42話 S級ダンジョン②
剣と鎌がぶつかる音が響いている。
血魔法は火魔法に弱いと聞いていたので剣に炎を纏えば鎌を斬れると思っていたが鎌を魔力で強化しているのかまったく壊れない。
「ダークボルト」
「ヘルフレイム!」
お互いの魔法がぶつかり合う。
「ブラッドスピア」
「ファイヤーランス」
ヴァンパイアはブラッドスピアを7本放ってきたので俺も同じ数のファイヤーランスを放った。
「ブラッドバレット」
「ファイヤーウォール!」
(あっぶねー。もう少し遅れていたら当たっていたな)
あのヴァンパイアは魔法の詠唱から発動するまでの時間が早く先ほどからこちらが後手に回っている。
「ほお、我の魔法の発動に対応しきるか」
「余裕だ」
「発動の早さには自信があったんだがな」
「自惚れていただけだろ」
実際はこれ以上早いと対応が遅れる。
「ではもう少し早くしてみるか。ブラッドスピア」
先ほどより早く数も10本に増やしてきた。
「転移、ヘルフレイム」
「ダークウォール」
こちらも魔法で応戦をしようと思ったが10本となると発動に時間がかかるので転移して避けすぐに背後から魔法を発動したが対応されてしまった。
「今のは危なかった。貴様、空間魔法も使えるのか」
「これでも結構多彩でね」
「始めはすぐ殺してやろうと思っていたが我とやり合える相手は久しぶりだ。大口を叩いていたんだ我をもっと楽しませろよ」
シュリの方を見ると黙って戦闘を見守ってくれている。手伝わなくても勝てると判断をしたのだろうか口出ししてこない。
「ダークバインド」
5本の鞭のようなものが俺を捕縛しようとしてきた。
「転移」
「甘い!」
転移をして避けたが鞭は俺が転移した場所まで追いかけてきた。
「光剣」
それならと剣に光魔法を纏い鞭を切り刻んだ。
「ブラッドレイン」
上から範囲攻撃をしてきた。
「トルネード」
俺は降ってくる攻撃を風魔法で防いだ。
「ブラッドブラスト」
「転移、ファイヤーランス」
「ダークウォール」
魔法で攻撃をしあっているがお互い魔法を完璧に防いでいるのでダメージが与えられない。
「やるな」
「お前もな」
「これでは先にMPがなくなった方が負ける戦闘になりそうだな」
「そうでもないぞ。俺はお前にいつでもダメージ与えることができるからな」
こちらにはまだ隠し球がある。
「なんだと?」
「まだ俺の実力の半分も見せてないからな」
「ほぉう?まだ全力ではないと?」
「そうだ」
「生意気め。それなら我に攻撃を当ててみろ」
「分かった。ファイヤーランス」
「そんな魔法で我に攻撃がカハァ!」
俺が放ったファイヤーランス5本がヴァンパイアの身体中に突き刺さった。
「どういうことだ?」
「蒼空ったらいつの間にそんなことができるようになったのかしら?」
「1人でダンジョンを周っている時に思いついたので練習したら出来るようになったんです」
「貴様ら我を無視して話すんじゃない!」
まさか本当に攻撃を当ててくると思っていなかったのか攻撃が当たったことによって動揺しているようだ。
「はぁーしゃあないから説明してやるよ」
どういう原理かを教えたところでヴァンパイアは魔法を避けることができないと思うので教えてやることにした。
「俺はこれまで空間魔法の転移を移動手段で使っていたんだ」
主に攻撃を避けたり不意打ちで攻撃する時に使っていた。
「だが俺は別の使い方ができないかを考えた結果、魔法を転移して直接当てることを思いついたんだ」
これが出来るようになれば確実に魔法を当てることができて知能の低いモンスターとかなら何をされたのか分からないまま倒せる。
実際あのヴァンパイアは俺に説明されなかったら気付けなかった可能性がある。
「使えるようになれば強力だろ?で練習したら魔法だけを転移できるようになったわけよ」
別にこれは魔法に限らず武器とかも転移できるので汎用性が高い。
「貴様!それは卑怯だろ!」
「別に卑怯じゃないだろ?こうして教えてやってんだから」
この魔法は躱そうと思えば躱せるのだ。というのも俺がまだこの魔法になれていないので早く動かれると座標が合わせられないので使うことができないのだ。
でも頭に血が昇っているあいつにはこのことに気付けないだろう。
「殺す、貴様を我の王に近づかせるわけにいかない!ここで必ず殺す!」
「もう一度言ってやるよ。やれるもんならやってみろ!」
ここから俺は遠慮なく転移を駆使してヴァンパイアに魔法を撃ち込んだ。
「ファイヤーランス」
「血障壁!カハァ!」
「無駄だ」
ヴァンパイアは何度も俺の魔法を防ごうと障壁を張ったりしているが直接、身体に転移しているので意味がない。
敵はすでに満身創痍でこちらはまだまだ余裕がある。ここまでくると戦闘というより蹂躙だ。
「くそ!くそ!これでもくらえ!ブラッドエクスプロージョン!」
火力が高い魔法が放たれようとしていたのでこちらも合成魔法で応じることにした。
「蒼雷!」
俺の蒼雷は敵の魔法を押し退けていった。
「なぜだ!我の全MPを使った最大火力だぞ!なぜ押される!」
「お前が弱いだけだ」
ヴァンパイアは俺の魔法をもろにくらった。煙が消え敵の姿が見えたがまだ微かに生きていた。
「我はここで死ぬが我が主人が必ず貴様たちを殺すだろう」
最後に一言残し散りになり消えていった。
『レベルが上がりました』
「S級が相手でも余裕そうね」
「まだ地竜レベルだときついですけどね」
「まさかあんな隠し球を持っているとは思わなかったわ」
「シュリをびっくりさせようと思いまして」
「私が何処かのタイミングで使って蒼空を驚かそうと思っていたのに」
「自分で使えるようになっちゃいました」
シュリも使えるなら教えて欲しかった。
「それよりどうしましょうね?」
「何かありました?」
「実は蒼空がそいつを倒してから私たちは敵の魔法の中に囚われているわ」
「え!?そうなんですか?」
「私の魔眼に映っているから間違いないわ」
それにしては呑気な気がする。
「このダンジョンから出ることって出来るんですか?」
「この魔法の解析に時間がかかってもいいならボスを倒さなくても出れるは出れるわ」
「それならボスを倒した方が早そうですね」
「「!!」」
俺たちは顔を見合わせてこちらに向かってくる気配を感知した。
気配を隠していないあたり不意打ちの攻撃はなさそうだ。
「解析している時間はなさそうね」
「向こうからお出ましのようですね」
猛スピードでこちらに向かってきているのでこちらにもうじき着く。
俺たちは戦いやすいように館を出て待ち構えた。
「くるわよ!」
「はい!」
俺たちの前に現れたのはさっきのヴァンパイアとは違い殺気や威圧は放っていない。
「よくぞ我の手下を倒した!」
「なんであいつ自分の手下を倒されて嬉しそうなんだ?」
「知らないわよ。そういう奴もいるんじゃない?」
シュリもこんなモンスターを見たことがないのか頭のおかしい奴を見る目で見ている。
「そんな目で見ないでくれよー」
「あいつの頭やばいんじゃないですか?」
「まぁ敵意は無さそうだし話を聞いてみましょう」
とりあえず会話が出来そうなので話してみることにした。
「お前たちは相当強いとみた。我の世界眼で見ても2対1で戦えば我は負けるであろう」
「それは戦わないと分からないだろ?」
「いや分かる。先の戦いも観戦していたがまだ本気じゃなかったろ?」
「まぁ」
「それにそちらの女はお前より強い。そんな2人と戦ったら流石に我が負ける」
「やけに潔いな」
「別に我は戦闘が好きではないからな。話し合いができる相手なら戦いたくはない」
今まで知能が高いモンスターならあったことがあるが知性が高いモンスターにあったのは初めてだ。
「じゃあなんで私たちを魔法で閉じ込めたのかしら?」
「それはお前たちにお願いがあったからだ」
「お願い?」
「我はこのダンジョンに閉じ込められている。我はここを出て外の世界を見てみたいのだ!」
「モンスターをダンジョンから出せるわけないでしょ?」
「我が外に出たら暴れるかもしれないからか?」
「そうよ」
こいつを外に出してもし暴れたら1日、2日で関東を日本から消せるだろう。それくらいの強さがこいつにある。
「我は戦闘が好きではないと言ったであろう。わざわざ我が討伐されることをするわけないだろう」
「それは分からないだろう。今、言っていることも嘘かもしれないだろ」
確かにこいつは俺たちに殺気や威圧がなく敵意がない。だが今は平和主義者みたいなことを言っていても外に出た瞬間暴れるかもしれない。こいつはモンスターなのだから。
「まぁお前たち人間からしたら我の言葉を信じられないのも無理はないか」
ヴァンパイアは急に黙り何かを考えている。
「それならお前たちのどちらか隷属魔法は使えるか?」
「なんでそんな事を聞くんだ?」
「お前たちは我が暴れることを心配しているのだろう?だったら我を隷属すればいい」
なんかとんでもないことを言い出した。




