魔法が使える。
俺は手に魔力を込めてさっきシュリに教えてもらった詠唱を唱えた。
「我、神崎蒼空はヴァンパイアエンペラーのシャドウを隷属する」
この詠唱は自分の名前と隷属する人の名前を言わないといけない。
このヴァンパイアには名前がなかったので俺はこいつにシャドウと名付けた。
「我、シャドウは神崎蒼空に隷属することを誓う」
シャドウが応えたことによって主人と奴隷の関係になった。
俺とシャドウの手の甲には同じ紋様が現れた。この紋様は隷属の関係であるという証明のものだ。
「シャドウ、俺はお前を隷属したけど別に奴隷のように扱ったりする気はないしなんなら仲間だと思ってこれから接する」
俺は自分の手足になって働かせるような奴が欲しくてシャドウを隷属したわけではない。
シュリから聞いた話だが隷属魔法を使えるやつは自分の代わりに働かせるためや戦争をするために隷属魔法を使うらしいが俺はそんなことする気はない。
なので契約上は隷属の関係だがシャドウとはハクアのようにパートナーの関係でいるつもりだ。
「それは有難いな」
「よろしくなシャドウ」
「こちらこそよろしく頼む。我の主人になったのだから主と呼ばせてもらう」
「分かった」
「そちらの女は主の仲間だから姉御と呼ぶぞ」
「姉御ってなんか不良ぽくて嫌ね」
「じゃあ呼び方を変えさせましょうか?」
「これでいいわ。名前で呼ばれるのは違うし」
隷属して仲間になったのにシュリはシャドウを歓迎はしてなさそうだ。
俺としては強い仲間が増えたので嬉しい。
ちなみにシャドウはヴァンパイアの最終進化系だけあってめちゃくちゃ強い。
シャドウ ヴァンパイアエンペラー レベル120
HP6500/6500 MP3800/3800
攻撃力 2500
防御力 2350
体力 2470
敏捷性 2520
魔法力 2900
魔法耐性2700
スキル
剣王3、鎌王3、武王2、世界眼4、血魔法7、影魔法7、闇魔法7、創造魔法7、並列思考7、無詠唱6、飛行7、怪力8、吸魔血3、気配察知8、魔力感知7、覇気7、魔気5、分身5、言語理解7
耐性
魔法攻撃耐性6、物理攻撃耐性6、状態異常耐性5
ステータスが高いのは勿論、スキルの数が多く質も高い。それに耐性もあるためシュリが言っていたとおり地竜よりも強いというのも納得だ。
「主、ここを出たほうがいい」
「シャドウのいう通りね。ダンジョンを出るわよ」
「え?まだ攻略してないですよ」
「もしかしてと思ってたけどボスを倒さなくても隷属するだけでも攻略扱いになるみたいね」
「我というボスを失ったのだ。ボスがいなくなったダンジョンは崩壊する」
「なるほどね」
ダンジョンといえばボスを倒したら攻略っていうイメージが強すぎてこんな裏技みたいなことで攻略ができるとは思わなかった。
とりあえず急いでダンジョンを出ることにした。以前シュリから聞いたのだがダンジョンの崩壊に巻き込まれると次元の狭間に閉じ込められて帰れなくなるらしい。
実際に巻き込まれた人が帰ってきたことがないから真相は謎だがシュリの世界ではそう言い伝えられているらしい。
俺たちが出口に向かっている途中にヴァンパイアが何体か現れたが全員シャドウを見て立ちすくんでいた。
まさか自分の主人が人間と一緒に行動しているとは思わなかったからだろう。
「部下を置いていってよかったのか?」
「そうだな。関わりはさほどなかったし我は崇められて迷惑していたからな」
「そうか」
(そういえばこいつ、俺たちと会った時も部下を何体も倒されているのになんとも思ってなさそうだったがそういうことだったのか)
「それにあいつらの指揮をとっていたのは主が倒したヴァンパイアロードだからな。我は関係がないのだ」
あのヴァンパイアロードは手下を殺されたことを怒っていたのであいつは仲間意識があったのだろう。
それに比べてシャドウは仲間というより同じダンジョンに暮らしている住人くらいにしか思っていなかったのかもしれない。
「もうすぐ出口よ」
戦闘がなくシャドウが最短ルートを知っていたためあっという間に出口が見えた。
俺たちは出口を出ようとしたがシャドウが立ち止まってしまった。
「どうしたんだ?早く出るぞ」
「我は本当に外に出られるのだろうか?いつもここを潜ろうとすると何かに阻まれて出られなかった」
シャドウは隷属されてここのモンスターではなくなったが過去の事を思い出し出られるか心配している。
「大丈夫よ。あなたはもうここのボスじゃないのよ。必ず出られるわ」
「シュリの言うとおりだ。心配なんかせずに外に出たら何やろう、どこに行こうって楽しいことでも考えておけ。外の世界が見てみたいんだろ?」
「そうだな!主、早くここから出よう!」
シャドウは自分のしたいことを想像したのか心配がなくなったようだ。
「よし!出るぞ!」
俺はシャドウの背中を押してゲートを潜った。
「これが外の世界か」
シャドウは目の前に広がる海を見ながらそう言った。
このS級ダンジョンが神奈川県の海沿いにあったため最初に目に入るのが広大な海だった。
「主、これが海ってやつか?」
「そうだ」
「海とはこんなにも広く美しいのか」
初めての海、初めての外の世界ということもあって見惚れていた。
「主、我をダンジョンから出してくれてありがとう」
「ああ」
初めてのS級ダンジョンだったが普通の攻略とはならなかったが攻略もできたし新しい仲間も増えたので結果的には良い結果で終われた。




