39話 突然の訪問者
初配信を終えて1ヶ月がたった。朱音はあれから何度か配信をして人気配信者の仲間入りをした。
ハクアとコンビでD級レベルのダンジョンの配信をしているが平均視聴者数が5万人くらいいる。
朱音はシュリの指導も受けており成長が早いため配信を見るたびに強くなっていることが視聴者からウケていたりハクアも可愛いため人気になった。
そして朱音がその指導を受ける時にもう1人指導を受けている人がいる。
「師匠、やっと風魔法が使えるようになった」
「よくやったわね」
もう1人とは絃葉のことだ。ダンジョンブレイクのあとに俺に連絡が来た。絃葉はシュリに魔法を教えてもらいたいらしく朱音が指導を受けていると知ったため一緒に受けることになった。
「うちは氷魔法のレベルが2になりました!」
「早いわね。1週間前に氷魔法が使えるようになったばかりなのに朱音ちゃんも蒼空に似て成長が早いわね」
「えへへへ」
「むすー絃葉も来週までに風魔法をレベル2にする」
絃葉は何故か朱音に対抗心を持っている。
「急がなくていいのよ。絃葉のペースで頑張りなさい」
「だから来週までにレベルを上げる」
「じゃあもうちょっと厳しくするわね」
「それはちょっと」
シュリは絃葉が朱音に対抗心を抱いているのに気づいているので、そう言われれば厳しくしたくなるのだ。
「大丈夫よ。また立てなくなるくらい魔法を使わせるだけだから」
「それ大丈夫じゃないやつ」
「またやってるよ」
朱音はこの光景を何度か見ているのでもう慣れている。
「シュリさんは鬼だな」
朱音はああはならないようにコツコツ頑張ると誓った。
「暇だなー」
ダンジョンブレイク以降、一応ダンジョンに行っているがB級やA級レベルのダンジョンで雑魚ばかり狩っているだけなので手応えがない。
それに大型ダンジョンを攻略したくてもまだ実力が足りないとシュリに止められているから行けない。だからといって他の3つの大型ダンジョンの場所が分からないのでどうしようもないのだ。
「ダンジョン行ってレベル上げでもしようかなー」
ピーンポーン
「誰だろ?」
朱音たちが帰ってきたとしてもインターホンは鳴らさないし荷物を頼んだわけでも来客が来る予定もない。
とりあえず玄関に向かった。
「はーい」
「こんにちは」
玄関を開けるとダンジョン省の橘さんだった。
「シエルさんですね?」
「・・・・・」
どうして橘さんがいるのかが分からない。前回会った時は仮面をしていたので正体が分からないはずだ。
「そう警戒しないでください。家を突き止めたのは悪いと思っているんです」
「そう思うなら突き止めなくても良かったんじゃないですか?」
「それはごもっともですがこの前のお礼をしたいと思い来ました」
「お礼はいらないと断りましたよ」
「ですがそうもいかなくなってしまった理由があるんです」
「とりあえず玄関じゃあれなんで入ってください」
「ありがとうございます」
玄関で話す内容ではなさそうだったので家に上げてリビングに案内し一応お客さんなのでお茶を用意した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「それでさっきの話はどういうことですか?」
「この前のダンジョンブレイクが海外で話題になっているのはご存知ですか?」
「知らないです」
日本では話題になっていたのは知っている。初めてダンジョンからモンスターが地上に出てきて人類に猛威を振るいそれを止めたのが俺たちだ。
当然SNSで話題になっていたし、あの時の最大同接数は300万人を再生数ももう6000万回を超えている。
だがまさか海外でも話題になっていたとは思わなかった。
「実は日本ではあれが初めてのダンジョンブレイクだったのですが世界で見たら何十件も発生しているんです」
「そうなんですか?」
「はい。日本はシエルさんのお陰で最小限の被害で解決しましたが世界ではモンスターのせいで多大な被害と人類の生存圏を一部奪われています」
俺たちが解決したレベルのダンジョンブレイクだと今の人類に太刀打ち出来ないだろう。
「そのためあの配信を見た他国からの引き抜きや自国を救って欲しいと言う連絡が後を絶たないんです」
「すみません。俺のせいで迷惑をおかけしているみたいで」
「そのくらい大したことはないです。シエルさんがいなければ今頃、日本から東京が消えていたかもしれないので」
あながち冗談とは捉えられない。
「それでですね、シエルさんにはきちんと日本からお礼を受け取ってもらって日本の探索者だと公言してもらいたいんです」
「じゃないと俺が他国に行くかもしれないからですか?」
「そうですね。こちらとしては日本でこれからも活動してもらいたいのでお願いしたいです。勿論それなりの待遇を約束します」
日本としてはこれからもこのような出来事が起きた時に対応出来る人が居て欲しいからこのような提案をしているのだろう。
別に日本を出る予定はなかったが待遇を用意してくれるならこちらも存分に利用してやろうと思う。
「そういうことなら分かりました。じゃあこちらの要望を聞いてくれますか?」
「内容によりますができる限りお応えします」
「それなら日本や世界中のダンジョンの情報を集めることって出来ますか?」
「できるとは思います。ただし国家機密になっているダンジョンがあればそこは無理ですね。国際問題に発展しかねません」
「そうなんですね」
情報を集めることができるなら大型ダンジョンの情報が欲しいのだ。
「ちなみにどのような情報が欲しいのですか?」
「固定型ダンジョンの1層がオークかどうかです」
「固定型ダンジョンですか?まずその固定型ダンジョンを教えてもらってもいいですか?」
(そうか俺はラミリア様からダンジョンについて教えてもらっているが一般的には知られてないのか)
「固定型ダンジョンとは何層にもなっていて攻略しても消えないダンジョンです。俺が始めにいたダンジョンがその固定型ダンジョンです」
「そうなんですね。それくらいの情報なら集めることは可能だと思います。他には何かありますか?」
「はい。国が管理や保有しているダンジョンがあると思うのですが」
「ありますね」
「国が保有しているとダンジョン攻略出来ない場所もあるじゃないですか?」
朱音と初めてダンジョンに行ったところも受付の人に攻略はしないでくださいと注意された。
「そうですね。魔石を供給するためや資源を回収できればと攻略するのは基本禁止にはしていますね」
「そのダンジョンの中でB級以上を攻略してもいい権利をください」
これを提案するのはダンジョンを攻略する方が報酬が美味しかったりボスを倒す方が経験値が多いからだ。
「そんなのでいいんですか?それはこちらからお願いしたいと思っていました」
「そうなんですか?」
てっきりダンジョンの独占といっても過言ではない提案なので拒否されると思っていた。
「実は今回のダンジョンブレイクでなるべく高ランクのダンジョンを残しておくのはやめようという意見が多く出たんです」
「俺もその意見には賛成ですね」
管理出来ないダンジョンを残しておくのは危険だ。
「そのため近々レベルの高い探索者で可能な限りダンジョンを減らそうと思っています」
「じゃあ俺が先行して攻略していってもいいんですか?」
「はい。シエルさんに攻略してもらいたいダンジョンをピックアップしてお送りしますね」
「お願いします」
「他にはありますか?」
俺的にはこの2つを聞いてもらえるなら他にはないのだが、どうせなら何かお願いしたい。
「じゃあいらない魔石やアイテムを高値で買い取ってくれませんか?」
「そちらもこちらから提示しようと思っていたので大丈夫ですよ」
「じゃあ最後にシュリって分かりますか?」
「はい。異世界の方ですよね?」
「そうです。なのでシュリには戸籍が無いんです。元の世界に帰れるか分からないので用意してもらうことって出来ますか?」
シュリを元の世界に帰す努力はするがもしも帰ることができなかったら戸籍がないのは困ると思うので頼んでみた。
「シュリさんにもお礼をしようと思っていたので私の権限を使ってそちらもご用意しましょう」
「ありがとうございます」
「ではもろもろご用意できたらまた連絡しますね」
「分かりました」
話が終わった橘さんは最後にお礼だけ言って帰って行ってしまった。たぶん忙しい人なのだろう。
「まさかあの人が急に来るとはな」
まだどうやって俺の正体と家を突き止めたのかが気になるがそれのお陰でダンジョンの情報や攻略の権利などをもらうことができた。
「いきなりでびっくりしたがそのお陰で今よりも早くレベルを上げることが出来る!」
最近、レベルがあまり上がらなかったので嬉しい提案だ。
「リストが来たらがんがん攻略をしていくぞ!」
大型ダンジョンを攻略するためにも強くならないといけない。




